依田一義のエネルギー情報95

火力発電の問題点はCO2(二酸化炭素)の排出量が多いことに加えて、燃料を海外に依存していることにある。この2つの問題を解消する火力発電所が新潟県の長岡市に誕生する。電力に特化した投資ファンドを運営する大和証券系のIDIインフラストラクチャーズが「長岡火力発電所」の建設計画を決めた。
建設予定地は長岡市が開発した「西部丘陵東地区」の産業ゾーンにある1万7000平方メートルの区画だ。この場所から南へ5キロメートルほど離れた一帯の地中には、日本で最大の天然ガス生産量を誇る「南長岡ガス田」が広がっている。ガス田の生産設備から南北にパイプラインが延びているため、長岡火力発電所では近くを通るパイプラインから国産の天然ガスを燃料として利用できる。
発電能力は8万5800kW(キロワット)を想定している。火力発電所としては中規模だが、年間に340日稼働すると7000万kWh(キロワット時)を超える電力を供給することが可能だ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して約20万世帯分に相当する。長岡市の総世帯数(10万世帯)の2倍に匹敵する電力量になる。
長岡火力発電所は4月中に造成工事を開始して、1年後の2017年4月に発電設備の建設工事に着手する。運転開始は2018年7月を予定している。発電能力が15万kW未満の火力発電所には環境影響評価の手続きが不要なため、建設計画の決定から運転開始まで2年強で完了する早さだ。

天然ガス100%で発電効率は49.5%
発電した電力は全量を新電力のF-Power(エフパワー)が買い取る。F-Powerは最近の2年間で販売シェアを急速に伸ばして、2015年9月の時点では新電力の中でエネットに次ぐ第2位に躍進した。自社でも発電所を所有していて、千葉県で10万kW級、新潟県でも1万1600kWのガス火力発電所を運転中だ。新設の発電所を加えて東京電力・東北電力管内の供給力を拡大する。
長岡火力発電所は11基のガスエンジン発電機で構成する。川崎重工業が製造・販売する「カワサキグリーンガスエンジン」の高効率タイプを採用した。1基あたりの発電能力は7800kWになり、発電効率は49.5%である。
国内で稼働している従来型のガス火力発電所の発電効率は40%前後にとどまることから、それに比べて2割以上も効率が高い。最先端のコンバインドサイクル方式による大規模なガス火力発電所の発電効率は55~60%に達するが、それに次ぐ効率の良さで発電コストを抑えることができる。
燃料の天然ガスを供給する南長岡ガス田は帝国石油(現・国際石油開発帝石)が1984年に生産を開始した。地下4000~5000メートルの深さに広がるグリーンタフ(緑色凝灰岩層)の中に天然ガスが大量に貯留している。2013年度の生産量は12億Nm3(ノルマルリューベ)にのぼり、国内の天然ガス生産量の約4割を占める。

株式会社Z-ONE

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