依田一義のエネルギー情報92

福井県の中で面積が最大の大野市は東部の山岳地帯にある。周囲を高い山々に囲まれた大野市の一角で、木質バイオマスを燃料に利用する「福井グリーンパワー大野発電所」が4月1日から運転を開始した。
発電能力は7MW(メガワット)と大きくて、1年間で334日の稼働を予定している。年間の発電量は5000万kWh(キロワット時)に達する。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万4000世帯分に相当する。約1万世帯が暮らす大野市の家庭が必要とする電力の1.4倍を再生可能エネルギーで供給できる。
発電事業者は2014年に大野市内に設立した福井グリーンパワーである。神戸製鋼グループの神鋼環境ソリューションを中心に、石油元売大手の出光興産、さらに地元の九頭竜(くずりゅう)森林組合とニューチップ運送の4者が出資している。発電事業を始めるにあたり、森林組合とチップ加工業者が参加して燃料を安定調達できる体制を整えた。
燃料になる木材は森林で伐採した中でも、形や品質が悪いC材・D材と呼ばれる用途のない部分だ。このほかに近隣の製材工場などから出る端材などを加えて、年間に7~8万トンにのぼる未利用の木材をチップに加工して発電に利用する。

バイオマス50%超の小売電気事業者に売電

発電所に隣接して森林組合の貯木場とチップの製造施設も稼働している。貯木から発電まで一貫体制で効率よく事業を運営できる体制だ。発電した電力は固定価格買取制度を適用して小売電気事業者に売電する。年間の売電収入は12億円を見込んでいる。一方で発電所の建設費は40億円かかった。
売電先は出資者の出光興産が設立した小売電気事業者の出光グリーンパワーである。関東と関西の企業・自治体を対象に再生可能エネルギー(FIT電気)主体の電力を販売している。2015年度に販売した電力量のうち、再生可能エネルギーと廃棄物で発電した電力が62%を占めた。
2016年度から福井グリーンパワーのバイオマス発電による電力が加わり、販売量の78%を再生可能エネルギーと廃棄物発電で供給できる見込みだ。出光グリーンパワーは富山・滋賀・奈良・高知の4県の木質バイオマス発電所からも電力を調達して、全体の5割以上をバイオマスで供給する。小売電気事業者の中でもバイオマスの占める割合が極めて大きい。

株式会社Z-ONE

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