依田一義の不動産開発情報44

JR東日本は5日、浜松町駅(東京都港区)北東の竹芝地区約2万3000平方メートルを、4年後の東京五輪・パラリンピックに向け再開発すると発表した。1998年に開設された劇団四季の専用劇場は、建て替えのため来年6月末から休止する。

新たに5階建ての劇場棟と10階建ての駐車場棟、高級ホテルやオフィス、商業施設が入る26階建ての高層棟を建設する。延べ床面積は約10万3000平方メートルで、投資額は未定だが600億円規模とみられる。来年中に着工し、2020年春以降、順次開業する予定。また再開発では、浜離宮恩賜庭園を借景とした大型広場も設ける。JR東の冨田哲郎社長は同日の記者会見で「文化芸術の発信拠点として価値を高め、新たな観光・ビジネス拠点にしたい」と述べた。

一方、劇団四季の公演は品川区・大井町の専用劇場や、横浜のKAAT神奈川芸術劇場などで継続する。

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依田一義のエネルギー情報112

東北電力で新たに営業運転を開始した新仙台火力発電所3号系列(仙台市宮城野区、出力98万kW)は、経済性の向上と二酸化炭素排出削減を実現するため、新設したものとなる。

3号系列は、経年化が進んだ1号機(使用燃料:重油、35万kW)を2015年3月に、2号機(同:天然ガス・重油・原油、60万kW)を2011年10月にそれぞれ廃止し、新たにLNGを燃料とする高効率コンバインドサイクル発電設備(ガスタービン+蒸気タービン+発電機、49万kW×2軸)として建設したものとなる。

2015年12月に営業運転を開始した3-1号と、2016年7月に営業運転を開始した3-2号で構成されている。これまでのコンバインドサイクル発電設備に関係する運転・保守で培った知識や技術を設計に反映し、信頼性と熱効率の向上に努めた結果、世界最高水準となる60%以上の熱効率を達成した。これにより、従来型のガス火力と比べ、燃料消費量および二酸化炭素排出量がそれぞれ約3割削減できるものと、同社は試算している。

また、3号系列の設備の特徴として、同社初のLNG燃料設備を発電所の構内に設置している。LNG燃料設備は、同当社企業グループである日本海エル・エヌ・ジーが、日本海側に新潟基地を保有しているが、今回、太平洋側にLNG燃料設備を設置することで、自然災害に対するリスク分散が図られる。

さらに、東日本大震災で同社火力が被災した経験を踏まえて、配管サポートの強化や発電所構内に防潮堤を設置するなどの耐震・津波対策を実施することで災害への備えも強化している。

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依田一義のエネルギー情報111

中部電力グループの中部プラントサービスが三重県の多気町(たきちょう)で木質バイオマス発電所を稼働させた。2015年3月に建設工事に着手した「多気バイオパワー」が予定通り1年3カ月で完成して、6月27日から営業運転に入った。

発電能力は6.7MW(メガワット)と大きく、年間に5000万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算すると1万4000世帯分に相当する。人口1万5000人の多気町の総世帯数は約5600世帯で、その2.5倍に匹敵する電力量になる。

燃料は地域の森林で発生する間伐材のほか、道路工事などに伴って伐採する工事支障木を利用する計画だ。年間の使用量は6.5万トンを見込んでいる。三重県の面積のうち64%を森林が占めていて、県のほぼ中央に位置する多気町から見ると西側に森林地帯が広がっている。

中部プラントサービスは多気バイオパワーの運転開始に先立って、多気町の北から西にかけて隣接する松阪市に木質バイオマス燃料を調達する共同企業体「三重バイオマスJV」を4月に設立した。松阪市内で2014年11月に運転を開始した「松阪木質バイオマス発電所」(発電能力5.8MW)と共同で燃料を安定的に調達する狙いだ。

三重バイオマスJVは年間に15万トン程度の間伐材や工事支障木を調達して、木材の備蓄から乾燥、さらに木質チップの製造と輸送までを請け負う。多気バイオパワーの構内には木質チップの貯蔵庫があって、三重バイオマスJVから供給を受けた木質チップをフィーダでボイラーに送り込んで燃焼させる仕組みだ。ボイラーで475度の蒸気を作り出し、蒸気タービンを回転させて発電する。

