依田一義の不動産情報14

マイナス金利で「賃貸マンションを建てる」は正解なのか?
連日、新聞やテレビで大きく報道される「マイナス金利」。連動して一部メガバンクを先頭に、住宅ローン利率を大幅に下げる動きが注目を浴びている。現在所有地を有し、将来的に賃貸住宅の建築を考えているオーナーにしても「好機」といえるだろう。アパートローンは住宅ローンに連動するケースが多いためだ。
この流れを受け、筆者にもマイナス金利を受けて孫のために賃貸マンションを建てるべきかと相談を受けることが増えている。ここでは、かわいい孫のために賃貸マンションを建てるべきかどうかについて見ていきたい。

■マイナス金利と住宅ローンは違うもの?

日本銀行(日銀)の「マイナス金利政策」導入を受け、金融市場をはじめ影響が広がっている。雑誌やWEB記事でも、「マイナス金利で史上空前の住宅ローン低金利時代へ」との特集をよく目にするようになった。正直なところ、筆者にも数多くの原稿依頼が届いている。
ただ気になることは、マイナス金利が適用されたのは住宅ローンではない。この2種類の金利はどのような関係があるのだろうか、ということだ。まずはそれを理解したい。住宅ローンには金利が2種類ある。「変動金利」と「固定金利」だ。変動金利は民間の銀行ローン、固定金利は住宅金融支援機構のフラット35という定義が有名だろう。実際には例外もあるが、本旨ではないため割愛する。
さて、ニュースに流れている「マイナス金利」は何を指すのか。マイナス金利とは、民間銀行が日本銀行にお金を預ける際に、金利ならぬ「手数料」を取ることを意味するものだ。民間銀行は日銀にお金を預ける際、利息の代わりに手数料を渡さなければならない。これにより民間銀行は、「日本銀行に預けているくらいなら、(民間企業に)融資をしたり、自社で運用をしたりする方がいい」という判断となる。このため市場にお金を流すことが日本銀行(政府)の狙いだ。
つまりマイナス金利と住宅ローン金利(変動金利、固定金利)は別物。今回も「マイナス金利が住宅ローン金利に影響を与えるには、しばらく時間がかかる」と、専門家のあいだでも意見多数だったのが、メガバンクによる住宅ローン金利下げが始まった。住宅ローンの影に隠れがちだが、アパートローンの金利減少を受け、将来的に賃貸住宅な賃貸住宅を検討していた土地所有者から、「建てようか迷っている」という相談を受けることが多い。なかには、子どもや孫世代を含めた資産活用として考えているケースもある。

■マイナス金利で孫のために賃貸マンションを建てるべきか

賃貸住宅は、建築構造によって、孫世代にもわたって資産活用の方法として効果的なものだ。たとえば鉄筋コンクリート造(RC造)建物の寿命を示す減価償却費計算上の「耐用年数」は47年と、木造の22年、鉄骨造(S造)の34年をはるかに超える期間、法人税の課税対象額を抑えることができる。ただ、ここでよく抜け落ちている視点が、「借入金そのもののリスク」だ。
多くの賃貸オーナーは(賃貸住宅の)建築費に自己資金だけでは足りず、銀行などの金融機関からアパートローンを借りる。このローンの金利が史上最低基準として話題になっているのだが、そもそもこの資金は「借入金」である。万が一想定通りの家賃収入が入らなければ、毎月発生するアパートローンの返済額を確保することが難しくなり、賃貸オーナーの自己資金から補てんする、いわゆる「持ち出し」が発生することになる。
ましてや、このアパートローンを30年、40年といった長期期間で借り入れた場合、その債務は借入を決めた当該世代のみならず、子世代、孫世代に債務が移っていくことになる。
2月26日に発表された「2015年国勢調査の人口速報値」によれば2015年10月1日時点で、5年前に比べて94万7305人(0.7%)減少したとのことだ。日本の人口減少は、1920年の調査開始以来、初のことで、いよいよ人口減少社会がはじまった。日本に在住する外国の方も含むため、賃貸住宅のニーズをはかる上で信憑性の高いデータといえるだろう。
そのなかで賃貸住宅の経営を行っていくのは、現在以上に難易度が高いことは間違いない。「マイナス金利」という情報のみで30年、40年の長期借り入れを決めるのではなく、(所有地のある)場所ははたして賃貸物件の建設に向いているのか、子世代・孫世代はいずれ引き継ぐ賃貸経営に前向きかを確認しておくことが大切だろう。まさに、「長期的視野」にもとづいて、賃貸経営をスタートさせる、優先順位を忘れないようにしたい。
確かに、金利の違いは借入金の総返済額を考えたとき、借入元本額によっては数百万円前後の大幅な差が生じる。この差は、賃貸経営のタイミングにおいてとても重要だ。だからこそ、長期的な視野をもって、次世代を含めた「家族」として判断するようにしたいものだ。

