依田一義の経済情報29

パナソニックと仏シュナイダーエレクトリックは2016年10月11日、HVAC(暖房、換気および空調)設備やビルマネジメントシステムの開発・営業に関し、戦略的提携を行うと発表した。

パナソニックのVRF(ビル用マルチエアコン)が無線通信規格「ZigBee」経由でシュナイダーエレクトリックのビルマネジメントおよびルームコントローラーに直接通信できるようにし、高度なワイヤレスソリューションを提供することが可能となるという。ビルオーナーやビル管理者はHVACや照明、セキュリティ、配電などのビルに関するさまざまな基幹システムを1つのインタフェースで常時把握できるようになる。

今回の提携に関してパナソニック役員兼エアコンカンパニー社長の高木俊幸氏は「当社は業務用および住宅用空調に重点的に投資し、客のニーズに全力で応えてきた。今回の提携を通じてビルエネルギーマネジメントにさらなるベネフィットを提供できるようになる。ビルマネジメントに最先端のVRF技術を組み合わせることで、客の初期投資と運用コストの削減や次世代のサスティナビリティをサポートできるようになる」とコメントしている。

シュナイダーエレクトリックエコビルディング部門担当上級副社長のローラン・バタイユ氏は「今回の提携により、デバイスからクラウド、ビルの種類・サイズを・築年数を問わない、完全なビルマネジメントを提供することができる。この強力なデジタルバックボーンはビル環境の一層の可視化を実現するとともに、ビルに未来をもたらす重要な要素だ」と述べた。なお、提携はグローバルで行うが日本は除くとしている。

両社の共同ソリューションの特徴は無線と優先のどちらでも導入が可能なところにある。無線では既存のインフラをそのまま利用でき、既築のビルを改良する場合に用いやすい。一方、有線は高度なプラグアンドプレイ技術の優位性をフル活用し、広範囲にわたるVRFシステムを簡略化することや、スタンドアロンでの導入も可能だ。導入も容易でSI(システムインテグレーター)の作業時間やコストを削減できる。

パナソニックのVRFシステムはインバーター技術に強みを持ち、これによりエネルギー効率を高めることでSEER(欧州季節エネルギー効率比)の達成に貢献するなど、商業ビルでの普及が進んでいるという。また、最低マイナス25度から最高52度までの過酷な環境下でも運転できる冷暖房性能を備えている。

シュナイダーエレクトリックはエネルギーマネジメントとオートメーションの世界的大手企業。グループ全体の従業員数は16万人で、2015年の売上高は270億ユーロに達する。同社のビルマネジメントソリューション「SmartStruxure」はハードウェア、ソフトウェア、エンジニアリング、導入、サービスをビルのライフサイクルに合わせてカスタマイズすることで、効果的なエネルギー管理が可能。効率の最大化と運用コストの削減を実現する。このソリューションはさまざまな情報から実行可能な解決策をリアルタイムで提供するため、ビル管理者はエネルギーマネジメント最適化のための効率的な判断ができるとしている。さらに同社のSE8000シリーズルームコントローラーを組み込むことで、サーモスタット/温度センサーとの組み合わせが可能となり、HVACシステムのエネルギー使用量を最適化することで運転コストの削減に貢献する。

競争が加熱するビル空調市場

パナソニックの空調(エアコン)事業の2015年度売り上げは4654億円。同社はこれを2018年度に6500億円~7000億円近くまで引き上げる方針だ。同社の場合、国内市場などで高いシェアを誇るルームエアコンが売り上げ全体の4分の3を占めており、今後売り上げを伸ばすためにも業務用(大型空調)の強化が大きな課題となっている。またグローバルで通用する空調事業体の実現も目指しており、今回の提携はその一環とみられる。

パナソニックの見通しでは、グローバルの空調機器の市場規模は2014年度の10兆6000億円から2018年度には13兆5000億円へ拡大が予想される。特にビル空調に関しては高い伸びが見込まれており、この成長市場を巡って日系の大手メーカーが欧米のビルオートメーションの大手企業との合弁、提携の動きが相次いでいる。

2014年10月には東芝が米国のビルソリューションや産業システムを手掛ける大手メーカーであるユナイテッドテクノロジーズ社と業務用空調事業における戦略的提携について合意した。これにより東芝とUTC傘下のキヤリア社が出資する空調メーカーの東芝キヤリア(TCC)は業務用空調システムを中心に提携後10年間で、年間売上高を倍増することを目指している。また、2015年10月には日立製作所および日立アプライアンスが、ジョンソンコントロールズとの合弁会社であるジョンソンコントロールズ日立空調を設立し業務を開始している。ジョンソンコントロールズはビルのエネルギー効率や運用効率を最適化する製品を開発する米国の大手企業だ。

これらの合弁・提携の動きの背景には新技術との連携による新しい分野への進出とともに海外の各地域市場での販売力強化などの狙いがある。

株式会社Z-ONE

依田一義の不動産開発情報23

パナソニック、野村不動産などは28日、横浜市港北区の綱島地区で開発を予定している「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」の詳細を発表した。
マンションやショッピングセンター、企業の研究拠点などの施設に対して、東京ガスがエネルギーを一括で供給。施設間で互いに融通し合うなどして効率的に使い、
二酸化炭素(CO2)の排出量削減にもつなげるという。
2018年オープンをめどにした計画は昨年3月に発表済み。この日は、施設内にエネルギーセンターを設置し、東京ガスがコージェネレーションシステムを導入することや、
JXエネルギーが水素活用拠点をつくることなどを公表した。京都議定書発効直後の05年度比でCO2排出量を40%削減する目標を掲げた。
“街”をつくるための約3万7900平方メートルの敷地は、旧松下通信工業(現パナソニック)が工場を建設し、通信・無線機器などを製造していたが11年に閉鎖した。
パナソニックの津賀一宏社長は28日の会見で、「かつて工場として産業発展に貢献した土地を活用し、まちづくりで新たな貢献を果たしたい」と強調。同社にとって、
14年に開設した神奈川県藤沢市に続くスマートタウンとなる。野村不動産や東京ガス、技術開発拠点をつくる米アップルなどと設立した協議会が開発を進める。

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