依田一義の不動産情報68

国勢調査によると、日本の人口は2015年に1億2,711万人となり、5年前と比べて94万7千人の減少となった。首都圏や沖縄県、愛知県などで人口が増加する一方、39道府県で人口が減少した。
人口の減少にあわせて空き家問題が深刻化しつつあり、2014年には「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、空き家対策が本格化しはじめた。本稿では詳細な空き家の状況を全国的に把握できる唯一の統計である「住宅・土地統計調査(*1)」を用いて、全国および主要都市の空き家数と空き家率の現況を統計数値から概観する(*2)。

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(*1)データ等については総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」を参照のこと。なお、住宅・土地統計調査で利用される用語については「平成25年住宅・土地統計調査 用語の解説」を参照されたい。
(*2)過去に発行した「住宅・土地統計調査」に関するレポートとしては、「2013年住宅・土地統計調査(速報)にみる住宅と居住状況の変化」(2014.8.25)、「住宅・土地統計調査(速報)にみる住宅と居住状況の変化」(2009.9.4)、「東京都区部マンションの空家率と居住世帯特性 『平成20年住宅・土地統計調査報告』の分析(1)」(2010.10.6)、「東京都区部マンション居住世帯数の今後の見通し 『平成20年住宅・土地統計調査報告』の分析(2)」(2010.10.13)、「高齢単独世帯の居住状況 『平成20年住宅・土地統計調査報告』の分析(3)」(2010.11.30)などがある。
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■全国の空き家数・空き家率

◆増加が続く空き家数

住宅・土地統計調査によると2013年の全国の空き家数は819.6万戸(*3)で、住宅総数(6千62.9万戸)に占める比率(空き家率)は13.5%となった。空き家率は5年前の13.1%から0.4ポイントの上昇であった。
こうした空き家率の上昇は、住宅数の増加が居住者のいる住宅の増加を上回っているからである。居住世帯のある住宅の増加率は2008年から2013年の5年間に+5.0%の増加(2008年調査では+5.8%の増加)だったが、住宅総数は+5.3%の増加(同+6.9%)であり、その結果、空き家数は+8.3%の増加(同+14.8%の増加)となった。

ただし、空き家の増加数は、1993年~1998年の+129万戸の増加から、2008年~2013年には63万戸へと縮小が続いている。

住宅・土地統計調査では、空き家は、(1)別荘などを含む「二次的住宅」と、(2)「賃貸用」の空き家、(3)「売却用」の空き家、(4)そしてこれらに含まれない居住者の死亡等により居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建替えのために取り壊すことになっている「その他」の空き家、に区分されている。

空き家区分で特に増加が著しいのが「その他」の空き家であり、2008年~2013年の5年間に+50万戸の増加(増加率は+18.7%)があり、この期間の空き家増加総数(+62.8万戸)の80.1%を占めている。

2003年以降、「その他」の空き家が空き家の増加に大きな比率を占めるようになった結果、1983年~1988年には賃貸用の空き家は、空き家増加総数の8割近くを占めていたが、2008年~2013年の5年間では26.3%まで低下している。

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(*3)住宅・土地統計調査で調査対象となっている空き家には廃屋は含まれない。したがって2013年時点で日本には居住可能な住宅の空き家が820万戸ある。ただし、ここには、居住可能であるが腐朽や破損が見られる住宅も含まれる。
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◆借家の空き家率は横ばいで推移

次に所有関係別に空き家の状況を概観する。空き家は図表-3で見たように4区分されて調査されている。本稿では所有関係別で区分する場合、空き家を(1)賃貸用の空き家と、(2)それ以外の空き家に分け、それ以外の空き家((2))を「持家系の空き家」と表現することとする(*4)。

2013年時点で持家系の空き家数は390万戸、賃貸用の空き家は429万戸あり、賃貸用の空き家が全体の52.4%を占めている。
賃貸用の空き家の構成比は1998年の61.1%から低下が続いており、これは持家系の空き家の増加率の高さが理由である(*5)。2008年~2013年に、居住世帯がいる持家住宅の増加率が6.1%であるのに対し、持家系の空き家の増加率は13.4%であった。
同様に居住世帯がいる借家住宅の増加率が4.2%であるのに対し、賃貸用空き家の増加率はそれを下回る4.0%だった。
ここで、近似的にではあるが持家系と借家の「空き家率*」(*6)を計算すると、持家系の空き家率*は2008年の10.2%から2013年には10.8%に上昇する一方、借家の空き家率*は同期間に18.8%から18.8%へと横ばいの推移であった。

