依田一義のエネルギー情報171

ホンダは10月24日、高圧水電解型水素製造ステーションとして世界初となる充填圧力70MPaの「70MPa スマート水素ステーション(70MPa SHS)」を東京都江東区青海に設置し、実証実験を開始したと発表した。

実証実験は、環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」のもと、太陽光エネルギー由来の水素を製造する70MPa小型水素ステーションの運用効果を実証するもの。70MPa SHSは、本体の床面積を従来型より小さい約6平米に収めた小型サイズを実現。同社独自技術の高圧水電解システムにより、圧縮機を使用せずに製造圧力77MPaの水素を24時間で最大2.5kg製造し、製造した水素を約18kg貯蔵できる。また、充填圧力を70MPaにすることで、燃料電池自動車『クラリティ フューエル セル』が一充填で約750km走行できる量の水素充填が可能な小型水素ステーションとなった。

今回の実証実験では、70MPa SHSとクラリティ フューエル セル、可搬型外部給電器「Power Exporter 9000」を運用することで、実際の都市環境下でのCO2削減効果と緊急時における移動可能な発電設備としての実用性を検証する。

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依田一義のエネルギー情報170

都市ガスのない地域でガスボンベを家庭に配達するLPガス(液化石油ガス)事業者に変革の波が押し寄せている。第1波は今年4月の電力小売りの全面自由化、第2波は来年4月の都市ガス小売りの全面自由化だ。自由化の流れに乗って事業を見直す動きが相次いでおり、仮想通貨「ビットコイン」による支払いを受け付ける事業者まで現れた。(藤谷茂樹)

家庭向け電力販売に参入したLPガス事業者の三ツ輪産業(東京都)は11月から、電気料金をビットコインで支払えるようにする。全国初の試みで展開エリアは関西、中部、関東の予定だ。同社経営戦略部の大沢哲也部長は「経済的に余裕がある家庭がビットコインに関心を持っており、電気やガスの使用量も多い。新しい顧客を開拓できるサービスとして考えた」と説明する。日常生活ではまだなじみが薄いビットコインだが、サービスの先進性をアピールできそうだ。

LPガスと都市ガスを供給する日本瓦斯(ニチガス)はガス料金支払いにビットコインを加えただけでなく、昨年7月から水漏れや窓ガラス割れ、鍵の紛失など身近なトラブルに駆けつけて対応する新サービスを開始。同様のサービスは関西電力や、電力販売に新規参入した東京ガス、ソフトバンクに広がった。さらにニチガスは今年10月から、業界で初めて無料通話アプリ「LINE」を通じ、ガスコンロやファンヒーターなどのガス機器を購入できるようにした。

LPガスの各事業者は電力小売りへの参入を成長の機会としてだけでなく、来年4月に迫る都市ガス小売りの全面自由化への備えとして位置付けている。「LPガスから都市ガスに切り替え可能な地域もあり、顧客が奪われる可能性は強まる」。関西を中心にLPガスを販売し、電力小売りに参入した伊丹産業(兵庫県伊丹市)の担当者はこう指摘する。関電など大手電力も都市ガス小売りに参入する方針で競争が激しくなるため、伊丹産業は「攻めの姿勢」に転じた。

大阪ガス子会社でLPガス事業を手掛ける日商ガス販売(東京都)とダイヤ燃商(津市)もそれぞれ8月までに電力販売を始めた。「ほかのLPガス事業者が電気を扱う中、ガスだけではサービスレベルが見劣りしてしまう」(ダイヤ燃商)との判断だ。LPガス販売は米店や酒店といった個人事業主が手掛ける例も多く、事業者数は2万社近くに上る。LPガス利用世帯は約2400万件といわれるが、都市ガスの整備が行き届かない地方部が主で、少子高齢化による人口減少で需要の先細りは避けられない。

そこへ電力小売りの全面自由化が到来。大手電力会社と違い、ボンベの配達を通じて顧客と接することが多いLPガス事業者の場合、一定規模の顧客数と調達電源さえ確保できれば、ピンチが訪れる前にチャンスが広がっている状況だ。伊丹産業などLPガス14社は東京電力エナジーパートナーと、別の27社は東京ガスとそれぞれ提携。LPガス事業者は危機感をバネにエネルギー業界で存在感を増している。

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依田一義のエネルギー情報159

福島ガス発電(FGP、東京都千代田区)は、このほど開催した株主総会で、以前から検討および手続きを進めていた福島県新地町の「相馬港」における天然ガス火力発電事業の実施を決定した。