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依田一義の不動産情報13

日銀が導入した「マイナス金利政策」の影響で、銀行の住宅ローン金利の引き下げ競争が一段と活発化している。目安となる10年固定型金利は1%割れが主流となっている。
ただ、「申し込みの大半は借り換え需要」といい、景気底上げにどれだけ効き目があるかは未知数だ。
三井住友信託銀行は1日から、10年固定型の最優遇金利を同行として過去最低の年0.5%に引き下げた。大手5行の店頭金利では最も低い水準だ。
0.7%を適用していた2月には、借り換えの相談件数は1月から約4倍に急増した。
三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行の3メガ銀行も今月から、10年固定型の最優遇金利を年0.8%に引き下げた。
三菱UFJでは、住宅ローンの申込件数が2月は前月から倍増し、「支店が週末に実施している相談会は予約が取りにくくなっている」ほど関心が集まっているという。
三井住友銀行の2月の申込件数は新規が前月比約1.5倍、借り換えが約3.8倍に増えた。みずほ銀行も2月の借り換えの問い合わせ件数が前月から2倍に増えた。
また、りそな銀行は借り換えの申込件数が6.3倍に増加。特に、「2月に始めた0.5%の金利を適用するインターネット専用プランが好評」(同行)という。
住宅ローン金利の引き下げ競争は、地方銀行にも広がっている。このうち横浜銀行では、電話の相談受付件数が2月は1月の約2倍に伸びた。
国土交通省によると、1月の新設住宅着工戸数は前年同月比0.2%増の6万7815戸となり、2カ月ぶりに増えた。
今後、住宅ローン低下の恩恵が、実際にどれだけ出てくるのか注目される。
ただ、「既に金利の低い状況が長く続いていて、全体の借り換え需要自体が減少傾向にある」(大手行関係者)との指摘も出ている。

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依田一義の住宅ローン控除をお得に活用する3つのケース

日銀がマイナス金利導入を発表してから約1ヶ月が経つ。マイナス金利の導入により、私たちの生活にも様々な影響が出ることが予想されている。そんな中、特に注目されているのが、住宅ローンだ。
すでに実務的なマイナス金利は始まっており、住宅ローンの金利には早速プラスの影響が出始めている。これまで住宅購入に踏み切れなかった層にも需要が広まり、しばらくは住宅ローンの申し込みが殺到しそうだ。今回のマイナス金利を機に、住宅購入や住宅ローンを組むことについて現実的に考え始めたという方も多いのではないだろうか。
さて、住宅ローンをすでに組んでいる人、これから申し込みを予定している人、どちらにも重要なのが「住宅ローン控除」という仕組みだ。手続きをするかしないかによって、長い目で見れば数百万円単位のお金の差を生むことにもなるため、正しい知識をつけて、うまく活用していきたい。今回は、住宅ローン控除をお得に活用する3つのケースをご紹介する。

■住宅ローン控除とは?

まずは、住宅ローン控除の基本を押さえておこう。住宅ローン控除とは、住宅を一定の条件の元、住宅ローンを組んで購入した場合、年末のローン残高に応じて所得税・住民税の控除が受けられる制度のこと。現行制度では、控除期間は10年、控除率は1%である。この制度を受けるためには、控除を受ける年の合計所得が3000万円以下であることや、返済期間が10年以上の住宅ローンを組んでいることなどいくつかの要件があるが、該当する人は必ず手続きをしよう。
住宅ローン控除を受けるためには、入居の翌年に確定申告を行う必要がある。確定申告は、お住まいの地域を管轄する税務署から書類を入手し、その他必要書類とともに提出しよう。会社員の場合は、次の年からは年末調整の対象となる。
住宅ローンの控除額は、「年末のローン残高×控除率(1%)」で計算できる。仮にローン残高が3,000万円である場合、控除額は30万円ということになる。ただ、30万円が一度に戻ってくるわけではない。支払った所得税、住民税の合計が30万円以下の場合、まず納めた所得税分の金額が戻ってくる。そして、残りは翌年の住民税から引かれるという仕組みだ。
また、会社員の場合は給料から天引きされている税金が減額されるため、お金が戻ったという実感は薄いかもしれない。とは言え、賢く活用すれば大きな得になる住宅ローン控除。特に知っておきたい3つのケースを次にご紹介しよう。

■住宅ローン控除を活用したい3つのケース

住宅ローン控除を積極的に活用したいケースは主に3つある。一つ目としては、「頭金を入れず借入額を増やし、住宅ローン控除を受けたほうがお得になる」というケース。この場合、
(1)住宅ローン控除額以上に税金を納めている
(2)保険料等のローン関連費用を含めてもお得になる
という条件が必要だ。これら二つの条件をクリアしていないと、必ずしも借り入れ金額を多くしたからといって得をするとは限らないため、注意しておきたい。(1)に関して、まずは住宅ローン控除が受けられる借り入れ限度額を確認してみよう。全額が控除される借入限度額は、「(所得税+住民税)×100」で計算できる(住民税の上限は13万6500円)。また、(2)のローン関連費用については金融機関ごとに異なるため、必ずシミュレーションしてもらおう。
一方、住宅ローン控除は10年間という期限付きの制度であるため、それ以降は支払い金額が増えることも考えなければいけない。変動金利の場合は、金利が上昇して1%を上回ることもある。そうなった時のため、本来支払うはずだった頭金を予め用意しておき、繰り上げ返済する準備も必ずしておこう。
二つ目のケースは、夫婦共働きの家庭だ。夫(または妻)のどちらか一方が住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン控除の限度額と夫(または妻)が負担している税額を比較し、税額のほうが少ない場合は、もう一方(妻または夫)もローンを組むことによりお得になることがある。
一人の税額からは控除しきれない分を、もう一人の負担する税額から控除できるからだ。ただし、このケースでも、住宅ローンを組むことによる諸経費を考慮する必要がある。また、夫婦合わせての収入によっても、メリットがあるかどうかは変わるため、慎重に判断していこう。
三つ目は、すでに持ち家に住んでいる人が節税できるケース。住宅ローン控除は、一定の要件に当てはまるリフォームの際にも適応される。リフォーム費用が100万円以上であり、10年以上のローンであることなどが主な条件となるため、リフォームをお考えの方はまとめて行うことをおすすめする。

