依田一義のエネルギー情報180

サウジアラビアやイランなど14か国が加盟する石油輸出国機構(OPEC)は30日、ウィーンで通常総会を開き、約8年ぶりの減産を正式に決めた。

加盟国全体の1日あたりの生産量を、10月の水準(日量3364万バレル)から約120万バレル減らす。

OPECは、9月の臨時総会で、生産量を3250万~3300万バレルとすることで基本合意した。10月以降、各国の減産量を決める協議を続け、正式決定にこぎ着けた。

30日のニューヨーク原油先物市場で、代表的な指標のテキサス産軽質油(WTI)の来年1月渡し価格は前日終値から3ドル以上も上昇する場面があり、一時、1バレル=49ドル台前半まで値上がりした。

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依田一義のエネルギー情報179

電力・ガス取引監視等委員会が小売電気事業者からの報告をもとに集計した2016年8月の販売電力量によると、新電力のシェアは過去最高だった7月と同様に7.9%だった。ただし企業・自治体向けの特別高圧・高圧では11.0%(前月10.9%)に、家庭・商店向けの低圧も2.2%(同1.8%)に伸びて、小売全面自由化が始まった4月から増加傾向が続いている。
地域別に見ると北海道・東京・関西で新電力の伸びが目立つ。特別高圧・高圧では関西が最も高くて17.1%まで拡大した。次いで北海道が16.2%、東京が15.6%で、その他の7地域は10%を下回っている。低圧は東京で3.9%まで上昇したほか、関西で2.8%、北海道で2.1%まで拡大した。地域による差がますます開いている。

新電力同士の競争も激しさを増してきた。すでに小売自由化から16年を経過した特別高圧・高圧では引き続きエネットがトップの座を死守しているものの、2015年まで50%程度のシェアを維持していた状況から20%までシェアを落とした。エネットはNTTファシリティーズ・東京ガス・大阪ガスの3社が2000年に共同で設立した新電力の草分け的な存在だ。

エネットを激しく追うのは独立系のF-Powerでシェアを13%まで伸ばした。続く3番手以降は販売電力量に大きな差はなく、大手の丸紅新電力、JXエネルギー、オリックスの順だ。そうした中で東京ガスが前月の10位から6位へ急上昇した。特に低圧の販売電力量では32.5%のシェアを獲得してトップになっている。特別高圧・高圧のエネットと合わせて3部門すべてで1位を占めた。

低圧の上位の顔ぶれは特別高圧・高圧と大きく違う。第2位には大阪ガスが入り、次いでKDDI、JXエネルギーの順に一般の知名度が高い大手の企業が並ぶ。第5位のサイサンは埼玉県を中心にガス事業を展開している。第11位に入った大阪いずみ市民生活協同組合は大阪府南部に約50万人の組合員を抱える強みを発揮して電力の販売量を拡大中だ。

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依田一義のエネルギー情報178

東京ガスは、欧州エネルギー大手、英国セントリカグループのトレーディング事業会社、セントリカLNG(液化天然ガス)と「相互協力に関する協定」を11月21日に締結した。戦略的協力関係の実現を目指す。東京ガスはセントリカグループと緊密な関係を築いてきたが、協定によって原料の調達を中心にした分野で連携を一層強化する。

セントリカは英国ウインザーに本社を置き、電力とガスの供給を手掛ける。ブリティッシュガスや、グループで米国エネルギー大手のダイレクトエナジーなどのブランドを通じて世界的に事業展開し、約2840万件の需要家に電力・ガスの供給と付随サービスを提供している。2015年の売上高は約280億ポンド(約3兆6000億円)にのぼる。

東京ガスはセントリカと、どちらも地域を代表するガス事業者として関係を構築してきた。今回、協定を結んで連携を強化することにした。具体的な取り組みで東京ガスが米国から調達するLNGと、セントリカがアジア太平洋地域で調達するLNGをカーゴ(積み荷)単位で交換し、輸送効率を向上させてコスト削減を図ることで合意した。

