依田一義のエネルギー情報67

東京ガスは、さまざまな建物がスマートエネルギーネットワークで結びつき、エネルギーの有効利用を可能にする街づくりを進めている。「田町スマエネパーク」(東京都港区)では再生可能・未利用エネルギーを最大限活用することにより、二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比で45%削減する計画だ。
同パークには、スポーツセンターなどが入った「みなとパーク芝浦」と160床の「愛育病院」、「港区立しばうら保育園」という3つの建物がある。第一スマートエネルギーセンターを拠点として、街全体で熱と電気の地産地消を図っている点が特徴だ。
エネルギーを創る主な設備の一つがガスコージェネレーションシステム。2機のガスエンジンと1機の燃料電池によって構成され、発電する際の廃熱も有効利用する。
太陽熱集熱器は歩行デッキの屋根に設置。約90度の高温水を作り、冷暖房・給湯のエネルギー源として活用する。エリア全体には合計93キロワットの太陽光発電パネルを設置している。未利用エネルギーとしては地下トンネル水を活用。年間を通して温度変化が少ないという特性に着目し、冬は暖房の熱源として蒸気吸収ヒートポンプに、夏は冷却水としてスクリュー冷凍機に利用する。年間の省エネ率は30~65%に達するという。
建物自体にも、さまざまな省エネ対策が盛り込まれている。例えば、みなとパーク芝浦には空調に全面的に依存しない快適空間を実現するため、気流発生装置などを導入している。
エネルギーの安定供給を図るために構築しているのが「SENEMS(セネムス)」というシステム。ICT(情報通信技術)を活用し、建物側の需要データやプラント側の供給データなどを瞬時に分析処理し、エネルギー需給を最適に制御する。
田町スマエネパークは2つのエリアで構成されており、現在は西側街区の開発工事が行われている。同区には第二スマートエネルギーセンターを設置する予定で、「2つのセンターを連携することによって、より効率的な供給体制を目指す」(東京ガスエンジニアリングソリューションズ・ソリューション人事総務部の入江徹氏)。
東京ガスは、豊洲(東京都江東区)でもスマートエネルギーネットワークを構築。豊洲市場へエネルギーを効率的に供給する計画で、ネットワークを構築しない場合に比べて、CO2排出量を約4~5割削減する方針を掲げている。
昨年11~12月にパリで行われた「気候変動枠組み条約第21回締約国会議」(COP21)で日本は、30年までに温室効果ガス排出量を13年比26%削減することを公約。より高度な省エネ対策が求められる。このため東京ガスは再開発事業で、同様のネットワーク構築を積極的に仕掛けていく考えだ

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