依田一義の住宅ローン控除をお得に活用する3つのケース

日銀がマイナス金利導入を発表してから約1ヶ月が経つ。マイナス金利の導入により、私たちの生活にも様々な影響が出ることが予想されている。そんな中、特に注目されているのが、住宅ローンだ。
すでに実務的なマイナス金利は始まっており、住宅ローンの金利には早速プラスの影響が出始めている。これまで住宅購入に踏み切れなかった層にも需要が広まり、しばらくは住宅ローンの申し込みが殺到しそうだ。今回のマイナス金利を機に、住宅購入や住宅ローンを組むことについて現実的に考え始めたという方も多いのではないだろうか。
さて、住宅ローンをすでに組んでいる人、これから申し込みを予定している人、どちらにも重要なのが「住宅ローン控除」という仕組みだ。手続きをするかしないかによって、長い目で見れば数百万円単位のお金の差を生むことにもなるため、正しい知識をつけて、うまく活用していきたい。今回は、住宅ローン控除をお得に活用する3つのケースをご紹介する。

■住宅ローン控除とは?

まずは、住宅ローン控除の基本を押さえておこう。住宅ローン控除とは、住宅を一定の条件の元、住宅ローンを組んで購入した場合、年末のローン残高に応じて所得税・住民税の控除が受けられる制度のこと。現行制度では、控除期間は10年、控除率は1%である。この制度を受けるためには、控除を受ける年の合計所得が3000万円以下であることや、返済期間が10年以上の住宅ローンを組んでいることなどいくつかの要件があるが、該当する人は必ず手続きをしよう。
住宅ローン控除を受けるためには、入居の翌年に確定申告を行う必要がある。確定申告は、お住まいの地域を管轄する税務署から書類を入手し、その他必要書類とともに提出しよう。会社員の場合は、次の年からは年末調整の対象となる。
住宅ローンの控除額は、「年末のローン残高×控除率(1%)」で計算できる。仮にローン残高が3,000万円である場合、控除額は30万円ということになる。ただ、30万円が一度に戻ってくるわけではない。支払った所得税、住民税の合計が30万円以下の場合、まず納めた所得税分の金額が戻ってくる。そして、残りは翌年の住民税から引かれるという仕組みだ。
また、会社員の場合は給料から天引きされている税金が減額されるため、お金が戻ったという実感は薄いかもしれない。とは言え、賢く活用すれば大きな得になる住宅ローン控除。特に知っておきたい3つのケースを次にご紹介しよう。

■住宅ローン控除を活用したい3つのケース

住宅ローン控除を積極的に活用したいケースは主に3つある。一つ目としては、「頭金を入れず借入額を増やし、住宅ローン控除を受けたほうがお得になる」というケース。この場合、
(1)住宅ローン控除額以上に税金を納めている
(2)保険料等のローン関連費用を含めてもお得になる
という条件が必要だ。これら二つの条件をクリアしていないと、必ずしも借り入れ金額を多くしたからといって得をするとは限らないため、注意しておきたい。(1)に関して、まずは住宅ローン控除が受けられる借り入れ限度額を確認してみよう。全額が控除される借入限度額は、「(所得税+住民税)×100」で計算できる(住民税の上限は13万6500円)。また、(2)のローン関連費用については金融機関ごとに異なるため、必ずシミュレーションしてもらおう。
一方、住宅ローン控除は10年間という期限付きの制度であるため、それ以降は支払い金額が増えることも考えなければいけない。変動金利の場合は、金利が上昇して1%を上回ることもある。そうなった時のため、本来支払うはずだった頭金を予め用意しておき、繰り上げ返済する準備も必ずしておこう。
二つ目のケースは、夫婦共働きの家庭だ。夫(または妻)のどちらか一方が住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン控除の限度額と夫(または妻)が負担している税額を比較し、税額のほうが少ない場合は、もう一方(妻または夫)もローンを組むことによりお得になることがある。
一人の税額からは控除しきれない分を、もう一人の負担する税額から控除できるからだ。ただし、このケースでも、住宅ローンを組むことによる諸経費を考慮する必要がある。また、夫婦合わせての収入によっても、メリットがあるかどうかは変わるため、慎重に判断していこう。
三つ目は、すでに持ち家に住んでいる人が節税できるケース。住宅ローン控除は、一定の要件に当てはまるリフォームの際にも適応される。リフォーム費用が100万円以上であり、10年以上のローンであることなどが主な条件となるため、リフォームをお考えの方はまとめて行うことをおすすめする。

■余裕ある返済計画を忘れないように

以上が、住宅ローン控除を積極的に活用したい3つのケースである。マイナス金利の影響で住宅ローンの需要が急激に高まっているが、住宅ローンの返済は長期に渡ることを忘れてはならない。急ぎ足で決めてしまうのではなく、複数の金融機関で比較し、様々なリスクを考慮して余裕ある返済計画を立てていこう。その上で、住宅ローン控除を活用し、賢く節税をしていただきたい

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依田一義の住宅ローン返済のタイミングはいつがいい?

