依田一義のエネルギー情報151

東京ガスの広瀬道明社長は6日、都内で記者会見し、4月の電力小売りの全面自由化に伴い参入した電力事業について、2017年度末までに累計100万件の電気契約を目指す方針を明らかにした。電力担当役員を新設することも検討するといい、“新電力の最大手”が電力事業の拡大に意欲を見せた。

東ガスによると、4日時点での電気契約数は約48万2000件。7月には初年度目標の40万件を早々に突破し、目標を53万件に引き上げていた。広瀬社長は契約が伸びた要因を「従来の東京ガスに対する信頼に加え、ライフバルを中心とした営業努力、サービスが相まった」と分析。今後も顧客サービス向上に注力し「電力会社に匹敵するような組織体制を作っていければ。電力のことだけ考える役員がいてもいいのではないか」と述べた。

一方、来年4月に始まる都市ガス小売りの全面自由化については、「(契約の)2、3割はスイッチングされると覚悟している」と危機感を示した。

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依田一義のエネルギー情報150

東京ガスは3日、タイの天然ガス火力発電事業に参画したと発表した。同社が海外で発電事業に携わるのは4件目で、東南アジアでは初めて。

子会社「東京ガスアジア」を通じ、タイで発電事業を手掛ける「イースタンパワー&エレクトリックカンパニー」の株式28%を、フランス大手トタルのグループ会社から取得した。

イースタンパワー社は、首都バンコク近郊に出力35万キロワットの火力発電所を保有し、発電した電気をタイ発電公社へ2023年まで売電する契約を結んでいる。

東ガスはこれまで、メキシコやベルギーで計3カ所の発電事業に参画。東南アジアでは、ベトナムに液化天然ガス(LNG)の販売や基地建設を手掛ける合弁会社を設立するなど海外展開を加速している。

東ガスは「いずれはガス事業やエネルギーサービスなど日本でやっているような『バリューチェーン』を展開していきたい」としている。

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依田一義のエネルギー情報149

資源エネルギー庁が発表した8月の燃料油国内販売は、前年同期比3.0%減の1428万キロリットルと、11カ月連続マイナスとなった。

油種別にみると、灯油、軽油、A重油は前年を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、B・C重油が前年を下回った。

燃料油の生産は同2.6%減の1543万キロリットルと4カ月ぶりに前年を下回った。油種別にみると、軽油、A重油、B・C重油は前年を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油が前年割れ。

燃料油の輸入は同2.5%減の281万キロリットルと7カ月連続でマイナス。輸出は310万キロリットル、同1.3%減と4カ月ぶりに前年を下回った。

燃料油の在庫は1074万キロリットル、同2.6%減と13カ月連続して前年を下回った。油種別にみると、ガソリン、灯油、軽油は前年を上回ったが、ナフサ、ジェット燃料油、A重油、B・C重油はマイナスとなった。

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依田一義のエネルギー情報148

富士経済は、実証から実用・普及への進展、また新たな用途開拓も待たれる燃料電池システムの世界市場を調査した。その結果を報告書「2016年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめた。

それによると、2015年度の市場は、1,064億円となった。産業・業務用と家庭用の2大用途分野が市場の8割を占める。2013年度と比較すると産業・業務用が3割以上減少したが、その他の用途分野がカバーし、全体的には横ばいとなっているという。日本の家庭用燃料電池も出荷台数が大きくは伸びていない。しかし、2016年度以降はその他の用途分野に含まれるフォークリフトやバスなどの駆動向けが実証段階から実用・普及段階へ移行して北米から欧州に広がり、燃料電池車市場も徐々に本格化し、日本では家庭用燃料電池の普及が進むことで市場は拡大し、2030年度には2015年度比46.1倍の4兆9,063億円が予測されるとしている。

産業・業務用は、商業施設、ビル、工場などに設置される自家発電タイプから、売電を目的とした燃料電池発電所までを対象としている。北米や韓国における大規模な燃料電池発電所プロジェクトが一服したことから、市場は特に2015年度に大きく落ち込んだが、2016年度は回復に向かい、各国におけるRPS(Renewable Portfolio Standard)制度や固定価格買取制度、各種補助金などの政策効果から、2017年度以降は再び拡大推移するとみられるという。