多気バイオパワーは「多気クリスタルタウン工業ゾーン」の11万平方メートルのうち8800平方メートルの敷地に建設した。この一帯では液晶産業を中核に工業や商業を発展させる一方、地域の特性を生かした産業の創出に取り組んでいる。木質バイオマス発電所も新たな雇用を生み出す。

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依田一義のエネルギー情報110

京都の大手メーカーが、工場や店舗の電力を効率的に使うシステムや製品の販売に注力している。電力不足への懸念や再生可能エネルギーの普及などで、企業の省電力ニーズが一段と高まっていることに対応し、賢い電力消費をサポートする。
日新電機は、通常の電力や太陽光発電、ガスコージェネレーション(熱電併給)、蓄電池などの分散した電源を効果的に使用する工場向けのエネルギー管理システム(EMS)を開発し、4月に販売を始めた。電力の需要予測に沿って各電源の運用を10分単位で48時間先まで計画し、電気料金の低減や電力消費量の抑制につなげる。初年度で売上高20億円を計画する。
同社は「今後は太陽光発電の売電単価下落で、つくった電力を自家消費するニーズは増える」(新エネルギー・環境事業本部)とみて、中規模以上の工場への拡販を目指す。

■年100万円の削減効果

京セラは、店舗やオフィス向けのEMSを開発し、2015年度から本格販売している。空調や冷蔵ケースなどの電力を監視し、快適な室温を維持しながら機器の稼働を制御する。昨年の実証ではスーパー1店舗の電気代で最大年100万円の削減効果があったという。
さらに日本IBMと連携し、電力会社からの節電要請に応じて複数の商業施設や工場などの電力消費を自動調整するデマンドレスポンス(需要応答)の実証実験も重ねる。分散型電源を含めた高度な電力制御機能をEMSに追加する計画だ。
オムロンは、産業用太陽光発電システム向けに電気の出力を調整する屋外三相パワーコンディショナーを今春発売した。パワコンは住宅用を中心に手掛けてきたが、幅広い出力に対応する機器の需要が高まるとみて、産業用に本格参入した。容量別に3種類を用意し、3年間で3万台の販売目標を掲げる。

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依田一義のエネルギー情報109

下水処理場で発生するバイオガスを活用した民設民営方式の発電事業が全国に広がっている。バイオマス(生物資源)を利用した発電事業は燃料の確保が課題だが、下水処理場のバイオガスであれば安定して調達しやすい。経済的な側面から見れば、下水処理場を所有する自治体は土地貸借料やバイオガスの売却益を、発電を行う民間事業者は売電収益を得られる。このように双方へのメリットがある点もバイオガス発電の拡大を後押ししている。

こうしたバイオガス発電事業を積極的に展開している1社が月島機械だ。下水処理場における汚泥処理や汚泥消化設備、ガス貯留設備や発電利用設備などに関するノウハウを強みに、全国8カ所でバイオガス発電事業を進めている。さらに2018年4月から、島根県松江市の「宍道湖東部浄化センター」でもバイオガス発電事業を開始する計画だ。2016年6月に島根県に本拠を置くカナツ技建工業と共同で、浄化センターを運営する鳥取県と事業契約を締結した。

発電を行う宍道湖東部浄化センターは、シジミの漁獲量が全国一位で知られる宍道湖(しんじこ)の近くに位置している。宍道湖東部に位置する松江市や安来市からの汚水を処理しており、処理した水は宍道湖に隣接する中海(なかうみ)へ放流している。宍道湖・中海の水質改善のため、窒素やリンの除去を目的とした高度処理運転も行っている処理場である。

この浄化センターの敷地内にガス発電設備を設置し「宍道湖東部消化ガス発電所」として発電事業を行っていく。合計出力759kW(キロワット)の発電設備を設置して、下水汚泥処理の過程で発生するメタンガスで発電する(図)。これまで発生したメタンガスは、一部を浄化センター内の燃料として利用していた。年間の発電量は、一般家庭1200世帯分の使用電力量に相当する430万kWh(キロワット時)を見込んでいる。

発電期間は2018年4月から20年間を予定する。発電した電力は固定買取価格制度を利用して電力会社に売電する予定だ。メタン発酵ガスを利用するバイオマス発電の場合、1kWh当たり税別39円の買取価格を適用できる。年間の売電額は1億6000万円以上になる見込みだ。