この枠組みに関して法的拘束力のある契約を結ぶ協議を進める。東京ガスは協定を通してアジア、北米と欧州を結び付けるLNGのバリューチェーン(価値連鎖)を展開し、原料価格低減と調達の多様化を実現する。今後も国内外のエネルギー事業者との連携を推進する。セントリカはアジア太平洋地域のLNG関連事業の拡大につなげる。

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依田一義のエネルギー情報177

九州電力は16日、来年4月の都市ガス小売り全面自由化に合わせて参入する家庭用ガス販売の事業者登録を経済産業省に申請した。福岡、北九州など10市9町の約80万世帯が対象となる。1カ月後をめどに事業者登録される見通しで、割安なガスと電気のセット販売やポイントサービスの導入を検討する。

九電は北九州市にあるグループ会社の液化天然ガス(LNG)基地から西部ガスの導管を使ってガスを家庭に届ける。西部ガスに支払う託送料は同社が年内にも決定する見通しで、経産省の認可後、九電はガス料金を決める予定。

九電は2015年度に約400万トンのLNGを輸入しており、主に火力発電の燃料として使うほか、約15万トンを工場の大口顧客などに販売した。昨夏以降の川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働により、火力発電で使わなくなったLNGを家庭向けに販売することで経営改善を狙う。

西部ガスは今年4月の電力小売り全面自由化に合わせて参入し、ガスと電気のセット料金を設定している。九電の渡辺義朗取締役はこの日の記者会見で「基本的にオール電化をPRするが、『それでもガスがいい』という方に販売する。少なくとも西部ガスよりは(料金を)下にする」と話した。

経産省によると、家庭用ガス販売の事業者登録を申請したのは九電を含め7社で、既に東京電力ホールディングス傘下の事業会社と関西電力は登録されている。

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依田一義のエネルギー情報176

三相電機は2016年10月26~28日に東京ビッグサイトで開催された水処理技術・サービスの専門展示会「第6回 水イノベーション」(「スマートエンジニアリングTOKYO2016」内)に出展し、アシアティック エンジニアリング ジャパン(以下、アシアティック)と共同開発した「小型水力発電ポンプ」を参考出展した。独立電源用として、早ければ2017年前半から一般販売を開始する計画だ。

三相電機はモーターやポンプの設計・製造販売を手掛ける。新開発の小型水力発電機はこうした既存事業の技術を活用したもので、ポンプに水を逆に流し、通常とは逆方向に回転させて発電を行う「ポンプ逆転式」の発電機だ。大きさは430×441×180ミリメートルで、重さは約30キログラム。水車と発電機が一体化した構造になっているため小型で、狭いスペースにも設置しやすくした。大掛かりな工事も不要で、最短で1日で設置可能だという。

使い方はさまざまな方法を見込んでいる。例えばビル空調の循環水が流れる配管や工場排水設備の配管に接続することで、供給圧の残圧を利用して水力発電が行える。こうした配管の残圧が利用できる安定水源がある場合、特に有効だという。さらにため池や河川から配管を通して取水して発電を行うことも可能だ。

発電機の主な利用条件は2つ。10~21メートルの有効落差を確保でき、水量が1分あたり300~450リットル確保できること。売電機能は搭載しておらず、自立型の独立電源システムとしての利用を想定した製品となっている。発電機の最大出力は750W(ワット)で、最小が200W。未利用エネルギーを電力に変えてバッテリーに充電したり、ビルや工場内の照明などに利用したりできる他、災害時の電源としても使用可能だ。なお、設置の際には整流回路ユニットと、直流電力を交流に変換するための市販のパワコンも併設する。

三相電機とアシアティックでは、2016年11月をめどに小型水力発電ポンプの実証を兼ねたモニター販売を開始する。2017年の前半には一般販売を開始したい考え。現時点で正式価格は決まっていないが「100万円以下を実現したい」(ブース担当者)としている。

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依田一義のエネルギー情報175

2009年に世界で初めて「エネファーム」が日本市場に登場して以来、販売台数は着実に増えてきた。ところが2015年度に過去最高の4万台を超えたものの、成長のペースは鈍化してしまった。2016年度に入ると再び販売台数が伸び始めて、上半期だけで2.5万台に達している。このペースで増えていけば、年間で5万台を超えて前年度を大きく上回る勢いだ。