家庭用は、住宅に電力を供給するための燃料電池システムであり、日常的に利用されるものを対象としている。普及は日本が最も進んでおり、市場の94%(金額ベース)を日本が占める(2015年度)。日本では2016年度以降も導入補助金が継続されることになり、同時に水素・燃料電池戦略ロードマップが改訂(2016年3月)され、目標普及台数として掲げられている2020年に140万台、2030年に530万台を実現するため、PEFCは2019年までに80万円、SOFCは2021年までに100万円(いずれも設置工事費込)といった明確な目標価格(普及価格)が示された。目標価格が達成されれば、普及が大きく進むとみられる。海外では欧州、アジアは実績があるが、北米は無い。欧州ではドイツが先行するとみられる。ガスと電力の価格差が大きいほど導入メリットが大きいが、ドイツはその価格差が大きい。イギリスも価格差が大きく市場拡大が期待されるとしている。

燃料電池車は、2020年度の世界累計出荷台数が約4万台、以降は日本、北米、欧州、アジアの主要自動車メーカーの燃料電池車がラインアップし、年間数万台のペースで出荷が拡大するとみられる。出荷拡大の時期は、やや遅れ気味ではあるが、2025年から2030年頃になるとみられる。パリ協定の影響によりCO2削減の取り組み強化が急激に進む可能性もあり、その場合は市場が一気に拡大するという。

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依田一義のエネルギー情報147

東京ガスグループで液化石油ガス(LPガス)事業を手掛ける東京ガスエネルギー(東京GE、東京都中央区)は27日、同業の日商ガス販売(NGH、同東村山市)と伊藤忠エネクスホームライフ関東(HL関東、同港区)と千葉県北西部地域の配送を効率化するため業務提携すると発表した。千葉県北西部などを配送地域にするNGHとHL関東が共同出資した物流会社に資本参加する。出資額は350万円。LPガス業界は人口減による需要減少に伴い、企業間競争が激しくなっており、コスト競争力の強化が課題となっている。

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依田一義のエネルギー情報146

仮想通貨「ビットコイン」の取引所を運営するレジュプレス(東京)は26日、新電力と連携して、ビットコインで電気料金を支払えるサービスを11月から始めると発表した。ビットコインで公共料金の支払いができるサービスは国内初という。

支払いができるのは、LPガス販売の三ッ輪産業(東京)の子会社の新電力「イーネットワークシステムズ」との契約。電気料金はビットコインに換算され、レジュプレスに設けるビットコインの取引口座から引き落とされる。

レジュプレスには3万口座があるといい、新電力は口座開設者からの契約獲得を狙う。レジュプレスの利用者は、電気料金をビットコインで支払えるメリットがある。同社の和田晃一良(こういちろう)社長は「公共料金にも使えることで、普及の大きな一歩になる」と期待を込める。

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依田一義のエネルギー情報145

「石炭ガス化複合発電」(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)は日本が世界をリードする発電技術の1つで、LNG(液化天然ガス)を燃料に利用する火力発電と同等の発電効率を発揮する。燃料が安い石炭を使ってCO2(二酸化炭素)の排出量を削減できる利点があり、国を挙げて実用化に取り組んでいる。
IGCCによる最先端の石炭火力発電設備を福島県内の2カ所に建設することが正式に決まった。1カ所は太平洋沿岸の広野町(ひろのまち)にある東京電力の「広野火力発電所」の構内で、既設の石炭火力発電設備に隣接して建設する。すでに貯炭場の工事を2015年4月から進めていて、5年後の2021年9月に営業運転を開始する計画だ。

もう1カ所は同じ太平洋沿岸のいわき市にある常磐共同火力の「勿来(なこそ)発電所」である。東京電力と東北電力が共同で運営する火力発電所で、現在運転中の5基のうち1基は日本で初めてIGCCを商用化した発電設備だ。既設のIGCCの発電能力は25万kW(キロワット)だが、2カ所に新設するIGCCでは54万kWに達する。

勿来発電所では既設の設備の改修工事が不要なことから、広野町よりも早く2020年9月に営業運転を開始できる見込みだ。1年前の2019年9月には試運転に入ることを想定している。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時点では最先端のIGCCが福島県で稼働している状況を世界に示して、震災からの復興をアピールする狙いがある。