さらにFGP設立時の株主である石油資源開発(JAPEX)および三井物産の2社に加え、大阪ガス、三菱ガス化学、北海道電力の3社が新たにFGPに出資し、事業パートナーとして同事業に参画することも決議した。これによりFGPへの出資比率は石油資源開発33%、三井物産29%、大阪ガス20%、三菱ガス化学9%、北海道電力9%となる。

FGPは、電力の安定供給や震災からの復興を目指す福島県浜通り地域の経済の活性化への貢献などを目的に、同事業の実現に向けた検討と環境影響評価法にもとづく諸手続き(環境アセスメント)を進めている。そして今回、事業の基盤となる「相馬港天然ガス火力発電所(仮称)」の環境アセスメントなどの手続きが終了し次第、建設を開始すること、および建設に関する事前準備への着手を決定するとともに、発電の燃料となるLNGの調達や発電への知見を持つ3社の参画が決まった。これにより、事業推進体制がより強化されることになる。今後はFGPが主体となり、事業パートナー5社とともに、同事業を推進していく。

同発電所は、天然ガスを燃料とする59万kW(キロワット)のコンバインドサイクル方式発電設備2基(発電規模118万kW)で構成される。また、隣接するJAPEX相馬LNG基地(建設中、2018年3月操業開始予定)敷地内へ、新たな23万キロリットル級地上式LNG貯蔵タンク1基およびLNG気化装置の建設を計画しており、その建設管理と運用、およびLNGの気化と天然ガスの供給を、JAPEXに委託する予定だ。今後は、環境アセスメントを引き続き進めるとともに、施工会社との契約などを行い、2017年夏頃を見込む環境アセスメントなどの手続き終了後の着工と、2020年春の商業運転開始を目指す。

同発電所の計画は、「経済財政運営と改革の基本方針(2014年6月閣議決定)」に盛り込まれた、「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」において、「新たなエネルギーの創出(環境負荷の低いエネルギーの導入)」プロジェクトに位置づけられている。

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依田一義のエネルギー情報158

富士山の西側のふもとに広がる朝霧高原は避暑地として人気の高い場所で、広大な土地では4000頭を超える乳牛を飼育している。50軒ほどの酪農家が参画する富士開拓農業協同組合が中心になって、牛の糞尿を利用した「環境調和型バイオマス資源活用事業(富士宮モデル)」に取り組んでいく。
この事業は環境省と国土交通省が支援するプロジェクトで、家畜の糞尿や食品廃棄物を利用してバイオマス発電を実施しながら、環境負荷の低い事業モデルを確立する狙いがある。糞尿や廃棄物をメタン発酵させてバイオガス(消化ガス)を発生させた後に残る消化液は、農地や牧草地に肥料として散布するケースが多い。ところが液肥が地下水を汚染してしまう環境問題が顕在化し始めた。

そこで液肥を適正に処理できる下水処理施設に輸送して浄化する一方、バイオガスで発電した電力と熱も下水処理施設に送って利用する。液肥の散布量を減らして地下水の汚染を防ぐのと当時に、下水処理施設で再生可能エネルギーを活用してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減する“一石二鳥”の効果が期待できる。

このモデル事業の対象に選ばれたのが富士宮市の朝霧高原で、2018年度まで実証プラントを運用して「富士宮モデル」を構築する計画だ。実証プラントには乳牛の糞尿を受け入れる前処理設備をはじめ、発酵槽と発電設備、液肥を貯留・脱水して下水処理施設に搬出する設備などで構成する。

原料になる乳牛の糞尿は1日あたり350頭分に相当する20トンを予定している。糞尿を発酵させて作るバイオガスを使って、50kW(キロワット)の電力を作ることができる。このうち20kWをプラント内で消費した後に、残りの30kWを下水処理施設へ送電する。

電力を安く送電できる「自己託送」を利用

富士宮市の下水処理施設は朝霧高原から南へ30キロメートルほど離れた太平洋沿岸に近い場所にある。この間を電力会社の送配電ネットワークを使って「自己託送」の仕組みで電力を供給する。自己託送は発電事業者が関連施設などに電力を送る場合に利用できる制度で、小売電気事業者が送配電ネットワークを利用するのと比べて使用量が安いメリットがある。

