依田一義のエネルギー情報70

神戸市の「西部処理場」で3月24日にバイオガス発電設備が運転を開始した。市内に7カ所ある下水処理場の1つで、バイオガス発電を実施するのは2カ所目だ。神戸市が2030年度に市全体のCO2(二酸化炭素)排出量を30%削減(2005年度比)する計画の一環で取り組む。
下水処理場では汚泥を発酵させる過程で大量の消化ガス(バイオガス)が発生する。通常は燃料になるメタンのほかにCO2を40%近く含んでいるが、神戸市の西部処理場では精製装置を使って純度98%のメタンガスを作る。都市ガスと同等の水準までメタンの純度を高めて燃焼効率を引き上げるためだ。特別に「こうべバイオガス」と呼んで、下水処理場で生産量を増やしている。
西部処理場には「こうべバイオガス」を燃料に利用する24台のコージェネレーションシステムを導入した。1台あたりの発電能力は25kW(キロワット)で、合計すると600kWの電力を供給できる。年間の発電量は460万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して1300世帯分に相当する。全量を処理場の中で消費して、電力会社から購入する電力量を3割減らす。
さらにコージェネレーションで供給する熱は汚泥を発酵させる消化タンクの加温に利用する。熱の供給能力は電力に換算して928kWにのぼる。一般家庭の都市ガス使用量(年間400立方メートル)に換算すると1600世帯分に相当する熱量になる。
高純度に精製した「こうべバイオガス」を使うことで、燃料のエネルギーを電力に変換する発電効率は33%、熱効率は51%に達して、合計で84%の高効率のエネルギー利用を可能にした。CO2排出量は年間で約2400トン削減できる見込みだ。

木質バイオマスを混合してガス量を増やす
神戸市は下水の処理能力が最大の「東灘処理場」で2008年に初めて「こうべバイオガス」の製造を開始した。高純度に精製することによって、大阪ガスの導管を通じて一般家庭に都市ガスとして供給している。さらに併設の「こうべバイオガスステーション」で天然ガス自動車に燃料を供給することもできる。
東灘処理場では2011年度から「KOBEグリーン・スイーツ プロジェクト」と呼ぶ木質バイオマスと組み合わせたバイオガスの実証研究にも取り組んでいる。近隣の六甲山などから集めた間伐材をはじめとする木質系のバイオマス(グリーンバイオ)を下水の汚泥に混合する。下水で収集できる食品系のバイオマス(スイーツバイオ)と合わせて、バイオガスの製造量を増やす試みだ。
こうべバイオガスを利用した発電は「垂水処理場」が最初の導入事例である。垂水処理場では太陽光発電とバイオガス発電を同時に実施する「こうべWエコ発電プロジェクト」を2014年に開始している。太陽光発電で2000kW(2メガワット)、バイオガス発電で350kWの電力を供給できる。年間の発電量は両方を合わせると西部処理場とほぼ同じ450万kWhになる。
神戸市は下水道の資源を活用したエネルギー事業を今後も拡大していく。すでに「こうべバイオガス」の事業を実施中の3カ所に加えて、残る4カ所の下水処理場にもバイオガス事業を展開する方針だ。下水の処理に伴って発生する消化ガスを2025年度までに100%フルに活用することが目標である。

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