依田一義のエネルギー情報91

神戸製鋼所は6月をめどに、栃木県真岡市で大規模な天然ガス火力発電所の建設に着手する。国内の大型火力は燃料輸送が容易な沿岸部に集中しており、内陸部に立地する初のケースとなる見通しだ。首都直下地震などで東京湾岸や太平洋岸の発電所が被災した場合でも、首都圏に安定的に電力を供給する「バックアップ電源」としての役割が期待されている。
真岡発電所は、ガスと蒸気のタービンを組み合わせた高効率の発電方法を使い、出力は大型原発並みの計124.8万キロワット。従来の火力発電所の多くは、発電時の蒸気を海水で冷やして水に戻しているが、真岡は空気で冷却する方式を採用する。
発電所は、太平洋岸から50キロ超離れた神戸製鋼真岡製造所の隣接地に建設される。茨城県にある東京ガスの液化天然ガス(LNG)基地から、付近までパイプラインが敷設されたために燃料調達が容易になった。2019~20年に順次稼働し、発電した電気は全て東ガスに卸売りする。
11年の東日本大震災では、東京電力が保有する沿岸部の原発や火力発電所が相次いで停止し、首都圏で計画停電が実施された。東京湾周辺を震源とする首都直下地震の発生も警戒されているが、神戸製鋼の橋本公男真岡建設本部長は「インフラが集中する東京湾岸から離れており、(立地)分散化でかなりの意味がある」と利点を強調している。
今月からは電力小売りが全面自由化され、東ガスは20年に首都圏の電力需要の1割を獲得する目標を掲げている。東ガスは、真岡発電所について「国内最高水準の発電効率を確保しており、津波被害に遭うこともない」と安定性を評価し、シェア拡大の原動力になると見込む。
首都圏の沿岸部では、自由化を契機に火力発電所の新増設計画が相次いでおり、JXエネルギーや出光興産、東燃ゼネラル石油などが準備を進めている。

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