依田一義の経済情報49

日銀は28日、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀版コアコアCPI)の前年比上昇率が9月にプラス0.2%になったと発表した。下落は3カ月連続で、2013年9月の同ゼロ%以来の低水準となる。

日銀版コアコアCPIは、総務省が公表している消費者物価指数をもとに、変動の激しい生鮮食品とエネルギーを除いた指数を日銀が独自に試算したもの。物価の基調を反映する指標として重視している。

2015年12月に同プラス1.3%の直近ピークをつけて以降、下落基調となっており、8月は同プラス0.4%に低下していた。物価の基調も鈍化が鮮明になっているといえる。

総務省が公表した9月の全国消費者物価指数 (除く生鮮、コアCPI)は同マイナス0.5%となった。下落は7カ月連続で下、マイナス幅は8月と同水準だった。前年比でのエネルギー価格の下押しが小さくなりつつあるが、家電製品の価格下落や食品の上昇ペース鈍化が下押しに作用している。

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依田一義の不動産情報182

日銀は24日に公表した金融システムリポートで、大都市圏で高値取引の事例が見られるなどとして、不動産市場に「注意すべき動きが出てきている」と指摘した。日銀が大規模な金融緩和を始めて以降、不動産市場の過熱リスクに明確に言及するのは初めてとみられる。ただ、現状については「全体としては過熱した状況にはない」としている。

国内金融機関の不動産業向け貸し出しは全産業向けを上回るペースで増え続けている。大手行は大手建設会社などの資金需要に積極的に対応。また、地域金融機関は個人の資産管理会社や地元の不動産業者への貸し出しを積極化させている。

日銀は大都市圏で不動産価格が上昇する中、「一部に投資利回りが低水準となる高値取引の事例が見られる」と指摘。また、地方銀行が不動産投資信託(Jリート)への投資を積極化している点などに注意を促した。

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依田一義の経済情報39

日銀が24日発表した10月の主要銀行貸し出し動向アンケート調査によると、7~9月期の資金需要の強弱を示す指数(DI)は個人向けがプラス10と、7月の前回調査から4ポイント低下した。悪化は3四半期ぶり。日銀のマイナス金利政策導入後に増えた住宅ローンの借り換えが一服した。

一方、企業向けのDIはプラス6と7月調査から2ポイント上昇し、3期ぶりに改善した。今後3カ月間の見通しは企業向けがプラス3、個人向けがプラス4となり、いずれも7~9月期より悪化すると見込んだ。

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依田一義の経済情報38

日銀は平成29年度中としてきた2%の物価上昇目標の達成時期を先送りする検討に入った。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は21日、衆院財務金融委員会で「(達成時期の)修正もあり得ると思っている」と述べ、30年度以降にずれ込む可能性を示唆した。31日から開く金融政策決定会合で議論する。

また、黒田総裁は適正な金利水準について「すぐに変更があると考えることは難しい」とも述べ、追加緩和を見送る考えも示した。

達成時期の先送りは、個人消費の低迷などで物価上昇率が日銀の想定を下回っているためだ。日銀は時期を「30年度中」もしくは「早期に」とし、事実上の中長期目標に変更する可能性がある。黒田総裁が公式に物価目標修正を示唆したのは初めて。延期を決めれば、30年4月までの総裁任期中の達成はかなわなくなる。

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依田一義の不動産情報174

日銀は13日、9月の銀行や信用金庫の貸出残高(平均)が前年同月比2.2%増の502兆168億円になったと発表した。

60カ月連続の増加となり、2002年3月(501兆375億円)以来14年半ぶりに500兆円を超えた。

日銀のマイナス金利政策など大規模な金融緩和策で貸出金利が低下し、企業の合併・買収(M&A)や不動産業向けの融資が好調。相続税対策として賃貸住宅を建設する個人への貸し出しも増えた。ただ景気浮揚の鍵を握る設備投資向けは伸び悩んでいる。

