依田一義の不動産情報124

不動産投資に関心のある投資家やオーナーにとって、空室率の上昇や賃料の下落、物件の利回り低下は気になるものです。不動産市況が変わるなかで、賃貸管理の煩わしさを避けるため家賃保証のサブリースを選択することも可能です。サブリースを選択したオーナーは、中長期で経営戦略の見直しを迫られることもあるでしょう。ここでは、家賃保証の仕組みをおさらいします。

■「安心の一括借り上げ」などのうたい文句だが

サブリース契約とは、賃貸事業者がオーナーから建物あるいは部屋を転貸するために借り受けて、これを第三者に転貸することをいいます。ハウスメーカーやワンルームマンション販売会社などが受注を増加させる目的で、政策的に導入されました。このサブリースには、オーナーのメリットとして次の2点が挙げられます。

1. 空室にかかわらず、家賃が入る(空室リスクが少ない)
2. 苦情・トラブル対応が不要でオーナーは当事者にならない

一般的に「安心の一括借り上げ」「空室保証」「一括管理で手間要らず」などのうたい文句で宣伝している契約は、1棟貸しで定額のサブリース賃料が定められているタイプです。

賃料の定め方は、借上賃料を一定の額に定めるものや(これを保証賃料と呼ぶこともあります)、転貸賃料合計の何%と割合を定めるものもあります。今回は、サブリース=家賃保証としてみていきましょう。

■賃料減額などの事態も想定している

オーナーがサブリース業者から受け取る賃料は、直接第三者に賃貸した場合よりも当然、低くなります。例えば家賃保証を通常設定家賃の85%にした場合、この差額がサブリース業者の利益になるわけです。それでも、オーナーにとっては空室などのリスクを避けられ、管理の煩わしさから解消されるならば、メリットだと受け止められています。

しかし、契約後にサブリース賃料が減額されてしまったり、サブリース業者が倒産してしまったりして、計画どおりに進まないこともあります。この場合、オーナーが建物建築や購入のために多額の借り入れをしているケースでは、深刻なトラブルに見舞われることとなります。

■サブリース検討の3つのポイント

専門家によると、サブリースを検討する場合、以下のポイントをチェックすべきだと指摘しています。

1. 期間(契約、免責)
2. 費用(契約賃料、原状回復・修復にかかる費用)
3. 契約更新

契約期間、賃料で注意したいのは、2年毎に家賃交渉があり、「周りの家賃相場が下がっている」などの理由で賃料が減額される可能性があることです。さらに契約更新についても、一般的にサブリース会社側が拒否できる仕組みになっています。このため、賃料減額を拒否したら契約を打ち切られたという相談も、国民生活センターなどに寄せられています。

さらに、契約から60日間などの免責期間がある場合、その期間の家賃は受け取ることができないこと、契約はあくまで家賃のみの保証で修繕費、水道、電気、共用部の清掃、管球などの費用は別途請求されるということにも注意が必要です。また、原状回復などは会社側の指定業者でなければならず、工事費が相場より高くなる場合もあります。

敷金、礼金、更新料などは、オーナーが受け取れないことも承知しておいた方がいいでしょう。

■デメリットを確認し契約チェックを

通常の不動産取引の際には、こうした重要事項説明が義務付けられているはずなのに、デメリットが説明されないまま契約が成立してしまうケースもあります。

これは、サブリース契約を結ぶオーナーが消費者ではなく事業者であるとされているので、消費者保護が十分に適用されていないためとみられています。

サブリース契約は、すべて「お任せ」で経営の負担が減りますが、逆にいえば賃貸経営のノウハウから切り離されることにもなりますので、よく考えて利用したいところです。オーナー側が過度に期待することで思わぬ事態を招くこともあり、契約の際にはチェックポイントなどを詳細に検討すべきでしょう。


 

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