依田一義の不動産開発情報70

神奈川県藤沢市の「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン(以下、藤沢SST)」は、パナソニックの約19万平方メートルの工場跡地を利用し、先進的なスマートタウンの実証の場として開発が進められている新しい街である。パナソニックを含めたFujisawa SST協議会で運営している。

パナソニックを中心とする12社や藤沢市が中心となって開発プロジェクトを推進。2012年度までに街の構想を固め、2013年度から順次建設を開始。2014年度には街びらきを行い、入居者を募集し始めた。住宅は、戸建て住宅が約600戸、集合住宅が約400戸を計画しているが、まずは戸建て住宅から分譲を開始。現在は330世帯が入居しているという。

●多世代交流を実現する健康・福祉・教育施設

こうした流れの中で、新たに完成したのが、健康・福祉・教育施設「Wellness SQUARE(以下、ウェルネススクエア)」である。同施設は北館と南館の2棟で構成される拠点で約68kW(キロワット)の太陽光発電、ガスコージェネレーションシステム、蓄電池などを備えている。北館は2017年4月の完成を計画しており特別養護老人ホームと短期入所生活介護施設が入居する。今回完成した南館は、サービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援施設、訪問介護施設、通所介護(デイサービス)施設、訪問看護施設、クリニック、薬局、認可保育園、学童保育施設、学習塾が入居。2016年9月1日にオープンする。

同施設がテーマとしているのが「多世代」「多機能」「多業種協業」である。介護施設や老人ホームなどの高齢者から、保育園や学童、学習塾などの子どもたちまで、幅広い年代の人々が同じエントランスを通って利用する仕組みとなっているという。Fujisawa SST協議会の代表幹事のパナソニック 役員で、ビジネスソリューション本部長 兼 東京オリンピック・パラリンピック推進本部長の井戸正弘氏は「多世代の共生を支えるつながる空間であることが特徴である。藤沢SSTは100年続く暮らしを目標としているが、社会課題の価値と空間価値向上を推進することで、新しい社会や街づくりの形を示していく」と述べている。

●街づくりは50%まで完成

藤沢SSTはもともと、2020年度前後までをめどに街づくりを進めていく計画を示しており、今回のウェルネススクエア(南館)の完成で、開発の進捗状況は約50%まで来たとしている。今後は、2017年4月にウェルネススクエアの北館を完成させる他、2016年秋には藤沢SST内に次世代型物流施設をオープンさせる予定。これはヤマト運輸をパートナーとしているという。さらに集合住宅なども2017~2020年度の間に建設する。

藤沢SSTのここまでの手応えとしてFujisawa SSTマネジメントの社長である宮原智彦氏(パナソニック)は「都市開発の状況は現在、計画の約半分まで来ており、ほぼ計画通りに進んでいる」と自信を見せる。

さらに「先進的なスマートシティということで国内外の多くの企業から関心を得ており見学の数も非常に多い。1年間で1万人以上の見学がある」と宮原氏は述べている。藤沢SSTは開始当初から、1990年比でCO2排出量70%削減、2006年比で生活用水の使用量30%削減、再生可能エネルギーの利用率30%以上、ライフラインの確保3日間を数値目標とした取り組みを進めてきている。

これらの目標についても「現在は330戸の入庫と商業施設という状況だが、現状ではCO2の排出量70%削減も再生可能エネルギー利用率30%以上という目標も達成できている。このままのペースを維持していきたい。また、ライフラインの確保についても入居者が進んで活動を進めている状況で、見学者からも高い関心を集められている」と宮原氏は現状を説明している。

●街を育てる取り組み

藤沢SSTでは、2013年から建設を開始し街づくりを中心とした取り組みを進めてきたが、2016年度からは「徐々に『街を育てる』フェーズに入ってきた」(宮原氏)としている。これに対し、街にかかわる人全てが藤沢SSTの未来を育てることを目指し「まち親プロジェクト」を推進しているという。

「当初思っていた以上に入居した世帯が自治会などの活動やコミュニティー活動が活発で、街としての価値を示すことができているのではないか。今後はこうした仕組みやノウハウなどを生かして水平展開を進めていく」と述べている。

株式会社Z-ONE

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