発電事業者である月島機械とカナツ技建工業は、この売電収益の中から消化ガスの料金や土地使用料、固定資産税などを島根県に支払う。民設民営方式のため、発電設備の設置費用や維持管理費は発電事業者側で負担する。つまり島根県は既にある資産を活用して、事業資金の投入や資産を所有することなく収益を挙げられる。県は得た収益を流域下水道事業に活用していく予定だ。

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依田一義のエネルギー情報108

再生可能エネルギーの中で開発が最も遅れているのは地熱である。固定価格買取制度(FIT:Feed-In Tariff)の認定状況を見ても、地熱だけが極端に少ない。つい最近まで地熱資源が豊富な国立・国定公園の区域内で地熱発電所の建設を規制していたほか、温泉地でも発電設備の導入に反対する意見が根強くあったからだ。東日本大震災を機に再生可能エネルギーの重要性が高まり、政府は国立・国定公園内の規制緩和に乗り出した。

一般に地熱発電所を建設するためには地下の掘削調査から始める必要があり、開発工程が長期に及ぶ。2017年度に改正するFIT法では数年先の買取価格を決めて地熱発電の事業性を判断しやすくする。それに加えて開発リスクを低減するための掘削技術の開発や全国規模で支援体制の整備も進めていく。

大規模な地熱発電所になると、運転を開始するまでに10年以上かかる。最初は地下の地熱資源量を調査するのに5年程度、次いで環境影響評価に3~4年、そして発電設備の建設にも3~4年を必要とする。この間に十分な量の地熱資源を確保できないこともあれば、地元の反対で建設を断念しなくてはならないケースもある。ほかの再生可能エネルギーと比べて開発リスクが大きいため、発電事業者も二の足を踏みがちだ。

それでも固定価格買取制度が始まったことによって、地熱資源が豊富な火山地帯を中心に発電所の建設プロジェクトが広がってきた。国立・国定公園の区域内でも開発案件が増えている。このうち環境影響評価を必要としない出力7500kW(キロワット)未満の地熱発電所が福島県や熊本県で相次いで運転を開始した。

地熱発電所の開発にあたっては、地下に存在する地熱資源の把握が欠かせない。発電事業者にとっては多額のコストがかかるうえに、十分な資源量を確認できる成功率は決して高くないのが現状だ。こうした地熱資源調査のリスクを低減するために、政府は「ヒートホール掘削」と呼ぶ新しい手法を普及させる方針だ。

地熱資源の分布状況を3次元で可視化

ヒートホール掘削は地下500メートル程度まで小口径の調査井(ちょうさせい)を掘る方法で、地下の温度データを収集できる。通常の掘削調査では地下1500~3000メートルの深さまで大口径の調査井を掘る必要があり、それと比べて調査にかかる費用を大幅に軽減できるメリットがある。ヒートホール掘削で地下の高温域を特定できれば、その後に実施する発電に向けた掘削調査の成功率が高くなる。

このほかにも地熱資源調査の精度を向上させる技術の開発が進んでいる。地熱資源調査の初期段階では、地下にある地熱の貯留層の位置を確認することが重要だ。従来は2次元のデータで貯留層を確認していたが、新たに3次元で可視化する技術を開発して分布状況を正確に把握できるようになる。

一方では地下を掘削する機材にも改良を加える。これまで地熱開発の掘削調査には石油開発で使われる機材を応用してきた。ところが石油開発の現場は地盤の軟らかい場所が多く、同じ機材を地熱開発に利用すると掘削効率が悪くなる。この問題を解消するために、硬い地盤に適した素材を使って掘削機材を開発する。

発電所の運転を開始した後にも課題は残っている。地熱発電では地下からくみ上げた蒸気と熱水でタービンを回転させる方法が一般的だ。蒸気と熱水の中にはシリカ(ケイ素)が含まれている。シリカは結晶化する特性があり、さまざまな工業製品に使われる有益な素材だが、発電設備などに付着してトラブルの原因にもなる。

発電に利用する蒸気と熱水からシリカを回収できれば、トラブルを回避できるうえに、価値のある物質を抽出して資源の有効活用につながる。地熱発電所にシリカの回収プラントを導入するための技術開発も国の重要なテーマになっている。