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(*4)本稿の「持家系の空き家」には、(1)二次的住宅と(2)売却用の空き家、(3)その他の空き家が含まれる。
(*5)前項で記述したように、近年の持家系空き家の増加の多くは「その他」の空き家の増加による。
(*6)持家系および借家の空き家率の計算において、分母となる持家系と借家のそれぞれの住宅総数は、「居住世帯のある住宅」+「空き家」+「一時現在者のみの住宅」+「建築中の住宅」で計算することになる。しかし、「一時現在者のみの住宅」と「建築中の住宅」について持家と借家の区分ができないため、本稿ではこれらを分母から除外して、「居住世帯のある住宅」+「空き家」を分母として近似的に空き家率を求め、これを「空き家率*」と表現することとした。2013年に「一時現在者のみの住宅」と「建築中」の住宅は、住宅総数の0.5%(33万戸)を占めており、これらが持家と借家に等分される場合、2013年の持家系空き家率は10.8%(近似計算(持家系空き家率*)では10.8%)、借家空き家率は18.7%(近似計算(借家空き家率*)では18.8%)となる。なお、居住世帯ありの住宅で所有関係が不詳の住宅が142万戸あり、この不詳分も持家と借家の分母から除かれている。同様の問題は、建て方別においても発生するため本稿では所有関係と同じ対応をとる。
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◆一戸建ての空き家率が上昇

住宅の建て方別(*7)に空き家数をみると、2013年に一戸建ての空き家が300万戸、長屋建ての空き家が45万戸、共同住宅の空き家が471万戸、その他の空き家が3万戸となっており、建て方別にみると共同住宅の空き家の構成比が57.5%を占めている。
2008年から2013年までに一戸建ての空き家の増加率は+19.8%に達し、共同住宅の空き家増加率の+1.9%を大きく上回っている。これは後に見るように地方圏での増加が大きく影響している。なお、居住世帯のある一戸建て住宅の過去5年間の増加率は+4.2%で、居住世帯のある共同住宅の増加率は+6.8%だった。
所有関係別と同様に、近似的に建て方別の空き家率*を求めると、一戸建ての空き家率*は2008年から2013年に8.4%から9.5%に上昇、長屋建ては23.8%から26.1%に上昇、共同住宅は18.3%から17.6%へとわずかに下落が見られた。

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(*7)住宅・土地統計調査の用語解説によると主な住宅の建て方は次のように説明されている。「一戸建」一つの建物が1住宅であるもの。「長屋建」二つ以上の住宅を一棟に建て連ねたもので、各住宅が壁を共通にし、それぞれ別々に外部への出入り口を持っているもの。「共同住宅」一棟の中に二つ以上の住宅があり、廊下・階段などを共有しているものや二つ以上の住宅を重ねて建てたもの。
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◆持家系一戸建ての空き家率が上昇

より細かく、所有関係別・建て方別の空き家をみていく。
2013年の空き家数819.6万戸のうち、最も高い構成比を占めるのが賃貸用の共同住宅の空き家で、空き家総数の45.7%を占め、次いで持家系の一戸建ての空き家(同33.6%)、持家系共同住宅の空き家(同11.8%)と続いている。
これら主要3区分のうち、空き家数の増加が顕著なのは持家系の一戸建ての空き家で、1998年には139万戸(構成比は24.2%)だったのが、2013年には275万戸(同33.6%)へと増加している。
区分別増加数では、2008年~2013年に最も増加したのが持家系の一戸建て(+51.0万戸)で、持家系の共同住宅は-6.4万戸の減少、賃貸用共同住宅は+15.3万戸の増加であった。
なお、賃貸用共同住宅の空き家数が大きく増加した2003年~2008年は、不動産バブルとも呼ばれる不動産市場の好況に加え、住宅専業J-REITが誕生するなど、賃貸用マンションが多く建設された時期であった。
前節までと同様に近似的な数値として、所有関係別・建て方別に空き家率*を求めると、持家系の一戸建ての空き家率*は1998年の5.7%から2013年には9.5%まで大きく上昇している。
一方、同じ持家系でも共同住宅では同期間に18.2%から15.0%へと下落し、借家の共同住宅では17.3から19.2%へとわずかな上昇となっている。

