依田一義の経済情報37

トヨタ自動車は21日、水素を使って走る燃料電池(FC)バスを2017年初めから販売すると発表した。FCバスの市販は日本で初めて。走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない環境性能や、排気音のない静かさをアピールし、20年に100台以上の販売を目指す。

FCバスは水素と酸素の化学反応で生じる電気でモーターを駆動する。搭載した高圧水素タンク10本の内容積は計600リットルで、1回の水素充填(じゅうてん)で200キロ以上を走行できる。停電時には避難所などの電源としての使用も可能だ。定員は77人で、販売価格は約1億円。東京都が2台導入し、3月頃に路線バスとして運行する予定。

トヨタは14年12月にセダン型の燃料電池車(FCV)「ミライ」を発売した。FCバスはミライの燃料電池技術などを活用し、グループの日野自動車と共同開発。18年には新型車も投入し、FCバスの普及を目指す。

株式会社Z-ONE

依田一義のエネルギー情報94

リサイクルが難しいアルミと紙、プラスチックによる複合廃材から水素を製造できる実証プラントが完成した。リサイクル事業を手掛けるアルハイテック(富山県高岡市)が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」のもとで開発を進めていたシステムで、朝日印刷(富山県富山市)の富山工場内に設置した。2016年4月22日から実証稼働が始まっている。
朝日印刷の富山工場は医薬品パッケージを生産する同社の基幹工場で、製造過程で発生するアルミ複合廃材を原料として利用する。こうした複合廃材は一般的にリサイクルが難しく、焼却や埋め立てなどの方法で処分されることが多い。
実証プラントの主要構成機器はパルパー型分離機、乾留炉、水素発生装置の3つ。まず、複合廃材を高速回転するパルパー型分離機に投入して、紙(パルプ成分)を取り出す。次にアルミとプラスチックの状態になった廃材を、乾留炉で加熱してガス・オイルと、高純度のアルミに分離する。最後に回収したアルミを水素発生装置に投入し、アルハイテックが独自開発した特殊アルカリ溶液と反応させて水素を製造する仕組みだ。
乾留炉と水素発生装置は、こちらもNEDOプロジェクトの一環として独自開発を進めてきたものだ。乾留炉ではエネルギー効率を向上させるために、電気式の加熱ではなく、プラスチックの乾留(蒸し焼き)によって発生するガスを燃焼させ、その熱を利用する熱風式だ。1時間あたり90キログラムのアルミとプラスチックの複合廃材を処理できる。
水素発生装置は反応槽にアルミの追加投入ができないという既存装置の課題を、材料形状と供給装置の構造を工夫することでクリアした。連続的に水素を発生させることが可能になり、現時点で1時間当たり2キログラムの水素製造能力を確認している。この水素を燃料電池で発電すると50kW(キロワット)程度の電力になり、工場のエネルギーとして活用する。水素の製造能力は今後継続する実証の中で5キログラムまで引き上げる計画だ。

●水素以外の「副産物」も活用してさらに省エネに

実証システムの大きな特徴が、水素製造過程の中で水素以外の再利用可能な素材やエネルギーを回収できる点だ。最初の分離過程で回収できる紙はトイレットペーパーなどに、オイルやガスは工場で必要な熱源として活用できる。水素と燃料電池で発電した電力ともに活用することで、工場のさらなる省エネに貢献できる。
最後の水素発生工程では水酸化アルミニウムが残るが、これは吸着剤や充填剤などの原料となる成分だ。実証ではこうした水素以外の副産物の再利用と、その経済性についても検証を進めていく。また、製造した水素は将来に向け、水素ステーションでの利用も検討していくという。
今後アルハイテックではこうした実証システムの性能や技術的課題、省エネルギー性能の検証を引き続き実施していくとともに、国内外を問わず、導入顧客となり得る印刷工場、パッケージ工場、金属工場などに対して実証システムの販売も目指していくとしている。

