依田一義のエネルギー情報179

電力・ガス取引監視等委員会が小売電気事業者からの報告をもとに集計した2016年8月の販売電力量によると、新電力のシェアは過去最高だった7月と同様に7.9%だった。ただし企業・自治体向けの特別高圧・高圧では11.0%(前月10.9%)に、家庭・商店向けの低圧も2.2%(同1.8%)に伸びて、小売全面自由化が始まった4月から増加傾向が続いている。
地域別に見ると北海道・東京・関西で新電力の伸びが目立つ。特別高圧・高圧では関西が最も高くて17.1%まで拡大した。次いで北海道が16.2%、東京が15.6%で、その他の7地域は10%を下回っている。低圧は東京で3.9%まで上昇したほか、関西で2.8%、北海道で2.1%まで拡大した。地域による差がますます開いている。

新電力同士の競争も激しさを増してきた。すでに小売自由化から16年を経過した特別高圧・高圧では引き続きエネットがトップの座を死守しているものの、2015年まで50%程度のシェアを維持していた状況から20%までシェアを落とした。エネットはNTTファシリティーズ・東京ガス・大阪ガスの3社が2000年に共同で設立した新電力の草分け的な存在だ。

エネットを激しく追うのは独立系のF-Powerでシェアを13%まで伸ばした。続く3番手以降は販売電力量に大きな差はなく、大手の丸紅新電力、JXエネルギー、オリックスの順だ。そうした中で東京ガスが前月の10位から6位へ急上昇した。特に低圧の販売電力量では32.5%のシェアを獲得してトップになっている。特別高圧・高圧のエネットと合わせて3部門すべてで1位を占めた。

低圧の上位の顔ぶれは特別高圧・高圧と大きく違う。第2位には大阪ガスが入り、次いでKDDI、JXエネルギーの順に一般の知名度が高い大手の企業が並ぶ。第5位のサイサンは埼玉県を中心にガス事業を展開している。第11位に入った大阪いずみ市民生活協同組合は大阪府南部に約50万人の組合員を抱える強みを発揮して電力の販売量を拡大中だ。

株式会社Z-ONE