■都道府県別・主要要都市別の空き家数・空き家率

◆地方圏で一戸建ての空き家数が増加(都道府県別)

空き家率は都道府県別に大きな格差がみられる。
2013年の空き家率は、山梨県が22.0%で最も高く、宮城県(9.4%)が最も低かった(*8)。空き家数は大都市圏に集中しており、増加数も大都市圏での増加が顕著だが(*9)、増加率をみると地方圏でも高い県がみられる。
地方での空き家の増加傾向は、一戸建てで顕著で、2008年~2013年に一戸建ての空き家が1万戸以上増加したのは25都道府県で、人口の多い大都市圏だけでなく、中部や中国、九州などにも広がっている。
すでに地方圏では一戸建ての空き家数が少なくなく、三大都市圏を除く一戸建ての県別平均空き家数は5.4万戸に達し、これは三大都市圏の平均(10.5万戸)の51.2%に相当する(*10)。
これに対し、共同住宅の空き家の増加は、大都市圏での増加が著しく、地方圏の各県ではわずかな増加か減少という県が多い。三大都市圏を除く共同住宅の県別平均空き家数は5.5万戸で、三大都市圏の平均(29.2万戸)の18.7%にすぎない。
持家系の一戸建てと借家の共同住宅の空き家率*を計算した。宮城県と沖縄県で空き家率*はともに低く、持家系一戸建ての空き家率*は中部・四国などの県で比較的高く、借家共同住宅の空き家率*は北関東や中部で高めの件が多いという結果が得られた。

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(*8)山梨県では別荘(二次的住宅に含まれる)の多さが空き家率を引き上げており、宮城県は東日本大震災の影響で、みなし仮設住宅なでとして住宅が借りあげられたことなどが空き家率の下落に貢献したといわれている。
(*9)2008年~2013年における空き家の減少数が最も大きかったのは、宮城県(-4.2万戸)で、次いで福島県(-1.3万戸)だった。
(*10)ここでは三大都市圏を埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県とした。
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◆主要都市の空き家数・空き家率

(1)西日本の主要都市で相対的に高い空き家率
2013年の主要21都市の空き家率をみると、全般的に東日本よりも西日本の空き家率が高い傾向が見られる。主要都市で空き家率が最も低い市はさいたま市の9.9%で、最も高い市は大阪市の17.2%だった。2008年~2013年の5年間に最も空き家が増加したのは、東京都区部(+4.3万戸の増加)で、最も減少したのが仙台市(-2.5万戸の減少)だった。
これら主要都市の所有関係別・建て方別の空き家率*を計算すると、持家系一戸建ての空き家率*や借家の共同住宅の空き家率*と比べ、持家系共同住宅の空き家率*で都市間格差の大きさが際立っている。なお、借家の共同住宅では、仙台市が11.7%と突出して低い空き家率*だった。

(2)東京都区部

東京都区部の2013年の空き家数は2008年の54.5万戸から2013年に58.7万戸に+4.3万戸の増加となった。このうち、賃貸用の非木造共同住宅等(*11)は+6.4万戸の増加で、都区部全体の空き家数の増加(+4.3万戸)を2万戸以上、上回っている。なお、持家系の共同住宅等は-3.7万戸の減少だった。
持家系の空き家の5年間の変化を区別にみると、一戸建ては大田区と江戸川区でのみ顕著な増加となった一方、非木造共同住宅等は多くの区で減少しており、その中で世田谷区の空き家のみが大幅な増加だった。一方、賃貸用の非木造共同住宅等の空き家については、大田区や世田谷区でなど多くの区で増加が見られた。

2013年の東京都区部の空き家率は11.2%だったが、このうち、江東区が7.8%で最も低く、豊島区が15.8%で最も高かった。
東京都区部の所有関係別・建て方別の空き家率*を計算した。ここで特徴的なのが、持家系一戸建ての空き家率*が都心部の千代田区と中央区で高いことである。非木造共同住宅等の空き家率*を持家と借家とで比較すると、世田谷区以外の全ての区で借家が持家の空き家率*を上回っている。

