依田一義の国際情勢情報42

激戦が続くシリアの都市アレッポで13日、反体制派が制圧する東部地域の住民の携帯電話に「爆撃に備えて24時間以内に退避せよ」と通告するメールが届いた。

メールは「戦略的に計画された精密誘導兵器による攻撃が24時間以内に発生する」として、病人やけが人に退避を呼びかける内容。反体制派に対しても、武器を捨てるよう呼びかける最後通告が行われた。

目撃者によると、アレッポ上空には戦闘機が飛行し、小規模の衝突も報告されている。

アレッポは政権側が制圧した地域に約150万人が居住。国連によると、反体制派が制圧する地域にはまだ25万~27万5000人が残って窮状に追い込まれている。7月には約20万人がアレッポを脱出していた。

シリア政府はロシア空軍の援護を受けて、アレッポ支配を固めてきた。その代償として、この数日で数百人が命を落としている。

シリアのアサド大統領は、アレッポを「浄化する」以外に選択肢はないと主張。「この地域の浄化を続け、テロリストを出身地のトルコに押し戻すか、殺害しなければならない」と述べ、アレッポは「ほかの地域をテロリストから解放するためのきっかけになる」と強調した。

株式会社Z-ONE

依田一義の国際情勢情報⑩

ロシア軍参謀本部は17日、シリア北部の激戦地アレッポに対するロシア空軍とシリア政府軍の攻撃を現地時間の20日午前8時~午後4時の8時間に限って一時停止すると発表した。ロシア通信が伝えた。ルツコイ作戦総司令部長は「市民や傷病者を避難させるための人道措置」と記者会見で説明した。

◇人道配慮アピール

ロイター通信によると、国連のドゥジャリク事務総長報道官は歓迎したが、米国務省のトナー副報道官は「(攻撃停止は)短すぎるし、遅すぎる」と批判した。

シリア内戦では、米露主導で9月中旬に発効した一時停戦が約1週間で崩壊。今月15日にスイスで開かれた米露やシリア周辺諸国の外相らの会合でも打開策は見いだせず、人道状況が悪化している。

今回の攻撃停止について、ルツコイ氏は「時間を無駄にしないために決定した」と述べ、アレッポを拠点とする反体制派武装勢力に対しても「20日は朝から何の障害もなく脱出できる」と戦線離脱を呼びかけた。

シリアのアサド大統領はアレッポ奪還方針を明示しており、20日の攻撃停止で人道への配慮をアピールした後、反体制派支配地域への攻勢を強める可能性もある。

株式会社Z-ONE