依田一義の国際情勢情報37

国家安全保障局の谷内正太郎局長が8~10日の日程でロシアを訪れ、同国政府高官と北方領土問題など政治・安全保障分野に関する協議を行うことが固まった。

12月15日に行う安倍晋三首相とプーチン大統領の会談に向け、詰めの調整を行う。日本政府関係者が明らかにした。

谷内氏は首相の外交ブレーン。訪ロ時には大統領最側近の1人であるパトルシェフ安全保障会議書記らと会談する方向で、日ロ安保協力のほか、北朝鮮やシリアの情勢などについても意見を交わすとみられる。

首相とプーチン大統領は、11月20日にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に会談。12月15日には首相の地元、山口県長門市で再び会い、領土問題や両国間の協力強化について話し合う。

日ロ間では経済・民生分野の協力に関してもハイレベル協議が続く予定で、首脳会談前の調整がヤマ場を迎える。ロシア経済分野協力担当相を兼ねる世耕弘成経済産業相が2日からモスクワを訪問。15日には東京で閣僚級の「貿易経済政府間委員会」が開催される。岸田文雄外相も12月の首脳会談前の訪ロを予定している。

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依田一義の国際情勢情報17

ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国首脳が19日、ドイツの首都ベルリンで会談し、ウクライナ東部で2014年以降続いている紛争問題について協議した。4首脳は、昨年2月の停戦合意(ミンスク合意)を実現させるための「ロードマップ」(行程表)を11月までに作成することで合意した。

ただ、ウクライナとロシアの対立は根深く、ロードマップの合意は困難を極めそうだ。両国首脳は個別に記者会見し、プーチン露大統領は「ミンスク合意実施を再確認した。ウクライナ東部に特別な地位(自治権)を認めなければならない」と語った。ウクライナのポロシェンコ大統領は「東部での選挙は、すべての外国軍(ロシア軍)が撤収した後に実施できる」と、改めてロシアを批判した。

4首脳による会談は昨年10月以来。ロードマップの作成は、ホスト役を務めたメルケル独首相が会談後、オランド仏大統領との共同記者会見で明らかにした。ロシア通信などによると、ロードマップは4カ国の外相が作成し、最終的には首脳が署名する計画。全欧安保協力機構(OSCE)の停戦監視団を武装させ、監視体制を強化することも合意した。

ミンスク合意は4首脳が合意し、(1)重火器の引き離し(2)東部の親露派支配地域に大幅な自治権を付与するための憲法改正と地方選挙の実施--などの内容。だが、親露派と政府軍の戦闘が散発的に現在も続いており、これまでに約1万人の住民らが死亡している。

パリで行われた前回の4首脳会談でも、ミンスク合意の実現を確認したが、その後、目立った進展はなかった。ウクライナ政府は、ロシアが軍事的に親露派を支援していることが紛争継続の原因と指摘。ロシアは、ウクライナが憲法改正や選挙実施のための法整備をしていないと主張し、非難合戦が続いていた

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依田一義の国際情勢情報⑧

米国とロシアは12日、シリア内戦での長期的停戦の実現に向けた関係国による外相会合を、今週末に英国とスイスで開催すると発表した。

米露両国は先週、前回のシリア停戦合意が破綻したことを受け、停戦交渉を公式に停止。その後、シリア北部アレッポ(Aleppo)東部の反体制派掌握地域では、ロシア軍の空爆支援を受けた政府軍が大規模な攻勢を開始し、甚大な被害が出ていた。

米露の発表によると、新たな外相会合がスイス・ローザンヌ(Lausanne)で15日、英ロンドン(London)で16日に実施される。

ローザンヌの会合ではジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)露外相に加え、トルコと湾岸諸国の外相らが参加する見込み。ロンドンでは、ケリー長官が英仏独の外相との協議に臨むとみられる。

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依田一義のエネルギー情報154

サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、ロシアから原油減産の取り組みを支持する姿勢を得てイスタンブールを後にした。しかし、石油輸出国機構(OPEC)内部では、世界的な合意に向けた最後の障害となっている各国への減産枠の配分について意見が分かれている。
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ロシアのプーチン大統領が10日、供給に関する合意についてOPECを支持する姿勢を示したことを受け、ロシアの2大石油生産会社は11日、原油減産に関して政府の指示に従う方針を明らかにした。これにより、世界の原油生産の半分を占める産油国が参加する合意の成否は、今月中に開催される予定のOPEC委員会に委ねられた。同委員会はベネズエラとイラクとの産油量に関する議論を解決する必要がある。
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PVMオイル・アソシエーツ(ロンドン)のアナリスト、タマス・バーガ氏は電話インタビューで「OPECとOPEC非加盟国が何らかの協力にこぎ着ける可能性はこれまで以上に高まっている」と指摘した上で、「たとえ合意に達しても、実際に生産統計を目にする合意後の3カ月が非常に重要だ」と述べた。
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OPEC内部の対立はこれまでのところ、OPEC月報に掲載される報道機関や調査機関などの生産推計が焦点。こうした推計は一般的に「二次情報」として知られる。アルジェでの合意が履行される場合に各国の生産枠の決定に利用される可能性があり、ベネズエラとイラクは推計について低過ぎると主張している。

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依田一義の国際情勢情報③

事実上停戦が崩壊したシリア情勢をめぐり、ロシアの国営スプートニク通信は2日までに、外務省報道官の話として、米国がシリア政権に対して直接行動に出れば中東地域全体に大きな悪影響を及ぼすとの警告を発した。アサド大統領が追放されれば権力の空白が生じ、「あらゆるたぐいのテロリスト」がその空白を埋めると予想されるためだという。

シリアでは米国、ロシア主導の停戦合意が崩壊した9月22日以降、450人以上の死者が出ているとされ、過去5年間に及ぶ内戦の中でも最悪の事態に陥っている。

反体制派団体「アレッポ・メディア・センター(AMC)」の活動家によれば、ロシア軍の支援を受けるアサド政権軍が市場や病院、モスク(イスラム教礼拝所)など、人の集まる場所を狙って攻撃を仕掛けている。

米国のケリー国務長官は最近、シリア市民団体との会合で、米国の介入強化を求める声に共感を示したことが、CNNの入手した録音テープで明らかになった。

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