依田一義のエネルギー情報149

資源エネルギー庁が発表した8月の燃料油国内販売は、前年同期比3.0%減の1428万キロリットルと、11カ月連続マイナスとなった。

油種別にみると、灯油、軽油、A重油は前年を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、B・C重油が前年を下回った。

燃料油の生産は同2.6%減の1543万キロリットルと4カ月ぶりに前年を下回った。油種別にみると、軽油、A重油、B・C重油は前年を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油が前年割れ。

燃料油の輸入は同2.5%減の281万キロリットルと7カ月連続でマイナス。輸出は310万キロリットル、同1.3%減と4カ月ぶりに前年を下回った。

燃料油の在庫は1074万キロリットル、同2.6%減と13カ月連続して前年を下回った。油種別にみると、ガソリン、灯油、軽油は前年を上回ったが、ナフサ、ジェット燃料油、A重油、B・C重油はマイナスとなった。

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依田一義のエネルギー情報118

資源エネルギー庁がまとめた2016年3月時点の最新データによると、固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した再生可能エネルギーの発電設備は累計で3726万kW(キロワット)に達した。1年前の2758万kWと比べて968万kWの増加である。発電能力を単純には比較できないものの、大型の原子力発電所10基分に相当する発電設備が1年間で稼働したことになる。
さらに運転開始前の発電設備を加えると8732万kWになり、全国にある原子力発電所43基(廃炉決定分を除く)を合わせた4120万kWの2倍以上の規模に拡大する。大規模・集中型で災害時に供給力の不安がある原子力発電から、小規模・分散型で電力を地産地消できる再生可能エネルギーの発電設備へ、電力供給の構造変化が確実に進んでいる。

運転を開始した発電設備の増加に伴って電力の買取量も増えている。2016年3月の買取量は過去最高の42億kWh(キロワット時)で、前年3月の28億kWhから1.5倍に拡大した。このうち太陽光が72%を占める。次いでバイオマスが13%、風力が11%、中小水力が3%、地熱は1%以下である。天候の影響を受けないバイオマス・中小水力・地熱の合計で16%にとどまる点が引き続き大きな課題である。

2016年度の年間を通じた買取量は432億kWhにのぼり、2015年度の286億kWhから1.5倍に増えた。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると1200万世帯分に相当する。日本全体の総世帯数5600万の2割以上をカバーできる電力になる。

買取金額も年間で1兆5495億円に拡大した。電力1kWhあたり36円弱で、火力発電と比べて3倍以上も高い水準になっている。当面は30円を上回る買取金額が続いていく。一方で石油やLNG(液化天然ガス)の輸入価格が下がって火力発電のコストが低下している。今後も再生可能エネルギーが増えるのに伴って、価格の高い石油を中心に火力発電が減り、発電コスト全体のバランスが保たれる見通しだ。

都道府県別では茨城県が1位に躍進

2012年7月に固定価格買取制度が始まって以降、全国各地で再生可能エネルギーの導入が活発に進んできた。制度開始から3年半を経過した2016年3月の時点では、電力の消費量が多い関東の各県で導入量が大きく伸びている。全国47都道府県のうち1位は茨城県で、2位が千葉県、さらに6位に栃木県、10位に群馬県が続く。

いずれの県も太陽光発電が圧倒的に多いが、茨城県では風力とバイオマスの伸びも著しい。このほかの上位10県では、風力は鹿児島県と北海道、中小水力は北海道と静岡県の導入量が多く、地熱は鹿児島県だけである。バイオマスは茨城県をはじめ6つの県で1万kWを超える規模の発電設備が運転を開始している。

さらに運転開始前の発電設備を加えた認定量でも茨城県が1位に躍進した。1年前と比べて55万kWの大幅な増加で、特にバイオマスが31万kWも伸びた。そのほとんどが木質バイオマスである。製材端材や輸入材を燃料に利用する発電設備が多い。