(3)札幌市

札幌市の2013年の空き家数は14.2万戸で、2008年と比べ6.6千戸の増加だった。このうち空き家の増加数が多かったのが持家系の共同住宅(+5.6千戸)と持家系の一戸建て(+4.4千戸)で、賃貸用の空き家は全体で-3.3千戸の減少だった。
区別の空き家率をみると、厚別区、手稲区、清田区(*12)などで低く、中央区で高かった。区別の格差は5.9%から20.3%と比較的大きな格差があり、地域別に住宅の需給ギャップがあるものと思われる。非木造共同住宅の空き家率*を計算すると、中央区では持家で13.7%、借家で24.4%だった。

(4)名古屋市

名古屋市の2013年の空き家数は16.8万戸で2008年の14.7万戸から+2.0万戸の増加だった。空き家数の増加は、賃貸用の非木造共同住宅等で+1.6万戸の増加と多く、持家系の一戸建ての空き家が+3千戸の増加だった。
名古屋市は区別の空き家率格差が小さく、ほぼ11%から15%の範囲に収まっており、瑞穂区で最も空き家率が高く、緑区で最も低かった。非木造共同住宅の空き家率*をみると、借家では区別の格差が小さい一方、持家では中川区の5.5%から北区の15.5%まで比較的大きな差が見られる。

(5)大阪市

大阪市の2013年の空き家数は28.1万戸で2008年の25.5万戸から+2.6万戸の増加だった。空き家数は賃貸用の非木造共同住宅等で+1.6万戸の増加で、賃貸用の木造共同住宅が+5千戸、持家系一戸建てが+4千戸の増加だった。
区別の空き家率は、鶴見区が6.2%と低く東住吉区と西成区が23.8%で最も高かった。各区全体の空き家率と借家の非木造共同住宅の空き家率*が非常に近い数値になっており、中央区や北区、西区などの都心で、借家の非木造共同住宅の空き家率*が相対的に低い水準にある。

(6)福岡市

福岡市は主要都市で唯一、2008年から2013年に空き家数が減少した都市である。2013年の空き家数は10.4万戸で2008年の11.7万戸から-1.2万戸の減少だった。空き家数の減少は、賃貸用の非木造共同住宅(-1.0万戸の減少)、賃貸用木造住宅(-2千戸の減少)、持家系共同住宅(-2千戸の減少)の減少による。賃貸を中心に共同住宅の需要が増加しているようだ。
区別の空き家率は、西区で7.9%と最も低く、中央区が14.7%で最も高かった。博多区では、持家の非木造共同住宅の空き家率*が4.8%と非常に低い水準にある。西区では借家の非木造共同住宅の空き家率*が7.8%と非常に低く、賃貸共同住宅への需要の強さがうかがえる。

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(*11)住宅・土地統計調査の市町村編では、建て方別の空き家区分として「一戸建て」と「長屋建て・共同住宅・その他」の二区分のみの開示となっているため、以下の主要都市別では、一戸建てと、一戸建て以外は共同住宅等として計算・表現する。
(*12)清田区では借家の木造共同住宅等の空き家率も19.5%と札幌市内の区で最も低く、共同住宅への需要が相対的に強い状況にあるようだ。
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■空き家の腐朽状況

◆空き家の腐朽・破損状況

住宅・土地統計調査では、住宅の腐朽・破損の有無を調査している。居住世帯のある住宅では、破損・腐朽の比率が8.6%の一方、空き家では26.0%に達する。
建て方・構造別にみると、空き家のうち一戸建て(33.0%)と木造の共同住宅(34.0%)で腐朽・破損の比率が高く、非木造の共同住宅では15.8%とその比率は低い。また、腐朽・破損比率は、別荘などの二次的住宅で低く(12.5%)、長期に人が居住していない「その他の住宅」では33.1%と約三分の1の空き家に腐朽・破損がみられる。

◆共同住宅の空き家の建築時期

総務省統計局は住宅・土地統計調査の結果を特別集計したレポート(*13)で、共同住宅の空き家の建築時期をとりまとめている。これによると、共同住宅の空き家で最も戸数が多いのは1991年~2000年に建築された住宅の74.5万戸で、次いで1981年~1990年の73.1万戸だった。
空き家率は、共同住宅全体では17.6%だが、1970年までに建築された住宅では21.0%に達している。一方、2001年以降に建築された住宅では10%程度の空き家率*だった。

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(*13)総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査特別集計「共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(確報集計結果)からの推計-」」。
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◆マンションの建築時期と空室率(マンション総合調査)

