依田一義の経済情報⑧

国際通貨基金(IMF)は4日、最新の世界経済見通しを発表した。7月時点の予想に比べ、日本の2016、17年の見通しを引き上げる一方、米国を引き下げ、世界全体では据え置いた。IMFは「現状の『標準以下の成長』が永続するリスクがある」として各国に政策発動を呼びかけた。

日本については、消費税増税の見送りや経済対策、日銀の金融緩和が個人消費を後押しし、円高などのマイナス要因を相殺すると分析。16年の実質経済成長率の見通しを0.5%増とし、7月時点から0.2ポイント上方修正した。ただ、「成長が引き続き弱い」とし、低成長に変わりはない。

ユーロ圏も英国の欧州連合(EU)離脱決定が重しになるものの、金融緩和効果を考慮して小幅に上方修正した。新興国ではインドが成長を持続、ロシアも原油価格の持ち直しで上向くと見込んだ。中国は据え置いた。

一方、米国はドル高や原油安、大統領選を巡る不透明感を背景に設備投資が振るわないとして、16、17年ともに見通しを引き下げた。EU離脱を決めた英国は、企業が投資や雇用に慎重になるとみて17年分を引き下げた。

世界全体の見通しは、16年が3.1%増、17年は3.4%増とそれぞれ据え置いた。IMFのオブストフェルド調査局長は「先進国経済は中期的にがっかりするような低成長の道筋をたどる」と予測。景気低迷が主要国の内向き姿勢をさらに強め、貿易縮小の流れが強まるなどすれば「世界経済の低迷を一段と深刻化、長期化させる」と警戒感を示した。

◇IMFの成長率見通し

2016年     17年

世界全体  3.1(--)   3.4(--)

日本    0.5(0.2)  0.6(0.5)

米国    1.6(▼0.6) 2.2(▼0.3)

ユーロ圏  1.7(0.1)  1.5(0.1)

英国    1.8(0.1)  1.1(▼0.2)

中国    6.6(--)   6.2(--)

インド   7.6(0.2)  7.6(0.2)

ロシア  ▼0.8(0.4)  1.1(0.1)

ブラジル ▼3.3(--)   0.5(--)

※単位%。▼はマイナス。カッコ内は今年7月からの修正幅。-は変わらず

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依田一義の国際情勢情報②

国際通貨基金(IMF)は1日、「特別引き出し権」(SDR)の構成通貨に中国の人民元を加えた。これに先立ち、IMFのラガルド専務理事は9月30日に記者会見し、「中国を国際的な金融、通貨制度に組み入れる重要な一歩で、歴史的な転換点だ」と評価した。

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SDRは、IMFが加盟国に割り当てる準備資産で、各国はSDRを構成通貨と交換することができる。このため、構成通貨には国際取引で広く使われていることや自由に取引できることが求められ、これまでは米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨だった。

1日からSDRの価値を現実の通貨に換算する際の比重で、人民元は10・92%で、米ドル(41・73%)、ユーロ(30・93%)に次ぎ、日本円(8・33%)と英ポンド(8・09%)を上回る。

IMFは、人民元に国際通貨としての「お墨付き」を与えれば、人民元の信頼が増して、世界経済の強化にもつながるとしている。

ただ、金融市場では中国が不透明な人民元相場の管理を続けていることへの不満もあり、真の主要通貨となるには時間がかかるとの見方が多い。

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