第2位は福島県で、認定設備の規模は1年前の時点から45万kWも減少してしまった。太陽光発電の認定取り消し分が数多く発生したためだ。それ以外の風力・中小水力・地熱・バイオマスは着実に増えている。第3位の鹿児島県でも太陽光発電の認定量が減ったが、他県ではさほど伸びていない中小水力と地熱が1000kW前後も増加した。

このほか第7位に宮崎県、第10位に熊本県が入り、九州では引き続き再生可能エネルギーの取り組みが活発だ。宮崎県では風力とバイオマス、熊本県では中小水力の多さが目を引く。同様に再生可能エネルギーの資源が豊富な東北からは、福島県に加えて第6位に宮城県が入った。風力とバイオマスの発電設備が増えている。第8位の北海道でも風力とバイオマスが大幅に伸びた。

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依田一義のエネルギー情報44

電力会社10社による市場の寡占状態が崩れてきた。資源エネルギー庁の電力調査統計によると、2016年1月の全国の販売電力量のうち、すでに自由化の対象になっている企業・自治体向けで新電力のシェアが8.9%に達した。1年前の5.8%から3ポイント以上も上昇したことになる。2016年内に10%を超える可能性も出てきた。

「FITでんきプラン」の電源構成
特に新年度が始まった2015年4月から新電力のシェアが急速に伸びた。企業や自治体の多くが年度の変わり目に電力会社から新電力へ契約を切り替えた状況が見てとれる。実際に電力を販売した事業者数も増え続けて、2015年10月に100社を突破した。さらに2016年1月には118社まで増加している。
これから自由化が始まる家庭向けの市場でも、新電力(2016年4月から「小売電気事業者」)の攻勢にはずみがついている。東京電力の管内で先行する東京ガスは3月14日までに11万8000件の申し込みを獲得した。2月1日に電気料金を値下げしてから申込件数が急増して、3月に入って獲得ペースが加速している状態だ。
一方では小売電気事業者の営業活動に早くも不適切な行為が数多く見られる。適正な取引を推進する電力取引監視等委員会の相談窓口には、2月だけで151件の電話やメールが寄せられた。その中には、「スマートメーターを取り付けると電気料金が半額になる」といった不当な勧誘を受けたケースもあった。

電源構成の開示が続々と始まる
経済産業省は2016年1月に「電力の小売営業に関する指針」を改定して、問題となる行為や望ましい行為を具体的に規定した。この指針で最も重視している点は、需要家に対して適切な情報を提供することだ。小売電気事業者の情報提供に関する望ましい行為の1つに、販売する電力の電源構成を開示する問題がある。
電源構成は水力・火力・原子力・再生可能エネルギーなどの比率を示したもので、需要家が電力の特性を参考にしながら購入先を選ぶことができる。経済産業省は電力会社や小売電気事業者に電源構成の開示を義務づける方向で検討したものの、一部の事業者の反対などもあって義務化を見送った経緯がある。
それでも電源構成を開示する小売電気事業者が数多く出てくる見通しだ。すでにソフトバンクが3月14日に受付を開始した「FITでんきプラン」では電源構成を開示している。再生可能エネルギーで作った電力のうち、固定価格買取制度(FIT:Feed-In-Tariff)で買い取った電力は「FIT電気」と表記することが経済産業省の指針で決められている。
東京ガスも3月末までに電源構成を開示する予定だ。LNG(液化天然ガス)で発電した電力を100%提供することを明記する。LNGを燃料に使った火力発電は石炭火力や石油火力と比べてCO2(二酸化炭素)の排出量が少ないため、相対的に地球環境にやさしい電力であることをアピールできる。
再生可能エネルギーやLNG火力を中心に電力を販売する小売電気事業者は電源構成の開示に積極的だが、CO2排出量の多い石炭火力や石油火力、放射能汚染のリスクがある原子力を多く含む電力を販売する事業者が電源構成を開示するかどうかは注目だ。特に電力会社10社すべてが電源構成を開示すれば、需要家の判断基準の1つとして定着する可能性が大きい。

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