国土交通省のマンション総合調査(*14)によると、全国のマンションで3ヶ月以上空室となっている戸数割合は2.4%であるという。
建築時期別に見ると、1969年以前に建築されたマンションでは空室割合が8.2%と高く、2005年~2009年の建築物件では0.8%という低さであった。このように、住宅・土地統計調査とは空き家率の水準に格差はあるが、他の調査でも建築後の年数が長いほど空き家率は高くなっている。

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(*14)調査の詳細については国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果」を参照のこと。
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■おわりに

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、2015年から2016年にかけて日本の人口は年間で40万人を越える減少となり、その減少幅は今後さらに拡大し、2025年には前年比で-74万人の減少になると予測されている。
2025年の日本の人口は2010年比で-21.4%の減少で、東京都でも-11.7%の減少になるという。世帯数についても、同じく国立社会保障・人口問題研究所によると、2010年~2015年に一般世帯数は+106万世帯の増加だが、2015年~2020年には+15万世帯の増加、2020年~2025年には-61万世帯の減少になると予測されている。
東京をはじめとする大都市では、近年の都心居住の進展に加え、昨年は、相続税対策や高級マンションの購入や外国人によるマンション購入などが進むなどの活況があり、人口減少による住宅への影響を直接感じることは少ない。しかし、日本全体での人口減の本格化はすでに始まっており、今後、各地で住宅への影響が深刻化する可能性が高い。
本稿は、全国的に空き家数を確認できる唯一の統計である住宅・土地統計調査から、空き家の現況の基本的データを整理したものである。それによると、2013年現在、日本には居住可能な空き家は820万戸あり、毎年、十数万戸ずつ増加している。さらに空き家率や空き家の増加率は地域によって大きく異なり、今後の人口減少の進展の中で、持家の一戸建てに加え、マンションの空き家の増加も懸念される。
現在、海外からのインバウンド客の急増などから空き家の民泊としての活用(*15)などが提案されており、特に地方ではその期待が高いと思われる。ただし、空き家の活用のためには、空き家の現状把握とともに、今後の状況予測のためにも、住宅・土地統計調査における高齢者などの居住状況の分析がより重要になってくると思われる。
こうした空き家の見通しに関する分析は、政策担当者ばかりでなく、民間事業者や投資家にとってもますます重要になっていくのではないだろうか。

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(*15)みずほ総合研究所のレポートによると、訪日外国人旅行者数が2,500万人までに増加する場合、全国で新たに必要となる客室数は2014年比で4万1千室(延べ宿泊者数の増加は3.8千万人)と予測されている。本稿で記述してきたように、日本には居住可能な空き家が820万戸存在し、毎年10数万戸ずつ増加していることから、空き家の有効利用が日本の宿泊施設不足の解消に大きな役割を果たす可能性が高い。現在、「民泊サイトを通じた民泊」が客室を不特定多数に繰り返し貸し出すためには、通常、旅館業法の許可を受ける必要があるが、厚生労働省「「民泊サービスのあり方」に関する検討会」から公表された「「民泊サービス」のあり方について(中間整理)」では、中期的な検討課題として、規制の程度について現状のような「許可ではなく、届出とする等」の課題を記載している。居住可能な空き家が820万戸あり、毎年十数万戸ずつ増加し、今後も増加が見込まれるという、欧米でも例のないスピードで空き家が増加する日本にとって、届出だけで民泊として認めるという方向性は、今後の人口減少の進展や人口の都心回帰の流れに伴う周辺部での空き家の増加、人口減と高齢化よる日本人による国内旅行の減少可能性などを考慮すると、宿泊施設の供給過剰を懸念せざるを得ない。なお、国内宿泊施設における外国人比率は急激に高まっているが、2015年時点で13.1%であり、日本人による宿泊が全体の86.9%を占めている。もちろん、新たな政府目標では2020年までの訪日外国人旅行者数は4千万人となっており、これが実現されるのであれば、宿泊施設として現在の空き家の活用は不可欠であろう。みずほ総研のレポートについては、大和香織「インバウンド観光と宿泊施設不足-2020年までに東京・関西を中心に不足感強まる」(2015.8.10)みずほインサイト、を参照のこと。また、「週刊ホテルレストラン」2015年12月4日号によると、2015年12月時点での全国のホテルの新・増設客室計画数は4.5万室(完成時期未定を含む)に上っており、その後も多数のホテル開発計画が発表されている。
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