株式会社Z-ONE

依田一義のエネルギー情報35

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽エネルギーを利用、光触媒による水から水素を製造できる、2種類の粉末状の光触媒を用いた混合粉末型光触媒シートを開発したと発表した。
人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)、東京大学、TOTOとともに開発したもので、太陽エネルギー変換効率1.1%を達成した。
開発した混合粉末型光触媒シートは、水中に沈めて太陽光を当てるだけで、水を分解して水素と酸素を発生させることができる。シンプルな構造で、大面積化と低コスト化に適しているため、安価な水素を大規模に供給できる可能性がある。
実用化を目指したプロセス開発も同時に行い、大量生産可能なスクリーン印刷法を利用した混合粉末型光触媒シートの塗布型化にも成功した。
今回の研究成果は、英国科学誌「Nature Materials」のオンライン速報版で公開された。

株式会社Z-ONE

依田一義のエネルギー情報32

トヨタ自動車や東芝は14日、神奈川県と協力し、風力発電で製造した水素を燃料電池フォークリフトに供給する実証実験を今秋に開始すると発表した。二酸化炭素(CO2)を排出しない水素のサプライチェーン(供給網)モデルを構築するのが狙いだ。政府も2020年東京五輪で「水素社会」を世界にアピールしようとしており、こうした実証実験が各地で広がってきた。
「水素社会の実現には安定供給するサプライチェーンが重要になる。神奈川県での取り組みを日本各地のモデルケースにしたい」。横浜市で同日開かれた低炭素水素活用実証プロジェクトの記者会見で、こう意気込むのは燃料電池車「ミライ」を発売するトヨタの友山茂樹専務役員だ。
今回の実証実験は環境省の委託事業で神奈川県や横浜市、川崎市、トヨタ、東芝、岩谷産業の6者が協力して実施する取り組みだ。
具体的には、横浜市の風力発電所の電力で水を電気分解し、CO2を排出しない水素を製造。この水素を蓄電池システムや貯蔵・圧縮するシステムを使って、天候に左右されずに安定供給するという。
さらに、水素を簡易水素充填(じゅうてん)車で輸送し、横浜市や川崎市の工場などの燃料電池フォークリフトで使用するという流れだ。
トヨタの友山専務役員はこのサプライチェーンの構築で「電動フォークリフトよりも80%以上のCO2を削減できる」と話す。
ただ、課題は水素の運用コストだ。環境に優しくてもコストが膨らめば、普及は見込めない。岩谷産業の竹本克哉取締役は「実証実験を通じて細かくコストを検証したい」と語った。
6者は今秋から試験運用を開始。17年度から、全てのシステムを稼働させ、4施設で計12台の燃料電池フォークリフトを使い、本格運用する。実証実験は18年度まで行う。
こうした水素を活用した実証実験が全国各地で広がっている。トヨタと愛知県は17年度から燃料電池車の燃料として廃熱を利用して製造した水素を供給する実証実験を始める。
川崎重工業や岩谷産業も新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、20年をめどに神戸市で船を使った水素の海上輸送や陸揚げの実証実験を行う予定だ。
水素社会の実現には国内外での製造・貯蔵・輸送といったサプライチェーンの構築が欠かせない。政府は全国各地での実証実験を後押しし、東京五輪に向けて日本の水素インフラを世界に発信したい考えだ。

株式会社Z-ONE

依田一義のエネルギー情報

JX日鉱日石エネルギーは2月23日、神奈川県横浜市に「横浜IKEA港北水素ステーション」(移動式)を開所し、水素の販売を開始したと発表した。
同ステーションは、横浜市とIKEA港北の協力を得て、IKEA港北の敷地内に開所。大型商業施設では国内初の水素ステーションとなる。営業日は火曜および木曜で、営業時間は11時から13時。
同社は、次世代自動車振興センター「燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」の採択を受けて、四大都市圏に約40か所の商用水素ステーションの開所に向けた準備を進めている。 これまで、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県に17か所の水素ステーションを順次開所し、水素販売を開始しており、同ステーションの開所で、合計18か所になる。

株式会社Z-ONE