依田一義の海外不動産情報③

シンガポールは、不動産市場の過熱を抑制する政策を継続する見通しだ。シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行に相当)のメノン長官が同国の不動産市場について、政府の冷却措置を解除するのは「時期尚早」との見解を示した。ここ数年間で「痛みと引き換えに得た成果」を確実なものとするためと説明している。現地紙ストレーツ・タイムズなどが報じた。

同国の不動産市場は2009年から13年にかけて価格が60%上昇し、同年の7~9月期にピークを迎えた。所得増加率30%の2倍となる高騰に市場の過熱を懸念する声が上がり、MASが2軒目以降の住宅購入制限など、いくつかの融資規制策を講じてきた。

こうした措置を受け、民間の住宅価格の上昇は沈静化し、今年4~6月期まで11四半期連続で下落。同長官によると、国内の家計債務の増加率が過去5年の年平均8%から今年1~3月期は1.7%に鈍化したほか、不動産関連の不良債権も減少するなど市場は安定してきているという。

しかし、価格の下落幅はピーク時から9.4%にとどまっていることから、同長官は、市場が安定を取り戻したものの、依然として価格が高止まりの状態にあると指摘。さらに「金利が低く、世界各地の投資家が投資先を模索するなか、再び価格が高騰するリスクもごく小さいとはいえない」と述べ、引き続き抑制策を維持する必要があるとの認識を示した。

これに対し、販売不振に悩む不動産会社などからは、抑制策の緩和を求める声も上がっている。シンガポール不動産開発業者協会の幹部は今年2月、「国内経済が減速傾向にあるなか、さらに景気に悪影響を与えないよう、不動産市場のソフトランディングを確約する必要がある」と政府に訴えた。

シンガポールの今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比で2.2%だった。MASは今年通年の成長率を1~3%と予想している。低成長が予想されるなか、地場不動産各社にとっては試練の時が当面続いていきそうだ。

株式会社Z-ONE

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