富士環境農業協同組合は富士宮市や地元の設計会社の協力を得ながら、2016年度内にバイオマスプラントの建設工事に着手する。2017年10月に運転を開始する予定だ。1日24時間の連続運転を見込んでいる。1日の発電量は1200kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(10kWh/日)に換算して120世帯分に相当する。下水処理施設には1日に720kWhの電力を供給できる。

この実証プロジェクトの期間は3年間で2018年度末まで継続する。運転開始後1年5カ月の実証結果をもとに、富士宮モデルを確立して大規模なバイオマスプラントの展開を目指す。朝霧高原で飼育する4000頭を超える乳牛の半分程度(約2000頭)の糞尿を利用できるプラントの事業化が目標だ。

実証プロジェクトの事業費は約10億円を見込んでいる。国の事業として実施するために、収益を上げられない制約がある。かりに固定価格買取制度を適用できた場合には、年間に325日の稼働を前提にすると発電量は39万kWhになる。バイオガス発電の買取価格(1kWhあたり39円、税抜き)を適用すれば年間の売電収入は約1500万円になる。20年間の買取期間の累計で3億円程度である。

牛の糞尿を利用した大規模なバイオマスプラントの事業化にあたっては、液肥の処理に加えて採算性の確保が重要な課題だ。日々大量に排出する廃棄物を利用して再生可能エネルギーを効率的に作り出すハードルは高い。実用化できれば、酪農家を悩ます糞尿の処理と地域のCO2排出量を削減する有効な対策になる。

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依田一義のエネルギー情報157

太陽光発電システムを開発・販売するLooop(ループ)が4月1日に開始した「Looopでんき」の料金体系は衝撃的だった。電力の世界で常識になっていた「基本料金(月額固定)+電力量料金(従量課金)」の体系をとらず、「基本料金0円」の斬新なプランを打ち出したからだ。

当初は東京・中部・関西電力の管内から電力の供給を開始して、9月末の時点で契約件数が2万5000件を突破した。さらに9月から12月にかけて、東北・九州・北海道・中国電力の管内へサービス範囲を拡大していく。

「Looopでんき」には家庭向けの「おうちプラン」と事務所・商店向けの「ビジネスプラン」の2種類がある。どちらも基本料金0円に加えて、従量制の電力量料金の単価を月間の使用量に関係なく一律に設定した。電力会社の家庭向けの標準的なプランでは使用量が多くなるに従って単価は3段階で高くなっていく。「おうちプラン」は使用量の多い家庭ほど毎月の電気料金が割安になる仕組みだ。

10月6日にサービスを開始した九州電力の管内で電気料金を比較してみる。契約電力が40A(アンペア)で月間使用量が520kWh(キロワット時)の家庭の場合に、九州電力の標準メニューである「従量電灯B」よりも月額で992円、年間だと1万1904円安くなる。一般的な家庭(30A、300kWh)の使用量で比べても、「おうちプラン」は月額の電気料金が6900円で、「従量電灯B」の7021円よりも安い。

「おうちプラン」の単価は各地域の電力会社が「従量電灯」で設定している3段料金のうち、2段目の単価とほぼ同じ水準だ。たとえば東京電力の管内では「従量電灯B」の26円/kWhと同額で、九州電力の管内では「従量電灯B」(22.69円/kWh)よりも少し高い23円/kWhである。月間の使用量が300kWhを超えて増えていくほど、「おうちプラン」のほうが割安になる。

原子力が入る九州電力と電源構成の差も

家庭と比べて電力の使用量が多い事務所や商店向けの「ビジネスプラン」では、電力量料金の単価を1円/kWh高く設定した(北海道は2円/kWh高い)。電力会社が事務所・商店向けに提供している「従量電灯」の単価は家庭向けと同額のため、使用量の少ない事務所や商店だと「ビジネスプラン」のほうが割高になる場合がある。

Looopが試算した飲食店の例では、契約電力が8kVA(キロボルトアンペア)で月間の使用量が2183kWhの場合に、月額の電気料金が九州電力の「従量電灯C」と比べて4349円安くなる。資源エネルギー庁が一般的な飲食店のエネルギー利用状況を分析したレポートによると、月275時間の営業時間の居酒屋(床面積366平方メートル)では月間に平均2315kWhの電力を使っている。

九州電力も2016年4月1日から家庭向けと事務所・商店向けに新しい料金プランを提供している。家庭向けの「スマートファミリープラン」では基本料金が「従量電灯B」と同額で、電力量料金の3段目の単価を1.08円/kWh安くした。使用量の多い家庭が小売電気事業者に移行することを防ぐ対策だが、さほど魅力的な値引き幅とは言いがたい。