ピーク時に最大2000人の雇用を創出

福島県に建設するIGCCの実証設備は国と県が推進する復興計画の一環で、官民連携で取り組む一大プロジェクトである。建設工事のピーク時には2カ所を合わせて1日あたり最大2000人規模の雇用を創出する。工事に先立って実施した環境影響評価から今後の発電設備の運用までを含めると、1600億円にのぼる経済波及効果が見込まれている。

さらに発電技術の点でも期待は大きい。国が策定した次世代火力発電のロードマップでは、IGCCを石炭火力の中核の技術に位置づけている。現在の石炭火力で最新鋭の「超々臨界圧」(USC:Ultra Super Critical)の発電効率が40%程度であるのに対してIGCCでは50%程度まで引き上げることが可能だ。発電効率が高くなる分だけ燃料費を低減できて、同時にCO2排出量の削減にもつながる。

福島県に新設するIGCCは石炭をガス化する時に酸素と窒素が混じった状態の空気を使う「空気吹きIGCC」と呼ぶ方式を採用する。勿来発電所で運転中のIGCCでも空気吹き方式を採用している。

このほかに空気から酸素を抽出してガス化の効率を高める「酸素吹きIGCC」がある。中国電力とJ-Power(電源開発)が広島県に建設中の「大崎クールジェンプロジェクト」のIGCCで採用している。発電能力は16.6万kWで、2017年3月に実証運転を開始する予定だ。

酸素吹き方式のほうが石炭の燃焼温度を上げて効率よくガスを発生させることができる半面、空気から酸素を抽出する設備が必要になるため発電所内の消費電力が大きくなる。発電所から送電できる電力の効率では相対的に空気吹き方式のほうが高い。

福島県に新設するIGCCは発電端効率(発電設備の出力ベース)が50%で、送電端効率(発電所から送電線への出力ベース)は48%になる見通しだ。勿来発電所で運転中のIGCC(10号機)の送電端効率40.5%と比べて7.5ポイント高くなり、大崎クールジェンで建設中の酸素吹きIGCCの40%を大きく上回る。

火力発電の効率は燃料の燃焼温度によっても差がつく。勿来10号機は石炭から発生させたガスを1200℃程度で燃焼させて発電するのに対して、新設のIGCCでは1500℃程度までガスの燃焼温度を高めて発電能力を引き上げる。2カ所の発電設備は三菱日立パワーシステムズが供給する。

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依田一義のエネルギー情報144

日本製紙、三菱商事パワー、中部電力の3社が設立した発電事業会社「鈴川エネルギーセンター」は、2013年9月4日に設立された新たな電力供給の枠組みである。資本金は約26億円で、出資比率は三菱商事パワー70%、日本製紙20%、中部電力10%となっている。日本製紙は発電設備の運転および保守を受託。発電した電力は全量を電力小売り事業者であるダイヤモンドパワー(東京都中央区、中部電力80%・三菱商事20%出資のPPS)に販売する。
今回、同枠組みにより建設した火力発電所が営業運転を開始した。発電所は日本製紙の旧鈴川工場の生産設備跡地(静岡県富士市)を活用し、建設を進めていたもので、発電出力は約10万キロワット(送電端)。エネルギー源には石炭を用いる。

日本製紙は、全国にある工場の設備や土地の他、長年培ってきた技術やノウハウ、人材を活用した各種の事業を展開している。社会への電力安定供給に向けたエネルギー事業もその1つで、火力発電所の鈴川エネルギーセンターでは、発電設備の操業技術を生かし、設備運営を通じて電力の安定供給に貢献する考えだ。この他、再生可能エネルギーによる小松島(太陽光)および八代(バイオマス)発電所が稼働中。さらに石巻、秋田(ともに石炭・バイオマス)でも発電所の開設を目指すなど、エネルギー事業の拡大に向けて取り組みを強化している。

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依田一義のエネルギー情報143

中部電力と資源開発大手の国際石油開発帝石(INPEX)は23日、INPEXが天然ガスを供給している西武ガス(埼玉県飯能市)など中堅都市ガス事業者3社と電力卸販売で合意したと発表した。3社は西武ガス、松本ガス(長野県松本市)、諏訪ガス(同諏訪市)。いずれも自社供給エリア内でガスと電気のセット割引を提供する。

