依田一義のエネルギー情報178

東京ガスは、欧州エネルギー大手、英国セントリカグループのトレーディング事業会社、セントリカLNG(液化天然ガス)と「相互協力に関する協定」を11月21日に締結した。戦略的協力関係の実現を目指す。東京ガスはセントリカグループと緊密な関係を築いてきたが、協定によって原料の調達を中心にした分野で連携を一層強化する。

セントリカは英国ウインザーに本社を置き、電力とガスの供給を手掛ける。ブリティッシュガスや、グループで米国エネルギー大手のダイレクトエナジーなどのブランドを通じて世界的に事業展開し、約2840万件の需要家に電力・ガスの供給と付随サービスを提供している。2015年の売上高は約280億ポンド(約3兆6000億円)にのぼる。

東京ガスはセントリカと、どちらも地域を代表するガス事業者として関係を構築してきた。今回、協定を結んで連携を強化することにした。具体的な取り組みで東京ガスが米国から調達するLNGと、セントリカがアジア太平洋地域で調達するLNGをカーゴ(積み荷)単位で交換し、輸送効率を向上させてコスト削減を図ることで合意した。

この枠組みに関して法的拘束力のある契約を結ぶ協議を進める。東京ガスは協定を通してアジア、北米と欧州を結び付けるLNGのバリューチェーン(価値連鎖)を展開し、原料価格低減と調達の多様化を実現する。今後も国内外のエネルギー事業者との連携を推進する。セントリカはアジア太平洋地域のLNG関連事業の拡大につなげる。

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依田一義のエネルギー情報151

東京ガスの広瀬道明社長は6日、都内で記者会見し、4月の電力小売りの全面自由化に伴い参入した電力事業について、2017年度末までに累計100万件の電気契約を目指す方針を明らかにした。電力担当役員を新設することも検討するといい、“新電力の最大手”が電力事業の拡大に意欲を見せた。

東ガスによると、4日時点での電気契約数は約48万2000件。7月には初年度目標の40万件を早々に突破し、目標を53万件に引き上げていた。広瀬社長は契約が伸びた要因を「従来の東京ガスに対する信頼に加え、ライフバルを中心とした営業努力、サービスが相まった」と分析。今後も顧客サービス向上に注力し「電力会社に匹敵するような組織体制を作っていければ。電力のことだけ考える役員がいてもいいのではないか」と述べた。

一方、来年4月に始まる都市ガス小売りの全面自由化については、「(契約の)2、3割はスイッチングされると覚悟している」と危機感を示した。

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依田一義のエネルギー情報150

東京ガスは3日、タイの天然ガス火力発電事業に参画したと発表した。同社が海外で発電事業に携わるのは4件目で、東南アジアでは初めて。

子会社「東京ガスアジア」を通じ、タイで発電事業を手掛ける「イースタンパワー&エレクトリックカンパニー」の株式28%を、フランス大手トタルのグループ会社から取得した。

イースタンパワー社は、首都バンコク近郊に出力35万キロワットの火力発電所を保有し、発電した電気をタイ発電公社へ2023年まで売電する契約を結んでいる。

東ガスはこれまで、メキシコやベルギーで計3カ所の発電事業に参画。東南アジアでは、ベトナムに液化天然ガス(LNG)の販売や基地建設を手掛ける合弁会社を設立するなど海外展開を加速している。

