依田一義のエネルギー情報94

リサイクルが難しいアルミと紙、プラスチックによる複合廃材から水素を製造できる実証プラントが完成した。リサイクル事業を手掛けるアルハイテック(富山県高岡市)が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」のもとで開発を進めていたシステムで、朝日印刷(富山県富山市)の富山工場内に設置した。2016年4月22日から実証稼働が始まっている。
朝日印刷の富山工場は医薬品パッケージを生産する同社の基幹工場で、製造過程で発生するアルミ複合廃材を原料として利用する。こうした複合廃材は一般的にリサイクルが難しく、焼却や埋め立てなどの方法で処分されることが多い。
実証プラントの主要構成機器はパルパー型分離機、乾留炉、水素発生装置の3つ。まず、複合廃材を高速回転するパルパー型分離機に投入して、紙(パルプ成分)を取り出す。次にアルミとプラスチックの状態になった廃材を、乾留炉で加熱してガス・オイルと、高純度のアルミに分離する。最後に回収したアルミを水素発生装置に投入し、アルハイテックが独自開発した特殊アルカリ溶液と反応させて水素を製造する仕組みだ。
乾留炉と水素発生装置は、こちらもNEDOプロジェクトの一環として独自開発を進めてきたものだ。乾留炉ではエネルギー効率を向上させるために、電気式の加熱ではなく、プラスチックの乾留(蒸し焼き)によって発生するガスを燃焼させ、その熱を利用する熱風式だ。1時間あたり90キログラムのアルミとプラスチックの複合廃材を処理できる。
水素発生装置は反応槽にアルミの追加投入ができないという既存装置の課題を、材料形状と供給装置の構造を工夫することでクリアした。連続的に水素を発生させることが可能になり、現時点で1時間当たり2キログラムの水素製造能力を確認している。この水素を燃料電池で発電すると50kW(キロワット)程度の電力になり、工場のエネルギーとして活用する。水素の製造能力は今後継続する実証の中で5キログラムまで引き上げる計画だ。

●水素以外の「副産物」も活用してさらに省エネに

実証システムの大きな特徴が、水素製造過程の中で水素以外の再利用可能な素材やエネルギーを回収できる点だ。最初の分離過程で回収できる紙はトイレットペーパーなどに、オイルやガスは工場で必要な熱源として活用できる。水素と燃料電池で発電した電力ともに活用することで、工場のさらなる省エネに貢献できる。
最後の水素発生工程では水酸化アルミニウムが残るが、これは吸着剤や充填剤などの原料となる成分だ。実証ではこうした水素以外の副産物の再利用と、その経済性についても検証を進めていく。また、製造した水素は将来に向け、水素ステーションでの利用も検討していくという。
今後アルハイテックではこうした実証システムの性能や技術的課題、省エネルギー性能の検証を引き続き実施していくとともに、国内外を問わず、導入顧客となり得る印刷工場、パッケージ工場、金属工場などに対して実証システムの販売も目指していくとしている。

株式会社Z-ONE

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です