これに対して「スマートビジネスプラン」は基本料金を据え置きながら、電力量料金の単価を一律の22.63円/kWhに設定した。Looopの「ビジネスプラン」の24円/kWhよりも低いため、使用量が多い事務所・商店では電気料金が割安になる。契約電力が8kVAで比較すると、月間の使用量が1700kWhを超えてから九州電力の「スマートビジネスプラン」のほうが安くなる計算だ。

両社のプランは単価の差に加えて、提供する電力の電源構成にも違いがある。Looopは家庭を中心に太陽光発電の電力を高く買い取るサービスを実施して、再生可能エネルギー(FIT電気)の比率を高める方針だ。2016年4~9月の計画値ではFIT電気を20%、そのほかの再生可能エネルギーを6%、合わせて26%を再生可能エネルギー由来の電力で供給する。

一方の九州電力は全国に先がけて原子力発電所を稼働させたことから、2015年度の電源構成のうち10%を原子力が占めている。再生可能エネルギーはFIT電気を加えて14%である。九州では太陽光を中心にFIT電気が増加中だが、2016年度からは原子力の稼働率が向上してFIT電気を上回る見通しだ。

家庭を中心に原子力による電力の購入を嫌う層は少なくない。他の地域と比べて九州電力の管内で「Looopでんき」の契約数がどれくらい伸びるか注目である

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依田一義のエネルギー情報156

石油資源開発(JAPEX)と三井物産が共同で設立した福島ガス発電は11日、福島県の相馬港で計画する天然ガス火力発電事業の事業化を決め、新たに大阪ガス、三菱ガス化学、北海道電力の3社が参画すると発表した。電力自由化に伴う首都圏向けの電源を確保し、福島の復興に貢献する。3社が福島ガス発電の増資を引き受ける。出資後の持ち株比率はJAPEXが33%、三井物産が29%、大ガスが20%、三菱ガス化学と北海道電がそれぞれ9%。建設地はJAPEXが相馬港で建設中の相馬LNG基地の隣接地。総事業費は1000億円超の見込み。

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依田一義のエネルギー情報155

国を挙げてCO2(二酸化炭素)の排出量削減に取り組む中で、火力発電所から排出するCO2を回収・貯留・利用できる設備の普及が大きな課題になっている。国が支援する実証プロジェクトが全国各地で進んでいるが、いち早く民間企業による商用レベルのCO2回収・利用計画が愛媛県で動き出した。

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愛媛県の新居浜市を中心に発電事業を展開する住友共同電力が、主力の火力発電所にCO2分離・回収設備の導入を決めた。2008年に稼働した「新居浜西火力発電所」の3号機に、発電後の排ガスからCO2を分離・回収する設備を併設する計画だ。2018年6月に運転を開始して、回収したCO2を同地区に立地する住友化学の工場に供給する。

新居浜西火力発電所の3号機は石炭と木質バイオマスを混焼して、周辺地域に立地する住友グループ各社に電力と蒸気を供給している。発電能力は15万kW(キロワット)にのぼる。木質バイオマスを燃料に加えることで年間に1万トン前後のCO2排出量の削減効果を生み出しているが、新たにCO2分離・回収設備を導入して年間に4万8000トンのCO2を生産・利用できる見込みだ。

医薬品や家畜の飼料の原料をCO2で作る

CO2分離・回収設備は新日鉄住金エンジニアリングの製品を導入する。新日鉄住金エンジニアリングはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託研究を通じて開発したCO2分離・回収設備を製品化している。CO2を溶剤に吸着させて分離・回収する化学吸収法を使う点が特徴である。

住友共同電力からCO2の供給を受ける住友化学の工場では、必須アミノ酸の「メチオニン」を製造する工程でCO2を副原料として利用する。メチオニンは医薬品をはじめ、家畜の飼料に添加する用途で大量に使われている。

新居浜地区にある住友化学の工場では年間に10万トンのメチオニンを製造している。2018年の半ばに生産能力を25万トンに引き上げる計画で、そのタイミングに合わせて住友共同電力がCO2の供給を開始する。

国内では火力発電所から回収したCO2を使って、バイオ燃料の原料になる微細藻類を培養する試みなどが始まっている。住友共同電力と住友化学がメチオニンの製造にCO2の利用を開始すると、商用レベルのCO2回収・利用プロジェクトでは国内で初めてのケースになる。

