依田一義のエネルギー情報90

資源エネルギー庁が推進する「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業」の2016年度分の公募が4月11日に始まった。
ZEBはビル内で消費する空調や照明などのエネルギー消費量を実質的にゼロに削減するもので、国が定める基準値から50%以上を削減できると「ZEB Ready」になる。
実証事業ではZEB Readyを実現する新築・既築・増改築のビルを対象に、設計費・設備費・工事費の3分の2までを補助金で交付する。
1件あたりの補助金の上限は10億円と高額だ。国の委託を受けた「環境共創イニシアチブ」が5月23日まで応募を受け付けて、6月中に交付先を決める。
ZEBはビルで作り出す再生可能エネルギーの発電量を消費量から相殺して、正味でゼロ(ネット・ゼロ)にすることができる。
国の定義では再生可能エネルギーの発電量を相殺して消費量を計算した場合に、基準値から75%以上を削減できると「Nearly ZEB」、
100%以上を削減できると「ZEB」と評価する。
ただし発電量を相殺する前のエネルギー消費量の削減分だけで50%以上になるZEB Readyが前提だ。
この定義は2015年12月に公表した「ZEBロードマップ」で規定したもので、2016年度の補助金からZEB Readyを条件に加えた。
ZEBロードマップは国内のエネルギー消費量を削減するために、オフィスなど非住宅用の建築物をZEBに転換していく取り組みをまとめた。
2030年までに新築の建築物の平均でZEBを実現することが国の目標だ。そのためにはZEB ReadyやNearly ZEBのビルも増やしていく必要がある。
ZEBの補助金は2012年度から始まり、これまでに補正予算分を含めて合計5回にわたって実施してきた。予算の累計額は185億円にのぼり、
合わせて244件の建築物が補助金の交付を受けている。新たに2016年度の予算で6回目の補助金を開始する。

技術・経済面の優位性も評価して選ぶ
2016年度のZEBの補助金は交付先を全国に分散させるため、8つの地域区分ごとに対象の建築物を選定することになった。
事務所やホテルなど7つの用途に分けた建築物それぞれで各地域から交付先を選ぶ方法である。
8つの地域区分は国の省エネルギー基準の中で気候をもとに規定したものだ。北海道から沖縄まで市町村単位で地域区分が決まっている。
この地域区分と建築物の用途によって外皮(壁や窓など)の性能基準が決められていて、基準を満たさなければ補助金を受けることはできない。
補助金の交付先は応募案件ごとにZEBの達成度などを審査して、総合点の高い案件から選んでいく。将来に向けてZEBを拡大するモデルケースになるように、
技術面と経済面の優位性も評価する。技術面ではBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入することが条件になっている。
補助金の対象には外皮性能の高い断熱材をはじめ、空調、換気、給湯、照明などの設備が入る。
そのほかに燃料電池などのコージェネレーションシステムや蓄電池、受変電設備やBEMSの導入費を含めることができる。
太陽熱など再生可能エネルギーの熱を利用する設備も対象になるが、発電設備は固定価格買取制度があるために対象外になる。
政府は2016年度のZEBの補助金の予算を総額40億円で見込んでいる。1回目の公募で予算に達しなかった場合には、5月下旬から2回目の公募、
6月下旬から3回目の公募を実施する予定だ。全国から多数の応募が集まって、モデルケースになるZEBが各地に広がっていくことを期待したい。

株式会社Z-ONE