住宅ローンを借入れる際に、返済期間で迷われる方は多いのではないだろうか。返済期間を長くすると毎月の返済額を減らせるメリットがある一方で、返済期間全体を通してみれば、借入れの期間が長い分利息がかさみ、総返済額が大きくなるデメリットもある。
低金利の昨今、住宅ローン金利の利率だけに目がいきがちだが、同じ金額を同じ金利で借りた場合でも、返済期間の長さによっては総返済額に大きな差が出てくる。そこで、住宅ローンを借入れする際に抑えておきたい返済計画の考え方と繰り上げ返済について解説していく。

■住宅ローンの返済計画はどう考える

住宅ローンは、無理なく返済できる金額かどうかを考え計画を立てた上で借入れする必要がある。
物件を検討する際に、不動産業者が住宅ローンの返済シミュレーションを提示してくれることは多いが、完済までの長期間を低金利のままでシミュレーションしているケースをよく見かける。目先の返済額だけをチェックし、無理なく返済できる金額だと判断するのではなく、ライフプランを考えながら自分自身でも返済シミュレーションをおこない返済計画を立てていただきたい。
住宅ローンの返済シミュレーションは金融機関の窓口でできるのはもちろんのこと、各金融機関のホームページなどにある住宅ローンのシミュレーションサービスを利用すれば簡単に計算できる。「借入金額」「借入期間」「金利」などを入力すれば簡単に毎月の返済額、総返済額がわかるので、教育資金や老後資金の準備なども考慮し無理なく返済できる金額なのかを計算してほしい。
理想を言えば退職までに完済できるプランにしたい。しかし、退職までの期間に設定した場合、毎月の負担額が高くなる。そういった場合、はじめは長めに借りておき、繰り上げ返済を上手く活用することで返済期間を短縮する方法もある。では次に繰り上げ返済の種類、繰り上げ返済の効果、繰り上げ返済するタイミングについて解説していきたい。

■繰り上げ返済の種類

繰り上げ返済とは毎月やボーナス時の通常のローン返済とは別にまとまった資金を入れて、返済をすることである。繰り上げ返済したお金は元金に充てられ、本来かかるはずだった利息が不要になる。つまり繰り上げ返済をすることで総返済額を大きく減らす効果がある。
繰り上げ返済には2つの方法がある。返済期間を短くする「期間短縮型」と返済期間を変えずに毎月の返済額を少なくする「返済額軽減型」がある。
2つの方法のうち、繰り上げ返済で利息の軽減効果が大きいのは「期間短縮型」である。しかし「返済額軽減型」は「期間短縮型」と比べて利息の軽減効果は劣るが、教育費の負担が大きく家計がまわらない時などは、毎月の返済額を減らすことで家計負担を軽くすることができる。

■繰り上げ返済の効果 期間短縮型と返済額軽減型を比較

「期間短縮型」と「返済額軽減型」で繰り上げ返済した場合の軽減効果はどれくらい違いがあるのか以下の通り、設定した条件に基づき、繰り上げ返済シミュレーションをした。

【条件】
借入金額:3000万円
借入期間:30年
金利:30年固定金利1.6%
5年目に100万円を繰り上げ返済する

【期間短縮型】
繰り上げ返済しなかた場合、返済残期間25年、総返済額が3779万3160円
繰り上げ返済した場合、返済残期間が23年10ヵ月に短縮され、総返済額3731万7474円となり、総返済額は47万5686円軽減される。

【返済額軽減型】
繰り上げ返済しなかった場合の毎月の返済額は10万4981円、総返済額3779万3160円。繰り上げ返済した場合の毎月の返済額は10万935円、総返済額3757万9360円となり総返済額は21万3800円軽減される。シミュレーションからみてもわかる通り「期間短縮型」は「返済額軽減型」に比べ、総返済額を減らす効果は大きいことがわかる。

■繰り上げ返済するタイミング

繰り上げ返済は早くすればするほど利息軽減の効果が大きくなるため、まとまった資金ができたらすぐに繰り上げ返済に充て、手元に現金がほとんどないという相談者も中には見かける。繰り上げ返済は早い時期にすればするほど効果的ではあるが、繰り上げ返済を頑張った結果、教育費が不足してしまい、住宅ローン金利より高い金利である教育ローンを借りるということになれば本末転倒である。
まずはライフプランに合った返済計画が重要である。長期固定金利で住宅ローンを借りている人は、繰り上げ返済後のライフプランを考慮しても無理がないと判断できれば、繰り上げ返済するタイミングである。ただ、変動金利や固定期間選択型の住宅ローンを借りている人は、金利が上昇したら、毎月の返済額が増えるリスクがある。低金利の今は無理して繰り上げ返済するのではなく金利の上昇に備えて、まとまったお金を準備しておくことも選択肢として考えていただきたい。
金利の上昇面に「返済額軽減型」で繰り上げ返済すれば、毎月の返済額を抑えられ金利上昇による返済額が増えるリスクを避けることができる。繰り上げ返済のシミュレーションも各金融機関のホームページを利用すれば簡単に計算できるので、繰り上げ返済の軽減効果をチェックし、ライフプランと合わせながら無理なく繰り上げ返済するタイミングをみていきたい。

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