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依田一義の経済情報④

日銀が3日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業非製造業の景況感の悪化傾向が示された。個人消費の停滞が影響するなどして、小売りの業況判断指数(DI)が4ポイント悪化のプラス7と悪化したためだ。消費者物価指数(生鮮食品除く)も8月まで6カ月連続で下落しており、デフレ再来の懸念が高まっている。

低価格品を重視する動きは、すでに外食産業に広がっている。日本マクドナルドは9月から平日の昼限定でハンバーガーとドリンクのセットで400円の「バリューランチ」を売り出している。従来に比べ100円安く、集客の起爆剤にしたい考え。牛丼大手の吉野家は4月、牛丼より50円安い「豚丼」を4年4カ月ぶりに復活。2カ月で1000万食を突破するなど消費者の支持を集める。20年に及ぶデフレで「物価は上がらない」との認識が企業、家計に染みついている。

日銀は9月の金融政策決定会合で物価上昇率2%が安定的に持続するまで金融緩和を続けることを決めた。だが、2%目標を達成するのは容易ではない。

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依田一義の経済情報②

日銀は 4日、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)における「企業の物価見通し」を発表した。企業が想定する消費者物価(CPI)の前年比上昇率は、平均で1年後がプラス0.6%、3年後がプラス1.0%、5年後がプラス1.0% となった。

前回調査では、1年後がプラス0.7%、3年後がプラス1.1%、5年後がプラス1.1%だった。

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依田一義の不動産情報164

日銀のマイナス金利導入後、不動産投資の流れが助長され、国土交通省がまとめた2016年都道府県地価調査では、住宅、商業、工業地を含む全用途の全国平均で下落幅が減少し、不動産がにわかに活況づいている。

住宅地に限ると、全国平均地価が前年比0.8%減とマイナス幅が0.2%改善。地方圏が前年比でマイナスに留まるなか、東京、大阪、名古屋の3大都市圏に限ると前年比0.4%アップとなった。中でも東京圏は変動率が0.5%増と前年と同じ伸び幅となり、底堅く推移している現状が浮かび上がった。東京圏の中でも、地価上昇が目立った地域をピックアップしながら、トレンドを探る。

東京都圏のうち、住宅地の地価変動率を各都県別にみると、東京都が前年比1.6%増となった。埼玉と千葉両県が同0.1%増とプラスを確保したが、神奈川県は同0.1%のマイナス、茨城県は同マイナス0.9%となった。特に東京都心部は、前年比3.9%増と前年の変動率3.8%増から若干の伸び率を上乗せして堅調に推移している。こうしたトレンドを下支えした変動率の上昇が大きかった住宅地のトップ10は次の通り。

■住宅地上昇率ランキングトップ10 千代田区の1人勝ち

1位 千代田区六番町6番1外(変動率11.3%) 基準地価格:363万円/平方メートル
2位 千代田区三番町9番4(変動率11.3%)  基準地価格:265万円/平方メートル
3位 千代田区二番町12番10(変動率10.4%) 基準地価格:202万円/平方メートル
4位 目黒区自由が丘二丁目123番8(変動率 8.5%) 基準地価格:101万円/平方メートル
5位 木更津市畑沢南3丁目2番10(変動率 7.7%) 基準地価格:2.8万円/平方メートル
6位 木更津市港南台2丁目10番13外(変動率7.3%) 基準地価格:2.95万円/平方メートル
7位 木更津市清見台南3丁目10番4(変動率7.2%) 基準地価格:4.18万円/平方メートル
8位 港区六本木五丁目367番1(変動率7.1%) 基準地価格:196万円/平方メートル
9位 千代田区麹町二丁目10番4外(変動率7.0%) 基準地価格:229万円/平方メートル
10位 港区青山四丁目487番(変動率6.8%) 基準地価格:157万円/平方メートル

変動率上位率の上位10地点のランキングは、トップ3を独占したのをはじめ、9位にもランクインした千代田区の1人勝ちの様相を呈した。日本の政治舞台でもある永田町を含む千代田区の上位3地点は、2ケタの変動率の伸びを記録した。トップの六番町は変動率に加え、1平方メートル当たり価格についても、住宅地としての全国で最高額の363万円となった。

