依田一義の不動産情報189

不動産の売買契約や賃借契約をする際、不動産会社に支払う仲介手数料。「契約の相手を見つけてきました」という成功報酬だ。家を買う場合は取引額の3%、借りる場合は家賃の1ヶ月分というパターンが多いだろう。しかしこの金額は法律や業界内ルールで決められているわけではない。法律で定められているのはあくまで金額の「上限」なのだ。だが多く不動産業者は顧客にこれを説明することなく、上限金額をそのまま請求しているのが現状だ。

仲介手数料について定めているのは宅建業法の第46条。ここでは売買の場合、取引額が400万円(税抜)超える物件は物件総額の3.24%(=3%+消費税)以内の額が売主と買主それぞれから受領できる仲介手数料の上限だと規定されている。また、賃貸借の場合は借賃(税抜)の1ヶ月分の1.08倍(=1倍+消費税)が貸主と借主双方から得られる報酬額の合計金額の上限と規定されている。

ここでのポイントは、売買の場合不動産会社は双方から仲介手数料を受け取ることができるが、賃貸の場合は「貸主と借主の合計額」だということだ。賃貸の依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、依頼者の承諾を得ている場合を除き賃料の1ヶ月分の0.54倍ということになる。本来は貸主と借主が家賃1ヵ月分を折半して消費税をプラスした金額を仲介手数料として支払うことになっているのだ。しかしこれはあくまで「依頼者の承諾を得ている場合を除き」だ。

「私は1人で1ヶ月分不動産屋に払った気がする」。そう思った人は賃貸契約のときに不動産会社が示す書類をよく見てみよう。おそらく重要事項説明書に「契約成立時には媒介報酬額○○円(家賃1ヶ月分の金額)を支払うことを承諾しました」という一文が入っているはずだ。この一文が入った書類にサインすることにより依頼者は「承諾した」ということになるのだ。

(株)不動産流通システムが都内の持ち家に住む人に対して行った調査では、全体の7割の人が「不動産売買の仲介手数料の上限が、法律で定められていることを知らない」と回答している。家を買った経験がある人ですらこの結果なのだから、これから不動産を契約しようとする人たちの認知度はさらに低いだろう。是非参考にしてもらいたい。

株式会社Z-ONE