地熱発電所の建設を円滑に進めるためには、温泉事業者をはじめ地元の理解を得ることが欠かせない。政府は地域の支援組織として、地熱資源の開発を促進するJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の中に「地熱資源開発アドバイザリー委員会」を2016年6月7日に発足させた。

この委員会は大学や研究機関の専門家20人以上で構成する。全国の自治体から要請を受けて、地熱発電に関する技術的なアドバイスや情報を提供することが役割だ。貴重な地熱資源を有効に活用できるように自治体や発電事業者を支援していく。同様に資源エネルギー庁が中核になって、自治体間の情報共有ネットワークも構築する。国を挙げて地熱発電の取り組みを拡大する体制が整い始めた。

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依田一義のエネルギー情報107

再生可能エネルギーの中で最も安定した電力を供給できるのがバイオマスである。全国どこでも発電用の燃料を入手できるうえに、年間を通して発電量が変動しない。2012年度に固定価格買取制度(FIT:Feed-In Tariff)が始まったことで、バイオマス発電所の建設プロジェクトが各地に広がった。

今後さらに普及させるためには課題も多い。燃料が豊富にあるとはいえ、長期にわたって安定した量を確保できる体制を構築しないと、発電事業が立ち行かなくなるおそれがある。2017年度に改正するFIT法では発電設備の認定制度を強化して、バイオマス発電設備には燃料の調達先や調達量の申告が必要になった。

新しい認定制度では審査の段階で、使用する燃料の詳細な情報を提示しなくてはならない。ほかのバイオマス発電所でも同じルートで燃料を調達する場合には、両方の認定審査で調達状況を確認する。さらに認定を取得するにあたって燃料の利用計画を提出する必要があり、運転を開始した後も使用量の実績値を報告することが義務づけられる。

こうした厳格な需給管理を実施すれば、バイオマス発電に利用する燃料の調達状況を政府や自治体でも確認できる。と同時に貴重な資源の乱用を防いで、林業をはじめ既存の産業に悪影響を及ぼさないように国全体で調整することも可能になる。

すでに運転を開始したバイオマス発電所の中には、地域ぐるみで燃料の安定供給体制を構築する事例が増えてきた。代表的な例は茨城県の常陸太田市で2015年11月に稼働した「宮の郷木質バイオマス発電所」である。発電能力が5750kW(キロワット)の大規模な木質バイオマス発電所では地域の間伐材などを年間に6万3000トンも利用する。

これだけ大量の燃料を長期間にわたって確保するために、地元の林業事業者が共同で原木の供給体制を作り、発電事業者の日立造船と共同でチップの製造工場を発電所の隣接地に建設した。茨城県と常陸太田市も補助金を交付してチップ製造工場の建設・運営を支援している。

燃料調達の低コスト化に取り組む自治体も

安定した電力の供給源としてバイオマス発電を全国各地に拡大していくためには、地域単位で自立できる事業モデルの確立が重要になってくる。政府が目指す木質バイオマスの地域自立モデルは、木材の調達からチップの製造、さらに燃料のチップを利用する発電所や温泉・病院などの施設を含めて、地域内で資源と資金が効率よく循環する仕組みである。

木材の調達面では森林に発生する残材の収集システムを構築するほか、間伐の徹底や早生樹の活用による低コスト化を図る。チップの製造工場は発電所の構内に建設して輸送費を抑える一方、燃料を利用する施設にはリース方式による設備の導入を促進していく。

大分県で林業が盛んな日田市では、木質バイオマス発電用の燃料調達コストの低減に地域ぐるみで取り組んでいる。市内の山林を対象に林地残材の収集システムを整備して、生育期間の短い早生樹の利用可能性についても検討した。すでに日田市内では大規模な木質バイオマス発電所が2カ所で運転中だ。

木材の中には発電に利用しにくいものもある。建築物の廃材などは燃焼効率が低いために、発電用の燃料には適していない。地域で生まれるバイオマス資源を有効に活用するために、岡山県の倉敷市では発電に利用できない木材を使って、工場に蒸気を供給する事業を検討している。

