依田一義の国際情勢情報⑧

米国とロシアは12日、シリア内戦での長期的停戦の実現に向けた関係国による外相会合を、今週末に英国とスイスで開催すると発表した。

米露両国は先週、前回のシリア停戦合意が破綻したことを受け、停戦交渉を公式に停止。その後、シリア北部アレッポ(Aleppo)東部の反体制派掌握地域では、ロシア軍の空爆支援を受けた政府軍が大規模な攻勢を開始し、甚大な被害が出ていた。

米露の発表によると、新たな外相会合がスイス・ローザンヌ(Lausanne)で15日、英ロンドン(London)で16日に実施される。

ローザンヌの会合ではジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)露外相に加え、トルコと湾岸諸国の外相らが参加する見込み。ロンドンでは、ケリー長官が英仏独の外相との協議に臨むとみられる。

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依田一義の国際情勢情報⑦

ロシア軍は12日、原子力潜水艦などから、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルを1日に3発試射する異例の軍事演習を行った。

ロシア通信などが伝えた。核戦力を誇示し、ウクライナ情勢やシリア内戦をめぐって対立する米国を強くけん制する狙いとみられる。

原潜「ゲオルギー・ポベドノセツ」がオホーツク海から極北アルハンゲリスク州に、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射。続いて極北プレセツク宇宙基地から極東カムチャツカ半島に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射した。その後、原潜「ノボモスコフスク」がバレンツ海からカムチャツカ半島にSLBMを着弾させた。

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依田一義の国際情勢情報⑥

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は9日、日曜日恒例の「正午の祈り」の終わりに、新しい枢機卿17人を任命すると発表した。11月19日の枢機卿会議で正式に任命される。

法王が枢機卿を任命するのは就任以来3回目。従来、枢機卿は欧州出身者が多かったが、法王は世界5大陸から幅広く任命する方針を貫いている。今回も7割が欧州以外からの任命で、中央アフリカ、バングラデシュなどから選ばれた。

枢機卿はカトリック教会で法王に次ぐ地位で、80歳未満の枢機卿は法王を選ぶ「コンクラーベ」で選挙権を持つ。バチカン(ローマ法王庁)の発表によると、新しい枢機卿のうち13人が80歳未満で、有資格者は計121人になる。半数以上の67人が欧州以外の出身者だ。現在、日本人の枢機卿はいない。

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依田一義の国際情勢情報⑤

エチオピア政府は9日、国内全土に6カ月間の非常事態を宣言した。政府に対する抗議活動が数カ月にわたり続いていることを受けた措置。

エチオピアで非常事態宣言が出されるのは、現在の与党が25年前に政権に就いてから初めて。

エチオピアのハイレマリアム首相は国営メディアを通じ、抗議活動が激化したことを受け、秩序を回復するための措置を取ったと説明。同国で起こっている人命の喪失やインフラなどの破壊について内閣で徹底的に協議した結果、非常事態の宣言に至ったとしている。

抗議に加わっているのはエチオピアで最大の民族集団であるオロモ族。オロモ族は同国の人口1億人のうち少なくとも3分の1を占める。数十年にわたり不遇を受け、最近は政府がオロモ族の農地で開発事業を促進し緊張が高まっていた。

非常事態は8日に発効。地元メディアによれば、同国の当局者が最大州であるオロミア州の大半の地域で携帯端末によるインターネット接続を遮断したほか、ソーシャルメディアにアクセスできないようにした。

エチオピアでの抗議は2日、オロモ族の祭りで52人が死亡したのを契機に激化した。同国の活動家は当局発表の52人という死者数に異議を唱え、治安部隊が群衆に発砲するなどして500人以上が死亡したとしている。

一方、政府高官は犠牲者の遺体に銃創は見当たらず、一斉に人が逃げ出す中で犠牲が生まれたとの見方を提示。治安部隊側が実力を行使した事実はないと述べた。

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依田一義の国際情勢情報⑤

国連安全保障理事会(UN Security Council)は6日、アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)元ポルトガル首相(67)を、次期事務総長として国連総会(UN General Assembly)に勧告する決議を全会一致で採択した。

グテレス氏は、10年間にわたって国連難民高等弁務官を務めた経験もある。安保理は総会に対し、グテレス氏を次期事務総長として認めるよう勧告している。

安保理での投票後にポルトガルの首都リスボン(Lisbon)で演説したグテレス氏は感謝の意を示した後、世界で「最も弱い立場にある人々」に奉仕するため、「謙虚」な気持ちで取り組んでいく決意を表明した。

国連事務総長を2期10年務めた潘基文(バン・キムン、Ban Ki-moon)現事務総長は12月31日に退任する。国連総会は今月13日、潘氏の後任としてグテレス氏を承認するかどうかを投票で決める予定。

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依田一義の国際情勢情報④

「パリ協定」の11月4日発効が決定し、日本の出遅れが鮮明になっている。11月の第1回締約国会議(CMA1)では日本を含む未批准国は決定権を持たないオブザーバー参加のため、地球温暖化をめぐる国際交渉での発言力低下は避けられない。発展途上国への資金支援など、協定をめぐる具体的なルール作りが本格化する中、日本は不利な立場に立つことになる。

