依田一義の海外不動産情報①

英国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まったことを受け、ロンドン中心部の高級住宅は20%近い値引き販売が常態化している。ポンド急落とも相まって、外国人にとって一部物件は「お買い得」になっている。

英EU離脱決定に伴う不透明感の最初の犠牲者になったのは、英不動産セクターだ。一時は180億ポンド(約230億ドル)相当以上の商業用不動産ファンドで解約停止措置がとられる事態にまで発展した。

ただ、一部の海外富裕層はこれをチャンスととらえているようだ。

あるカナダ人は国民投票から2週間後に、7寝室・5浴室のプール付き住宅を1150万ポンドで購入。ポンド相場が10%超下落したことを勘案すると、1400万ポンドの表示価格から30%以上のディスカウントで手にしたことになる。

コンサルタント会社ナイト・フランクによると、ロンドン中心部の不動産価格は国民投票前から下落が始まっていた。高級物件購入にかかる印紙税が2014年12月に引き上げられたほか、今年4月には2戸目の住宅購入や、賃貸用不動産購入の印紙税が引き上げられたためだ。

ナイト・フランクが集計した7月のロンドン中心部の住宅価格指数は前年同月比1.5%低下、約7年ぶりの大幅な下落を記録した。

同社担当者のトム・ビル氏は「国民投票以降、政治や景気の先行き不透明感を理由に、多くの買い手が値引きを要求している」と語った。

<不透明感、不動産市場を直撃>

国民投票後の期間をカバーする公式統計がまだあまり発表されていないなか、英EU離脱が経済に及ぼす影響についての見方はまちまちだ。リセッション(景気後退)を予想する向きもあれば、ポンド下落を背景に、輸出業者や小売業、ホテルには追い風になるとの指摘もある。

英国立統計局(ONS)が7月に発表した直近の公式データによれば、ロンドンの住宅価格は5月に、前年同月比で14%近く上昇した。

一方、英不動産ウェブサイト、ライトムーブが15日発表した8月の英住宅価格(イングランドおよびウェールズ対象、売却希望価格)は前月比1.2%下落した。7月10日─8月6日に売りに出された物件が対象。特にロンドンの落ち込みが目立ち、2.6%の下落となった。

また、カントリーワイドのデータによると、不動産エージェントに出された物件の売却指示件数は7月、前年同月比2%減少した。

チーフエコノミストのフィノーラ・アーリー氏はロイターに対して「不透明感は通常、市場にはマイナスに働く。これからどうなるのかを見極めようと、様子見ムードが広がるだろう」との見方を示している。

休暇をとる人が多い夏季シーズンは、不動産市場は静かなのが常だ。しかし、英不動産仲介業者のサヴィルズの担当者、スーザン・エメット氏はロイターに対して、秋に向けて需要が減退すると予想。「不透明感を背景に、足元の販売件数が減少するのは確実」としている。

株式会社Z-ONE

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