3社の契約件数は計約5万9000件に上る。中部電とINPEXは昨年7月に電力販売事業で合意。これまで武州ガス(埼玉県川越市)など9社と電力卸販売で業務提携しており、今回3社が新たに加わり電力卸販売先は12社に拡大した。中部電は地域のガス会社との提携を強化し、域外の首都圏を中心に営業基盤を広げる。

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依田一義の不動産情報150

先進29カ国で構成するIEA(国際エネルギー機関)が世界のエネルギー投資動向を「World Energy Investment 2016」にまとめて9月14日に発表した。このレポートで2015年の総投資額が1.8兆ドル(約180兆円)にとどまり、前年から8%も減少したことが明らかになった。

投資額の内訳を見ると、全体の50%を石油・ガス・石炭が占めるものの、火力発電と合わせて前年から6ポイント低下した。代わって再生可能エネルギーが1ポイント増の17%、電力ネットワークが2%増の14%、省エネルギーに対する投資額も2ポイント増の12%へ伸びている。世界のエネルギー産業がCO2(二酸化炭素)の削減に向けて、構造変革(エネルギーシフト)を進めていることを示す結果だ。

再生可能エネルギーの発電設備に対する投資額は2900億ドル(約29兆円)で、2011年から2015年にかけて横ばいの状態が続いている。2015年の投資額のうち風力と太陽光が3分の1ずつを占めた。IEAによると洋上風力の投資額が伸びている。

発電設備に対する投資額は横ばいながら、投資がもたらす再生可能エネルギーの発電量は格段に増えている。2011年と比べて2015年に投資した発電設備の発電量は33%も拡大する。太陽光をはじめ発電設備のコストが低下して、同じ投資額でも発電能力の大きい設備を建設できるようになったためだ。この傾向は今後も続いていく。

蓄電池の投資額は6年間で10倍に拡大

再生可能エネルギーの発電設備が拡大するのに伴って、電力ネットワークの投資も増えている。2015年の全世界の投資額は2600億ドル(約26兆円)で、前年から14%増の大幅な伸びを示した。投資額のうち55%はネットワークの新設、35%は古いネットワークの更新に、残り10%が再生可能エネルギーの発電設備をネットワークに統合する分野に使われた。

その中でも特に伸びているのは電力ネットワークの増強に必要な蓄電池に対する投資である。2010年から2015年の6年間で10倍に拡大して10億ドル(約1000億円)を超えた。それでも電力ネットワークの投資額に占める割合は0.4%に過ぎず、今後さらに増えていくことは確実だ。

一方で原子力発電所の建設に対する投資は流動的である。2015年に建設を開始した原子力発電所の規模は約900万kW(キロワット)だった。そのうち7割以上を中国が占めている。2010年までは中国を筆頭に建設プロジェクトが拡大してきたが、福島第一原子力発電所の事故を契機に全世界で縮小傾向が始まった。

世界各国でCO2削減の動きが広がり、2015年には石油・ガスの開発投資にも急ブレーキがかかった。投資額は5830億ドル(約60兆円)と巨大ながら、前年から25%も減っている。さらに2016年にも24%の減少が見込まれていて、2017年以降も減り続ける可能性が大きい。IEAによると3年連続で石油・ガスの開発投資が減少したことは過去に1度もない。

石油・ガスから再生可能エネルギーを中心とする新しい産業構造にシフトしていけば、発電設備が排出するCO2は減っていく。2015年に全世界で運転を開始した発電設備のCO2排出係数は平均で420kg-CO2/MWh(CO2換算キログラム/1000キロワット時)だった。従来の発電設備の平均値(530kg-CO2/MWh)から20%も少なくなっている。

ただしIEAの分析では2014年に新設した発電設備と比べるとCO2排出係数は上昇している。2015年は中国を中心に石炭火力発電が増加したために、全世界の再生可能エネルギーの拡大効果を相殺してしまった。

日本国内のCO2排出係数は2014年度の時点で平均579kg-CO2/MWhだった。2015年度は火力発電の減少によってCO2排出係数が低下することは確実だが、それでも全世界の平均値を上回る見込みだ。CO2排出係数を引き下げるためには、省エネルギーの効果で国全体の発電量を減らしながら、火力発電を縮小する方策が最も有効である。

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