東ガスは「いずれはガス事業やエネルギーサービスなど日本でやっているような『バリューチェーン』を展開していきたい」としている。

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依田一義の不動産情報69

都市ガス最大手の東京ガスは9日、今秋にも旧事業用地など管内の遊休地を活用した中小規模の不動産事業に本格参入する方針を明らかにした。10月にも専門部署を立ち上げる。ガスタンク跡などの広い所有地を事務棟や商業施設に再開発する大規模案件が一段落する中、来春の都市ガス小売り全面自由化を控えて強化中の多角化戦略を推進するため、子会社中心で行ってきた中小規模案件を本体で手掛けていく。
東ガスは昨年10月、不動産計画部に中小規模の遊休地の再活用を検討する開発推進プロジェクトグループを設置。同月には、JR田町駅(東京都港区)に隣接するガスタンクや研究施設があった所有地を、商業施設やホテルに再開発する大規模開発事業「TGMM芝浦プロジェクト」に着手した。
開発推進プロジェクトグループは、10人の陣容で、子会社で不動産事業を手掛ける東京ガス都市開発と東京ガス用地開発の2社からも計6人が加わっている。昨秋以降、活用中の土地を含めた管内約3千カ所から開発の候補地を選定する作業を進め、これまで東京都内と神奈川県内の計約20カ所に絞り込んだという。
用途は「幅広く開発可能性を探る」(小野勝美・開発推進プロジェクトグループマネジャー)としているが、マンション建設などが検討されている。今夏までに数値目標を盛り込んだ事業計画書をまとめ、社内の機関決定を得て専門部署を設置する方向だ。
東ガスが首都圏で約1100万件の顧客を持つ都市ガス小売り事業は、来年4月に全面自由化される。同事業には火力発電の燃料として天然ガスを大量調達する東京電力ホールディングス(HD)などが参入を表明している。
東ガスは、4月の電力小売りの全面自由化に合わせて家庭用電力販売を開始し、東電HDから一定数の顧客を奪い存在感を高めているが、1年後には攻め込まれる立場に変わる。東ガスは、収益基盤を広げるため、現在は売り上げ全体の数%にとどまる不動産事業の育成を急ぐ。

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依田一義のエネルギー情報67

東京ガスは、さまざまな建物がスマートエネルギーネットワークで結びつき、エネルギーの有効利用を可能にする街づくりを進めている。「田町スマエネパーク」(東京都港区)では再生可能・未利用エネルギーを最大限活用することにより、二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比で45%削減する計画だ。
同パークには、スポーツセンターなどが入った「みなとパーク芝浦」と160床の「愛育病院」、「港区立しばうら保育園」という3つの建物がある。第一スマートエネルギーセンターを拠点として、街全体で熱と電気の地産地消を図っている点が特徴だ。
エネルギーを創る主な設備の一つがガスコージェネレーションシステム。2機のガスエンジンと1機の燃料電池によって構成され、発電する際の廃熱も有効利用する。
太陽熱集熱器は歩行デッキの屋根に設置。約90度の高温水を作り、冷暖房・給湯のエネルギー源として活用する。エリア全体には合計93キロワットの太陽光発電パネルを設置している。未利用エネルギーとしては地下トンネル水を活用。年間を通して温度変化が少ないという特性に着目し、冬は暖房の熱源として蒸気吸収ヒートポンプに、夏は冷却水としてスクリュー冷凍機に利用する。年間の省エネ率は30~65%に達するという。
建物自体にも、さまざまな省エネ対策が盛り込まれている。例えば、みなとパーク芝浦には空調に全面的に依存しない快適空間を実現するため、気流発生装置などを導入している。
エネルギーの安定供給を図るために構築しているのが「SENEMS(セネムス)」というシステム。ICT(情報通信技術)を活用し、建物側の需要データやプラント側の供給データなどを瞬時に分析処理し、エネルギー需給を最適に制御する。
田町スマエネパークは2つのエリアで構成されており、現在は西側街区の開発工事が行われている。同区には第二スマートエネルギーセンターを設置する予定で、「2つのセンターを連携することによって、より効率的な供給体制を目指す」(東京ガスエンジニアリングソリューションズ・ソリューション人事総務部の入江徹氏)。
東京ガスは、豊洲(東京都江東区)でもスマートエネルギーネットワークを構築。豊洲市場へエネルギーを効率的に供給する計画で、ネットワークを構築しない場合に比べて、CO2排出量を約4~5割削減する方針を掲げている。
昨年11~12月にパリで行われた「気候変動枠組み条約第21回締約国会議」(COP21)で日本は、30年までに温室効果ガス排出量を13年比26%削減することを公約。より高度な省エネ対策が求められる。このため東京ガスは再開発事業で、同様のネットワーク構築を積極的に仕掛けていく考えだ

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依田一義のエネルギー情報34

東京ガスは15日、4月から開始する家庭向け電力小売りサービスの申込件数が、14日時点で約11万8000件に達した、と発表した。4月の小売り全面自由化が近づき顧客の関心が高まっていることを受け、「申し込みのペースは上がっている」(同社)という。
東ガスは1月4日に受け付けを開始し、2月1日には当初公表した料金を値下げすると発表した。受け付け開始から約7週間後の2月23日に、申込件数が約5万4000件を突破。その後も申し込みのペースは速まっている。
東ガスは、首都圏に200を超えるグループのガス器具販売店「東京ガスライフバル」を持つなど、都市ガスならではの営業力で他の新電力に先行している。料金プランは、申し込みが多いガスとのセット割の場合、一戸建て住宅の3人家族で現在の電気料金より年約8500円割安になるとしている。

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