政府は全国各地で実施中の先行事例を自治体間で共有できるようにする計画だ。林野庁を中心に燃料の供給コストを低減するための技術開発も推進していく。さらにバイオマス燃料やバイオマス発電設備に対する規制を緩和して導入事例の拡大につなげる。

地域のバイオマス資源は木質に限らず、下水の汚泥や家畜の排せつ物、ごみ処理場に大量に集まる廃棄物などがある。急速に広がる木質バイオマス発電に続いて、そのほかのバイオマス資源を活用した発電設備の増加も見込める。導入量の拡大に向けて、バイオマス資源の種類ごとに対応する施策が必要になってくる。

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依田一義のエネルギー情報106

東北電力は2016年6月23日、新潟県魚沼市に建設を進めていた水力発電所の「第二薮神発電所」が同日より営業運転を開始したと発表した。

第二薮神発電所は魚沼市にある「藪神ダム」の右岸に新設した、ダム式の小水力発電所である。藪神ダムは東北電力が所有する発電専用のダムで、既に左岸では最大出力8800kW(キロワット)「藪神発電所」が発電を行っている。こちらの発電所はダム水路式である。

新設した第二薮神発電所の大きな特徴が、藪神ダムと藪神発電所がこれまで「使い切れていなかった水」を利用して発電する点だ。年間300日以上もダムゲートから放水していた未利用の放流水を活用する。この放流水が発生していた理由は、上流にある電源開発の「黒又川第一発電所」の最大使用水量が藪神発電所より多かったためだ。

第二薮神発電所では有効落差17.85メートルと、未利用だった放流水を最大で毎秒30立方メートルを活用して発電する。最大出力は4500kWで、年間の発電量は1825万kWh(キロワット時)を見込んでいる。未利用エネルギーを活用することで、約5000世帯分の年間発電量を賄うことができる計算だ。

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依田一義のエネルギー情報105

九州電力が来年4月の都市ガス小売り全面自由化に合わせ、福岡都市圏と北九州地区の一般家庭向けにガス販売を始めることが21日分かった。既存のガス小売り部署も増員し、参入準備を本格的に進める。
九電が北九州市に保有する液化天然ガス(LNG)基地は、西部ガス(福岡市)のガス導管と直結している。導管使用料(託送料金)を支払った上で、西部ガスの供給網を利用して一般家庭にガスを届ける。
西部ガスは福岡、北九州両地区の約83万7千件(2015年3月現在)にガスを供給している。九電は、電気とガスのセット割引など西部ガスに比べて割安な料金プランを打ち出し、顧客獲得を図る。
西部ガスの導管網がある長崎県や熊本県のほか、他の都市ガス各社の供給圏で九電がガスを供給するには、LNG基地からタンクローリーで各地に輸送する必要がある。これらの地域での展開について、九電幹部は「費用など経済性を見極めて決める」としている。
九電は昨年7月、ガス小売り参入に向け社内に「ガス小売推進グループ」を設置し、8人体制で検討を進めてきた。今年8月には「ガス営業部」に昇格させ、13人体制に増強。さらに来年度をめどに20人体制とする方針。

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依田一義のエネルギー情報104

エリーパワーは2016年6月17日、竹中工務店とビルのBCP(事業継続計画)対策用電源設備の一部として共同開発した大型蓄電システムを、竹中工務店大阪本店が入居している「御堂ビル」(大阪市中央区)に納入したと発表した。

御堂ビルは竹中工務店が設計し、1965年に建設された。同ビルでは近年、南海トラフなどの巨大地震による津波の浸水を考慮し、地階電気室の一部機能を2階と屋上へ移管・新設してBCP対策を進めている。

今回の蓄電池の蓄電池システムの導入も、BCP対策を目的としたものである。エリーパワーは蓄電容量64kWh(キロワット時)、出力100kVA(キロボルトアンペア)のリチウムイオン電池を用いた蓄電池システムを導入した。通常時はピークシフトによる節電対策として利用し、停電時には各フロアの専用コンセントの電力源として使用する。

エリーパワーが開発する大型リチムイオン電池は、くぎ刺し(内部短絡)試験・圧壊試験・過充電試験でも発煙・発火しない耐久性と、約1万2000回繰り返し充放電を行っても電池容量保持率を80.1%以上に保てる長寿命性を特徴としている。今回御堂ビルへの導入においても、こうした性能が評価されたという。

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