依田一義の経済情報30

日新電機は、下水処理場を省電力化するシステムの事業化に乗り出した。センサーで、赤潮の原因となる窒素化合物の減少量を計測し、浄化装置の稼働を効率化して電気使用量を低減する。第1号案件をこのほど納入。来年度は売上高5千万円に事業拡大を図る。
新システムでは、下水処理層の出入口付近にアンモニア態窒素の量を測るセンサーをそれぞれ設置。監視制御装置で双方の量を比べて窒素の減り具合を確認しながら、処理用の送風機に必要な電力量を最適化して省エネを図る。送風機の電力量を10~15%削減し、年間600万円の経費を抑制できるという。
すでに、大和市北部浄化センター(神奈川県)に1820万円で初納入した。来年度は国内の処理場で2~3件の納入を見込む。
競合会社には日立製作所などがあるが、日新電機環境事業本部は「施設に応じた省エネ技術で独自性を出し、納入件数を増やしたい」としている。

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依田一義のエネルギー情報109

下水処理場で発生するバイオガスを活用した民設民営方式の発電事業が全国に広がっている。バイオマス(生物資源)を利用した発電事業は燃料の確保が課題だが、下水処理場のバイオガスであれば安定して調達しやすい。経済的な側面から見れば、下水処理場を所有する自治体は土地貸借料やバイオガスの売却益を、発電を行う民間事業者は売電収益を得られる。このように双方へのメリットがある点もバイオガス発電の拡大を後押ししている。

こうしたバイオガス発電事業を積極的に展開している1社が月島機械だ。下水処理場における汚泥処理や汚泥消化設備、ガス貯留設備や発電利用設備などに関するノウハウを強みに、全国8カ所でバイオガス発電事業を進めている。さらに2018年4月から、島根県松江市の「宍道湖東部浄化センター」でもバイオガス発電事業を開始する計画だ。2016年6月に島根県に本拠を置くカナツ技建工業と共同で、浄化センターを運営する鳥取県と事業契約を締結した。

発電を行う宍道湖東部浄化センターは、シジミの漁獲量が全国一位で知られる宍道湖(しんじこ)の近くに位置している。宍道湖東部に位置する松江市や安来市からの汚水を処理しており、処理した水は宍道湖に隣接する中海(なかうみ)へ放流している。宍道湖・中海の水質改善のため、窒素やリンの除去を目的とした高度処理運転も行っている処理場である。

この浄化センターの敷地内にガス発電設備を設置し「宍道湖東部消化ガス発電所」として発電事業を行っていく。合計出力759kW(キロワット)の発電設備を設置して、下水汚泥処理の過程で発生するメタンガスで発電する(図)。これまで発生したメタンガスは、一部を浄化センター内の燃料として利用していた。年間の発電量は、一般家庭1200世帯分の使用電力量に相当する430万kWh(キロワット時)を見込んでいる。

発電期間は2018年4月から20年間を予定する。発電した電力は固定買取価格制度を利用して電力会社に売電する予定だ。メタン発酵ガスを利用するバイオマス発電の場合、1kWh当たり税別39円の買取価格を適用できる。年間の売電額は1億6000万円以上になる見込みだ。

発電事業者である月島機械とカナツ技建工業は、この売電収益の中から消化ガスの料金や土地使用料、固定資産税などを島根県に支払う。民設民営方式のため、発電設備の設置費用や維持管理費は発電事業者側で負担する。つまり島根県は既にある資産を活用して、事業資金の投入や資産を所有することなく収益を挙げられる。県は得た収益を流域下水道事業に活用していく予定だ。

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