■余裕ある返済計画を忘れないように

以上が、住宅ローン控除を積極的に活用したい3つのケースである。マイナス金利の影響で住宅ローンの需要が急激に高まっているが、住宅ローンの返済は長期に渡ることを忘れてはならない。急ぎ足で決めてしまうのではなく、複数の金融機関で比較し、様々なリスクを考慮して余裕ある返済計画を立てていこう。その上で、住宅ローン控除を活用し、賢く節税をしていただきたい

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マイナス金利、業界に〝追い風〟吹くか 日銀・金融緩和策 ローン金利、更に低水準へ

日本銀行が発表した「マイナス金利」の追加金融緩和策が、不動産業界に〝追い風〟をもたらすか注目されている。

業界が「有力な融資先」として金融機関に選別されることが予想され、また、住宅ローン金利の引き下げも想定されるからだ。

今回のマイナス金利は、需要側(一般消費者)、供給側(事業者)双方への好材料となりそうな気配だが、今後の動向などについて専門家らに話を聞いた。

129日の日銀によるマイナス金利導入発表後、その日のうちに不動産関連株は値上がりを見せ、東証リート指数は21日以降、1800ポイント台の水準となっている。

不動産業界への好気配を市場が即座にキャッチした格好だ。

その後、株価は全体的に乱高下を繰り返している状況だが、今回の「マイナス金利」が不動産業界へ好影響を及ぼすのではないかと指摘されている要因は、

業界特有の「レバレッジ効果」だ。特にディベロップメント事業においては、資金の借り入れによりその効果が何倍にも引き上がる効果があるため、

金融機関にとっては有力な融資先となり、業界にとっても低金利の資金調達によりこれまで以上のレバレッジ効果が期待できることとなる。

その好循環で更に業界へと資金が流れることになり、これはJリートの世界でも同様だ。

 

専門家の見方は冷静

 

ただ、専門家は比較的冷静な見方をしている。マクロ経済が専門の富士通総研・米山秀隆上席主任研究員は、

「有望な新規開発案件が残っていれば融資先としての可能性はある。ただ、オリンピックまでの開発案件の多くは既に仕入れが終わっている状況だ。

資材や用地取得価格が高止まりの中、新プロジェクトを考える事業者、そして金融機関にとって魅力的な開発と映る事案が出てくるかどうかは不透明」と話す。

ただ、融資先を模索する金融機関にとっては、不動産業界は一つの大きな選択肢であることに変わりはなく、更に住宅ローン金利が引き下げ方向に向かうことは

「一般消費者の住宅取得能力が上がることになる」(米山氏)ため、業界にとっては好材料となる。マンション動向に詳しい不動産経済研究所の松田忠司企画調査部主任研究員は、

「マンション業界に資金が流れれば用地取得も積極化し、近年敬遠され気味だった郊外エリアでの供給が増える可能性もある」と指摘する。

そして、「消費増税を前にしたこのタイミングで、住宅ローン金利が下がる傾向になることは一般消費者の大きなメリットになる」としている。

今回のマイナス金利政策は、一般消費者にとっては「住宅ローン金利の引き下げ期待」といった形で表れる。

金融機関が住宅ローン金利を決める際の一つの大きな指標となる「10年国債利回り」が低下するためだ。

129日には金融機関などによる国債購入の買い優勢の影響で価格が上昇し、金利は0.095%となり史上初の0.1%台を割り込む結果となった。

住宅ローンの金利はこれまでも「史上空前の低金利」とされてきたが、国債利回りがこれまで以上に低水準となることから、住宅ローンは更なる低金利のステージへと入ることが予想される。

 

10年固定は1.05%

 

 21日の住宅金融支援機構の発表では、長期固定型住宅ローン「フラット35」の2月適用金利(融資率9割以下)を前月比0.06%下回る1.48%とした。

また、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行は、主力の10年固定型住宅ローンの金利(最低水準)1.05%とした。

みずほ銀行を除く3行が1月と比べて0.05ポイント引き下げたが、日銀の今回の発表が129()の月末午後だったことを考えると、

2月の各金融機関の住宅ローン金利にはまだまだ反映されていないことが予想される。3月以降は更なる引き下げも期待されるところだ。

 

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