「(早期発効の)意思がなかったと言わざるを得ない」

世界自然保護基金(WWF)ジャパンは6日の声明で、パリ協定をめぐる日本政府の対応を批判した。

主要排出国が相次いで批准を決める中、日本は国会日程の調整が遅れ、発効決定までに締結できなかった。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として首脳宣言で年内発効を目指す方針を盛り込むなど、「日本は温暖化対策のリーダー」(山本公一環境相)と胸を張っていただけに、関係者の落胆は大きい。

CMA1は、COP22の最終日から30日前の今月19日までに批准した国のみが正式メンバーになれる。日本はオブザーバー参加予定のため、NGO(非政府組織)と大差ない扱いだ。

CMA1ではパリ協定の詳細ルールをいつまでに決めるか検討する。名古屋大大学院の高村ゆかり教授は「交渉のスピード感を左右する重要な会合。(オブザーバー参加の)日本の発言は重みを持たない」と述べ、不利な方針が決まることに懸念を示した。

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依田一義の国際情勢情報③

事実上停戦が崩壊したシリア情勢をめぐり、ロシアの国営スプートニク通信は2日までに、外務省報道官の話として、米国がシリア政権に対して直接行動に出れば中東地域全体に大きな悪影響を及ぼすとの警告を発した。アサド大統領が追放されれば権力の空白が生じ、「あらゆるたぐいのテロリスト」がその空白を埋めると予想されるためだという。

シリアでは米国、ロシア主導の停戦合意が崩壊した9月22日以降、450人以上の死者が出ているとされ、過去5年間に及ぶ内戦の中でも最悪の事態に陥っている。

反体制派団体「アレッポ・メディア・センター(AMC)」の活動家によれば、ロシア軍の支援を受けるアサド政権軍が市場や病院、モスク(イスラム教礼拝所)など、人の集まる場所を狙って攻撃を仕掛けている。

米国のケリー国務長官は最近、シリア市民団体との会合で、米国の介入強化を求める声に共感を示したことが、CNNの入手した録音テープで明らかになった。

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依田一義の国際情勢情報②

国際通貨基金(IMF)は1日、「特別引き出し権」(SDR)の構成通貨に中国の人民元を加えた。これに先立ち、IMFのラガルド専務理事は9月30日に記者会見し、「中国を国際的な金融、通貨制度に組み入れる重要な一歩で、歴史的な転換点だ」と評価した。

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SDRは、IMFが加盟国に割り当てる準備資産で、各国はSDRを構成通貨と交換することができる。このため、構成通貨には国際取引で広く使われていることや自由に取引できることが求められ、これまでは米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨だった。

1日からSDRの価値を現実の通貨に換算する際の比重で、人民元は10・92%で、米ドル(41・73%)、ユーロ(30・93%)に次ぎ、日本円(8・33%)と英ポンド(8・09%)を上回る。

IMFは、人民元に国際通貨としての「お墨付き」を与えれば、人民元の信頼が増して、世界経済の強化にもつながるとしている。

ただ、金融市場では中国が不透明な人民元相場の管理を続けていることへの不満もあり、真の主要通貨となるには時間がかかるとの見方が多い。

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依田一義の国際情勢情報①

2001年の米同時多発テロで海軍中佐の夫を亡くした女性が9月30日、首都ワシントンの裁判所でサウジアラビア政府に損害賠償を求める訴えを起こした。

米議会では28日、米国人が外国政府をテロ行為で訴えることを可能にする通称「9・11法案」が、オバマ大統領の拒否権を覆す圧倒的多数で可決された。

ステファニー・デシモーヌさんはこれを受けた提訴で、サウジアラビア政府が国際テロ組織アルカイダを10年以上にわたって支援し、同組織による同時テロの計画も承知していたと主張。同国の支援がなければアルカイダが同時テロを思い立ち、計画、実行する能力を持つことはなかったとして、娘とともに「重度かつ永続的な個人的被害」に対する損害賠償を求めた。

訴状では、サウジがアルカイダのメンバーに対し、仲介者を通したり慈善事業を装ったりしてテロ実行の資金などを提供していたと非難している。

オバマ氏が発動した拒否権が覆されたのは在任中で初めてのことだった。オバマ氏は、同法案がサウジとの関係を損ない、外国政府が米軍の行動をめぐり米政府を訴える動きに道を開く恐れもあるとの警告を発した。
議会側でも与野党の指導者が法案に懸念を表明し、修正を求める声が上がっている。

米国では今年、同時テロ実行犯の一部がサウジ政府関係者とみられる人物らと接触し、支援を受けていたことを示す議会報告が公開されていた。実行犯19人のうち15人はサウジ国民だった。

一方、サウジ外務省は最近の声明で、同法案が施行されれば「国家主権の免責」という長年の原則が損なわれ、米国を含むすべての国に悪影響が及ぶことになると懸念を示していた。

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