エネファームはガスを改質して水素を作り、外気から取り込んだ酸素と反応して電力と熱を発生させる。熱は給湯や暖房に利用できるため、エネルギー効率が高くなる利点がある。政府は家庭や商店の省エネ対策としてエネファームの普及に力を入れ、2030年までに全国で530万台の導入を目指している。

現状では累計の販売台数が20万台に満たないため、強力なテコ入れ策が欠かせない。政府は2016年度に総額55億円にのぼる補助金制度を新たに開始して、販売台数の拡大と製品価格の低下を促進している。その効果が上半期の販売台数の増加に表れた格好だ。

エネファームには普及タイプのPEFC(固体高分子形燃料電池)と、高効率タイプのSOFC(固体酸化物形燃料電池)の2種類がある。2009年の発売当初は1台の価格が300万円と高かったが、2015年度にはPEFCが136万円に、SOFCも175万円まで下がった。さらに2016年度に開始した補助金制度でPEFCに15万円、SOFCに19万円の補助金を交付して販売価格の低下を加速させる。

政府はエネファームを広く普及させるためには、PEFC方式の販売価格を70~80万円まで引き下げる必要があるとみている。その目標を2019年度に達成して普及にはずみをつける考えだ。SOFC方式も2021年度に100万円まで低下させる。

余剰電力の買取サービスも始まる

その一方でガス会社と機器メーカーは製品のバリエーションを増やして、導入対象になる家庭の範囲を拡大している。典型的な例がマンション向けのエネファームだ。東京ガスとパナソニックが2016年7月に発売したPEFC方式の製品では3つのタイプを用意した。燃料電池の本体と貯湯ユニットを分離できるタイプや、排気パイプを延長できるタイプがある。マンションの住戸のレイアウトに合わせて選べるようにした。

大阪ガスが機器メーカー3社と共同で開発したSOFC方式の新製品もマンションに設置できる。2016年4月に発売した「エネファームtype S」は発電ユニットを小型化したうえで、バックアップ用の熱源機を分離した。マンションのバルコニーにも設置しやすくなり、既設のガス給湯器と組み合わせて使うことも可能だ。

さらにエネファームで発電した電力を買い取るサービスも4月に開始した。通常の使用方法では家庭で必要な電力に合わせて発電量を調整するが、常に発電能力の上限まで電力を作ることによってエネファームの効率を高める。ガスの使用量が増える代わりに、余った電力を大阪ガスが買い取る。家庭では売電収入がガス料金の増加分を上回り、結果として光熱費を削減できる。

2017年4月にガスの小売全面自由化が始まると、競争によってガス料金が下がることは確実だ。そうなるとエネファームの利用効果が高まる。同時に電力会社が家庭向けにガスの小売を開始して、エネファームの販売にも力を入れていく。2017年度から販売台数の増加にはずみがつく可能性は大きい。

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依田一義のエネルギー情報174

東北大学大学院工学研究科の研究グループは2016年10月25日、幅広い波長の光を含む太陽光を、太陽電池に最適な波長の熱ふく射に変換して発電する「太陽熱光起電力発電(Solar-thermophotovoltaic:Solar-TPV)」システムにおいて、世界トップレベルの発電効率5.1%を達成したと発表した。多接合太陽電池とは異なる概念による高効率太陽光発電の実現につながる成果だという。

太陽から放射される光(熱ふく射)は、幅広い波長分布(スペクトル)を持っている。しかし単接合太陽電池は、使用される半導体材料のバンドギャップより短波長の光しか電気に変換できない。つまりバンドギャップより長波長の光は電気に変換されず損失となってしまう。

一方で、太陽電池を複数枚重ね合わせた多接合太陽電池は、吸収できる波長域を拡げることで幅広い波長分布を持つ太陽光スペクトルを無駄なく電気に変換できる。しかしながら、多接合太陽電池は作製が難しく、単接合太陽電池に比べ生産コストが高いといった課題がある。