千代田区では、桜の名所としても名高い千鳥ヶ淵周辺で億ションの供給が相次ぎ、三菱地所レジデンスが販売した「ザ・パークハウス グラン千鳥ヶ淵」は、上昇率2位にランクインした三番町に立地し、最高価格は3LDKの間取りで5億4,200万円。都心ながらも皇居を望む景観が堪能できることから人気を集め、申し込みは10倍にも達し、即日完売となった。また、このマンション以外にも、千代田区は高級物件数多く抱えている。「パークマンション千鳥ヶ淵」は、東京23区内のマンション値上がりランキングでトップ10にランクイン。千代田区内の住宅地変動率の伸びが昨年は5.8%だったが、2016年は10.0%と大幅に変動率が伸び、人気エリアを象徴するように、基準価格の上昇トレンドが続く。

トップ3に続いたのが、目黒区自由が丘。流行のカフェやショップなどが軒を連ね、賑わいをみせる一方、近年都心で人気の高層タワーマンションとは一線を画した閑静な低層住宅の街並みが支持を集める。目黒区も昨年の変動率3.6%から6.1%に伸び幅が拡大。また、トップ10には六本木や青山など不動の人気を誇るエリアを抱える港区の2地点もランクインした。

東京23区内の地点がランキングに並ぶなか、木更津3地点がトップ10に割って入った。特にアクアライン効果によるアクセスの向上が住宅需要を押し上げた。都心と比較してケタ違いの基準価格は、平均的なサラリーマン世帯には、マイホームを構える現実的な選択。新興土地区画整理地区内では、底堅い需要が周辺地価を上回る水準で推移している。

■富裕層向け、億ションがけん引

ランキングからも明らかになったように、高級住宅地の変動率の伸びが顕著に表れている。背景には住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置などを受け、住宅市場が好調に推移するなか、都心部で供給が相次ぐ億ションが投資や相続目的に、富裕層の人気を集める。また、外国人投資家からの需要も地価上昇を下支えする。一方で、木更津市のように、都心とのアクセスの改善によって人気が高まるエリアも誕生し、念願のマイホームの夢を叶えるのに、現実的でポテンシャルを秘めたエリアも登場しつつある。

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依田一義の不動産情報13

日銀が導入した「マイナス金利政策」の影響で、銀行の住宅ローン金利の引き下げ競争が一段と活発化している。目安となる10年固定型金利は1%割れが主流となっている。
ただ、「申し込みの大半は借り換え需要」といい、景気底上げにどれだけ効き目があるかは未知数だ。
三井住友信託銀行は1日から、10年固定型の最優遇金利を同行として過去最低の年0.5%に引き下げた。大手5行の店頭金利では最も低い水準だ。
0.7%を適用していた2月には、借り換えの相談件数は1月から約4倍に急増した。
三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行の3メガ銀行も今月から、10年固定型の最優遇金利を年0.8%に引き下げた。
三菱UFJでは、住宅ローンの申込件数が2月は前月から倍増し、「支店が週末に実施している相談会は予約が取りにくくなっている」ほど関心が集まっているという。
三井住友銀行の2月の申込件数は新規が前月比約1.5倍、借り換えが約3.8倍に増えた。みずほ銀行も2月の借り換えの問い合わせ件数が前月から2倍に増えた。
また、りそな銀行は借り換えの申込件数が6.3倍に増加。特に、「2月に始めた0.5%の金利を適用するインターネット専用プランが好評」(同行)という。
住宅ローン金利の引き下げ競争は、地方銀行にも広がっている。このうち横浜銀行では、電話の相談受付件数が2月は1月の約2倍に伸びた。
国土交通省によると、1月の新設住宅着工戸数は前年同月比0.2%増の6万7815戸となり、2カ月ぶりに増えた。
今後、住宅ローン低下の恩恵が、実際にどれだけ出てくるのか注目される。
ただ、「既に金利の低い状況が長く続いていて、全体の借り換え需要自体が減少傾向にある」(大手行関係者)との指摘も出ている。