住友共同電力は89年前の1927年に新居浜地区で電力の供給を開始した。現在は愛媛県内に3カ所の火力発電所のほか、愛媛県と高知県で合計11カ所の水力発電所を運転している。火力発電所では木質バイオマスや下水の汚泥から作る消化ガスを混焼してCO2排出量の削減に取り組んできた。さらに新居浜地区ではCO2排出量の少ないLNG(液化天然ガス)を燃料に使う火力発電所(発電能力15万kW)も建設中だ。

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依田一義のエネルギー情報154

サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、ロシアから原油減産の取り組みを支持する姿勢を得てイスタンブールを後にした。しかし、石油輸出国機構(OPEC)内部では、世界的な合意に向けた最後の障害となっている各国への減産枠の配分について意見が分かれている。
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ロシアのプーチン大統領が10日、供給に関する合意についてOPECを支持する姿勢を示したことを受け、ロシアの2大石油生産会社は11日、原油減産に関して政府の指示に従う方針を明らかにした。これにより、世界の原油生産の半分を占める産油国が参加する合意の成否は、今月中に開催される予定のOPEC委員会に委ねられた。同委員会はベネズエラとイラクとの産油量に関する議論を解決する必要がある。
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PVMオイル・アソシエーツ(ロンドン)のアナリスト、タマス・バーガ氏は電話インタビューで「OPECとOPEC非加盟国が何らかの協力にこぎ着ける可能性はこれまで以上に高まっている」と指摘した上で、「たとえ合意に達しても、実際に生産統計を目にする合意後の3カ月が非常に重要だ」と述べた。
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OPEC内部の対立はこれまでのところ、OPEC月報に掲載される報道機関や調査機関などの生産推計が焦点。こうした推計は一般的に「二次情報」として知られる。アルジェでの合意が履行される場合に各国の生産枠の決定に利用される可能性があり、ベネズエラとイラクは推計について低過ぎると主張している。

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依田一義のエネルギー情報153

IT関連機器開発のインフォメティス(東京都港区)はこのほど、東京電力エナジーパートナーとAI(人工知能)技術を用いた家庭内見守りサービス提供に関する業務提携を行った。

このサービスでは、インフォメティスが開発したAIによる家電分離推定技術を用い、家庭全体の電流の測定データから家電別の利用情報を抽出することが可能だ。家電分離推定技術は分電盤に小さなセンサーを1つ設置するだけで、その家庭でどの家電を、いつ、どれくらい使用されているかが推定できる技術。その測定データから洗濯、調理といった家事回数や深夜の家電使用の増加など生活の変化や、連続して家電が使用されない、またはつけっぱなしなどの異変を把握する。

これまで提供されているWebカメラなどを利用した見守りサービスとは異なり、その時に目に見える状態だけでなく、家の中での活動パターン傾向とその時間変化を見えるようにすることで、暮らしぶりを見守ることができるのが特徴だ。また、カメラを利用しないため、見守り対象者の監視されている抵抗感を低減した「ゆるやかな見守り」も実現できるとしている。さらに、専用Webアプリケーションを通じて見守り対象者の暮らしぶりを見守る側に知らせする仕組みを提供し、見守る側と見守り対象者とのコミュニケーションを促す。

同サービスではインフォメティスがAIによるサービスプラットフォームを提供し、東京電力エナジーパートナーが見守りサービスを提供する。サービスの導入に先駆けて、両社は2015年3月より約1年かけて実証実験を行い、電力情報を利用したサービスの受容性やセンサーの施工性などを300件以上のモニター家庭を対象に検証し、業務提携に至った。

インフォメティスは2013年4月8日に設立。同年7月1日にソニーからカーブアウト(企業から戦略的に技術や事業を切り出し、ベンチャー企業を立ち上げること)し、AIによる家電分離推定技術を使った事業開発を行っている。

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依田一義のエネルギー情報152

6日のニューヨーク原油先物市場で、代表的な指標のテキサス産軽質油(WTI)の11月渡し価格は、一時、節目となる1バレル=50ドルを超えた。

取引時間中としては、6月24日以来、約3か月半ぶりとなる。

市場では、9月に石油輸出国機構(OPEC)が減産で合意したことをきっかけに、原油価格が持ち直すとの見方が続いている。

原油価格は2月、世界経済の減速や経済制裁が解除されたイランによる増産などで1バレル=26ドル台に下落し、2003年4月以来、約12年10か月ぶりの安値をつけていた。

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