開発したSolar-TPVシステムは、まず集光太陽光により太陽光選択材料・波長選択エミッタが加熱された後、波長選択エミッタからの感度波長域に合わせた熱ふく射により光電変換セルが発電を行う。太陽光を一度熱に変換することにより、太陽光のもつ光子エネルギー総量を保存したまま、別波長の光(熱ふく射)へ変換するのが特徴である。これにより、安価な単接合太陽電池を用いても高効率な発電が可能になる。

2つの新しい概念を提案

今回の研究では「熱ふく射のスペクトル制御」と「熱ふく射の一方向への輸送」という概念に基づいた熱ふく射の変換・輸送効率を新たに提案。Solar-TPVシステムでは、太陽光が太陽光選択吸収材料において一度熱に変換された後、波長選択エミッタからの熱ふく射に変換される。つまりSolar-TPVは光子から光子への波長変換システムであり、同様に太陽光を熱に変換する従来の集光型太陽熱発電とは異なる。そのため、Solar-TPVシステムでは吸収した太陽光のエネルギーを損失なく波長選択エミッタのみに輸送すること、つまり、高い熱ふく射の変換・輸送効率を達成することが重要になる。

さらに高効率なSolar-TPVシステムを達成するためには、波長選択エミッタからの熱ふく射スペクトルが光電変換セルの感度波長域にマッチングしていること、つまり高い光電変換効率を達成することが重要になる。この2つの効率は太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタの光学設計と幾何学設計により高めることが可能だという。理想的には、太陽光選択吸収材料は太陽光スペクトルの強度が強い短波長域で高い吸収率を持ち、長波長域では低い放射率(吸収率)を持つことが求められる。これにより、放射損失が小さく高い熱輸送効率が期待できる。一方で、波長選択エミッタは光電変換セルの感度波長域において高い放射率を持ち、それ以外の波長域では低い放射率を持つことが求められる。

研究グループは新たに提案した熱ふく射の変換・輸送効率に基づき、光学設計と幾何学設計を行った。作製した太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタでは、より高い熱ふく射の変換・輸送効率を得るため面積比を持たせ、太陽光選択吸収材料からの反射・放射損失を抑制している。その結果、熱ふく射輸送効率54%、光電変換効率28%が期待できる太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタの設計と作製に成功した。そして作製した太陽光選択吸収材料、波長選択エミッタ、ガリウムアンチモン光電変換セルを用いた発電試験で、世界トップレベルの発電効率5.1%を達成した。

今回の成果について研究グループは「熱ふく射の変換・輸送効率をさらに向上させることで、Solar-TPVシステムのさらなる高効率化が期待できる。さらに熱ふく射のスペクトル制御や熱ふく射の一方向への輸送はSolar-TPVのみならず、未利用エネルギーの有効利用に関連してさまざまな分野への適用が可能な概念である」としている。

なお、この研究の一部は化学技術振興機構「先端的低炭素化技術開発(ALCA)」のプロジェクトの一環として実施され、科研費の助成を受けた。成果の詳細は2016年10月25日付で科学誌「AppliedPhysicsExpress」に掲載され、同誌のSpotlights論文にも選出されている。

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依田一義のエネルギー情報173

日本初の波力発電所が完成した場所は、岩手県の久慈市(くじし)にある「久慈港」の一角にある。この一帯は東日本大震災で津波の被害を受けた地域で、復興プロジェクトの1つとして波力発電の実証に取り組んでいる。

久慈港の中にある「玉の脇漁港」の防波堤を利用して、「久慈波力発電所」が10月24日に完成した。プロジェクトの中心メンバーである東京大学・生産技術研究所が開発した波力発電装置を備えている。

発電所は海底に設置する基礎部分の上に、建屋を搭載する構造になっている。建屋の中に発電機があって、その下に大きな波受け板(ラダー)がぶら下がる。全体の大きさは横幅が7メートルで、高さと奥行きは12メートルある。80トンの重さで海底の岩盤に固定する仕組みだ。