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マイナス金利、業界に〝追い風〟吹くか 日銀・金融緩和策 ローン金利、更に低水準へ

日本銀行が発表した「マイナス金利」の追加金融緩和策が、不動産業界に〝追い風〟をもたらすか注目されている。

業界が「有力な融資先」として金融機関に選別されることが予想され、また、住宅ローン金利の引き下げも想定されるからだ。

今回のマイナス金利は、需要側(一般消費者)、供給側(事業者)双方への好材料となりそうな気配だが、今後の動向などについて専門家らに話を聞いた。

129日の日銀によるマイナス金利導入発表後、その日のうちに不動産関連株は値上がりを見せ、東証リート指数は21日以降、1800ポイント台の水準となっている。

不動産業界への好気配を市場が即座にキャッチした格好だ。

その後、株価は全体的に乱高下を繰り返している状況だが、今回の「マイナス金利」が不動産業界へ好影響を及ぼすのではないかと指摘されている要因は、

業界特有の「レバレッジ効果」だ。特にディベロップメント事業においては、資金の借り入れによりその効果が何倍にも引き上がる効果があるため、

金融機関にとっては有力な融資先となり、業界にとっても低金利の資金調達によりこれまで以上のレバレッジ効果が期待できることとなる。

その好循環で更に業界へと資金が流れることになり、これはJリートの世界でも同様だ。

 

専門家の見方は冷静

 

ただ、専門家は比較的冷静な見方をしている。マクロ経済が専門の富士通総研・米山秀隆上席主任研究員は、

「有望な新規開発案件が残っていれば融資先としての可能性はある。ただ、オリンピックまでの開発案件の多くは既に仕入れが終わっている状況だ。

資材や用地取得価格が高止まりの中、新プロジェクトを考える事業者、そして金融機関にとって魅力的な開発と映る事案が出てくるかどうかは不透明」と話す。

ただ、融資先を模索する金融機関にとっては、不動産業界は一つの大きな選択肢であることに変わりはなく、更に住宅ローン金利が引き下げ方向に向かうことは

「一般消費者の住宅取得能力が上がることになる」(米山氏)ため、業界にとっては好材料となる。マンション動向に詳しい不動産経済研究所の松田忠司企画調査部主任研究員は、

「マンション業界に資金が流れれば用地取得も積極化し、近年敬遠され気味だった郊外エリアでの供給が増える可能性もある」と指摘する。

そして、「消費増税を前にしたこのタイミングで、住宅ローン金利が下がる傾向になることは一般消費者の大きなメリットになる」としている。

今回のマイナス金利政策は、一般消費者にとっては「住宅ローン金利の引き下げ期待」といった形で表れる。

金融機関が住宅ローン金利を決める際の一つの大きな指標となる「10年国債利回り」が低下するためだ。

129日には金融機関などによる国債購入の買い優勢の影響で価格が上昇し、金利は0.095%となり史上初の0.1%台を割り込む結果となった。

住宅ローンの金利はこれまでも「史上空前の低金利」とされてきたが、国債利回りがこれまで以上に低水準となることから、住宅ローンは更なる低金利のステージへと入ることが予想される。

 

10年固定は1.05%

 

 21日の住宅金融支援機構の発表では、長期固定型住宅ローン「フラット35」の2月適用金利(融資率9割以下)を前月比0.06%下回る1.48%とした。

また、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行は、主力の10年固定型住宅ローンの金利(最低水準)1.05%とした。

みずほ銀行を除く3行が1月と比べて0.05ポイント引き下げたが、日銀の今回の発表が129()の月末午後だったことを考えると、

2月の各金融機関の住宅ローン金利にはまだまだ反映されていないことが予想される。3月以降は更なる引き下げも期待されるところだ。

 

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