波受け板の大きさは高さが2メートルで、横幅が4メートルある。防波堤に水平に設置した波受け板は海からの波を受けて振り子状に回転し、さらに防波堤から戻ってくる波も受けて回転力を高める。回転軸が発電機とつながっていて電力を生み出す。

発電能力は43kW(キロワット)ある。波の強さは季節や天候によって変動するため、平均で10kW程度の出力を想定している。年間の発電量は約9万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算すると25世帯分に相当する。

発電コストの低減が最大の課題に

久慈港の波力発電の実証プロジェクトは2012~2016年度の5年間で実施する計画だ。2013年度に玉の脇漁港の周辺で波の状況を観測した後に、発電装置の製造に着手した。久慈市内の工場で2016年1月に発電装置が完成して、9月上旬にクレーン船で玉の脇漁港まで曳航して設置工事に入った。9月下旬には試験運転を開始する一方、東北電力の配電線に接続する工事も進めた。

発電所は防波堤から通路でつながっていて、そこを通って陸上の配電線まで接続する。防波堤の横には電力を変換するパワーコンディショナーや電圧を調整するトランスが設置されている。発電した直流の電力を交流に変換して配電線に供給する流れだ。

プロジェクトチームは2017年3月まで実証運転を続けて、実際の発電量や装置の制御方法を検証する。プロジェクトが完了した後も、東京大学を中心に発電機メーカーなどが参画して実証運転の継続と装置の改良に取り組む予定だ。

最大の課題は発電コストを低減することにある。現状では1kWhの電力を作るコストが60円程度と高く、発電装置の軽量化などを通じてコストを引き下げていく必要がある。国の目標は波力発電を含む海洋エネルギーのコストを2020年代に20円/kWh以下に抑えることである。その目標に向けた第一歩が岩手県の漁港から始まった。
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依田一義のエネルギー情報172

ベンチャー企業のジャパン・ニュー・エナジーは2016年10月12日、京都大学との共同研究で開発した新方式の地熱発電システムを用いた実証に成功したと発表した。「JNEC(ジェイネック)方式」と呼ぶシステムで、一般的な地熱発電のように地下から温泉水をくみ上げることなく発電が行えるのを特徴としている。同社によれば、世界初のシステムになるという。

日本は地熱資源に恵まれている一方、その利用率は数%にとどまっている。その原因なっているのが、適地が国立公園や自然公園の中に集中しており、発電所の建設が難しい場合が多いという点が1つ。また、地中から大量の熱水をくみ上げることによる、温泉源への影響も考慮する必要がある。そしてこうした事前の調査や調整、さらにその後の発電所の建設工事にも多くのコストを要するといった点が挙げられる。

ジャパン・ニュー・エナジーのJNEC方式という地熱発電システムは、こうした現状の課題をクリアすべく開発したものだという。その特徴の1つが温泉水を地下からくみ上げるのではなく、地上から水を注入し循環させる「クローズドサイクルシステム」を採用した点だ。

これは地下1450メートルまで埋設した「二重管型熱交換器」の中で、地上から加圧注入した水を地中熱によって温め、液体のまま高温状態で抽出する。次にこの高温となった液体を地上で減圧して一気に蒸気化し、タービンを回すことで発電するという仕組みだ。

温泉水を利用する一般的な地熱発電の場合、揚水管の内部などに不溶性成分が析出・沈殿し固形化するため、メンテナンスや交換が必要になる。加えて地下の蒸気や熱水が枯渇しないようにするため、発電に使用した熱水を地下に戻すための還元井の設置も必要だ。だが、温泉水を利用しないJNEC方式であれば、こうしたコストも大幅に削減できるという。

ジャパン・ニュー・エナジーはこのJNEC方式の地熱発電について、大分県玖珠郡九重町に建設した「水分発電所」で実証を行った。実証運転を継続している同発電所では、さらなる性能向上へ向けた技術開発を進めるとともに、大規模化も図る計画だ。現在は24kW程度の出力を、2025年をめどに3万kW(キロワット)にまで拡大するとしている。

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