依田一義の不動産情報165

JR大津駅(大津市春日町)に1日、カフェやカプセルホテルが一体となった店舗を中心とする複合商業施設「ビエラ大津」が開業した。同駅舎としては1975年以来、初めてのリニューアルで「駅利用者が街中に流れ出る拠点」としての機能を重視し、大津駅観光案内所を新設した。初日は案内所を始め、各テナントに行列ができた。案内所には5カ国語を話すスタッフが常駐し、無料レンタサイクルを設置。地元商店のクーポン券を配布するコーナーなども設けた。今後、地域住民らと協力しながら、街中ツアーやマラソンイベントの企画などにも取り組んで行く。
■まちの魅力広がり期待
滋賀県の玄関口なのに寂れている-。JR大津駅周辺の衰退ぶりは、長年、地域住民や来訪客から指摘され続けてきた。駅のリニューアルを地域一帯のにぎわいづくりにつなげられるのか。まちづくりに取り組む住民らは期待と不安を抱きつつ、知恵を絞り始めた。
大津市中央2丁目でジャズバーを営む神之口令子さん(60)は、生まれ育った大津駅一帯の衰退ぶりを肌で感じてきた。なんとか地域を盛り上げようと、仲間とともに2009年から大津駅一帯でジャズフェスティバルを開催。イベントは成功し、毎秋の風物詩となった。しかし、日常的なにぎわいが戻ったわけではない。それだけに「おしゃれになった駅にお客さんが取られるのではと、戦々恐々という面もある」とも。
神之口さんは今、駅まで来た客が街に出ようと思う仕掛けづくりを考えている。目指すのは「毎日、どこかで生演奏が聴けるまち」だ。駅のリニューアルを絶好の機会と捉え、ジャズフェスに協力する飲食店などで定期的に演奏会を開けないか、構想を練る。玄関となる駅には「音楽やパフォーマンスを毎日披露できる舞台があれば」と、新たな役割に期待を寄せる。
まちの魅力を高め、にぎわいを取り戻そうとする動きも出ている。6月に空き町家の活用を目指す若者たちが立ち上げた「まち波」も、その一つだ。
市中心部は古来宿場町として栄え、古くからの街並みが残る。一方で、昔ながらの町家約1600軒のうち約200軒が空き家で、日々、駐車場やマンションに変わっている。
まち波は町家の価値を再発見しカフェや一棟貸しの宿などに活用できないか、家主やスポンサー企業を訪ね歩く地道な活動を続けている。共同代表でまちおこし会社「百町物語」企画部長でもある紀平健介さん(36)は「町家をうまくつかえば地域全体の価値を上げることができ、企業の投資意欲もわくはず」と活動の意義を語る。駅から街中を回遊し、町家、自転車、琵琶湖などをからめたツアーの企画も始めている。
大津に宿泊する観光客は「目的は京都観光」という人が多いとされる。「京都の磁力に負けるのか、大津のまちをブランド化して引き込むのか、そこが試されている」と紀平さん。行政のかじ取りが大きな役割を担うと考えており「大津市は、まちの文化価値を理解してくれる層に狙いを定めた観光政策を打ち出してほしい」と望んでいる。

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依田一義の不動産情報164

日銀のマイナス金利導入後、不動産投資の流れが助長され、国土交通省がまとめた2016年都道府県地価調査では、住宅、商業、工業地を含む全用途の全国平均で下落幅が減少し、不動産がにわかに活況づいている。

住宅地に限ると、全国平均地価が前年比0.8%減とマイナス幅が0.2%改善。地方圏が前年比でマイナスに留まるなか、東京、大阪、名古屋の3大都市圏に限ると前年比0.4%アップとなった。中でも東京圏は変動率が0.5%増と前年と同じ伸び幅となり、底堅く推移している現状が浮かび上がった。東京圏の中でも、地価上昇が目立った地域をピックアップしながら、トレンドを探る。

東京都圏のうち、住宅地の地価変動率を各都県別にみると、東京都が前年比1.6%増となった。埼玉と千葉両県が同0.1%増とプラスを確保したが、神奈川県は同0.1%のマイナス、茨城県は同マイナス0.9%となった。特に東京都心部は、前年比3.9%増と前年の変動率3.8%増から若干の伸び率を上乗せして堅調に推移している。こうしたトレンドを下支えした変動率の上昇が大きかった住宅地のトップ10は次の通り。

■住宅地上昇率ランキングトップ10 千代田区の1人勝ち

1位 千代田区六番町6番1外(変動率11.3%) 基準地価格:363万円/平方メートル
2位 千代田区三番町9番4(変動率11.3%)  基準地価格:265万円/平方メートル
3位 千代田区二番町12番10(変動率10.4%) 基準地価格:202万円/平方メートル
4位 目黒区自由が丘二丁目123番8(変動率 8.5%) 基準地価格:101万円/平方メートル
5位 木更津市畑沢南3丁目2番10(変動率 7.7%) 基準地価格:2.8万円/平方メートル
6位 木更津市港南台2丁目10番13外(変動率7.3%) 基準地価格:2.95万円/平方メートル
7位 木更津市清見台南3丁目10番4(変動率7.2%) 基準地価格:4.18万円/平方メートル
8位 港区六本木五丁目367番1(変動率7.1%) 基準地価格:196万円/平方メートル
9位 千代田区麹町二丁目10番4外(変動率7.0%) 基準地価格:229万円/平方メートル
10位 港区青山四丁目487番(変動率6.8%) 基準地価格:157万円/平方メートル

変動率上位率の上位10地点のランキングは、トップ3を独占したのをはじめ、9位にもランクインした千代田区の1人勝ちの様相を呈した。日本の政治舞台でもある永田町を含む千代田区の上位3地点は、2ケタの変動率の伸びを記録した。トップの六番町は変動率に加え、1平方メートル当たり価格についても、住宅地としての全国で最高額の363万円となった。

千代田区では、桜の名所としても名高い千鳥ヶ淵周辺で億ションの供給が相次ぎ、三菱地所レジデンスが販売した「ザ・パークハウス グラン千鳥ヶ淵」は、上昇率2位にランクインした三番町に立地し、最高価格は3LDKの間取りで5億4,200万円。都心ながらも皇居を望む景観が堪能できることから人気を集め、申し込みは10倍にも達し、即日完売となった。また、このマンション以外にも、千代田区は高級物件数多く抱えている。「パークマンション千鳥ヶ淵」は、東京23区内のマンション値上がりランキングでトップ10にランクイン。千代田区内の住宅地変動率の伸びが昨年は5.8%だったが、2016年は10.0%と大幅に変動率が伸び、人気エリアを象徴するように、基準価格の上昇トレンドが続く。

トップ3に続いたのが、目黒区自由が丘。流行のカフェやショップなどが軒を連ね、賑わいをみせる一方、近年都心で人気の高層タワーマンションとは一線を画した閑静な低層住宅の街並みが支持を集める。目黒区も昨年の変動率3.6%から6.1%に伸び幅が拡大。また、トップ10には六本木や青山など不動の人気を誇るエリアを抱える港区の2地点もランクインした。

東京23区内の地点がランキングに並ぶなか、木更津3地点がトップ10に割って入った。特にアクアライン効果によるアクセスの向上が住宅需要を押し上げた。都心と比較してケタ違いの基準価格は、平均的なサラリーマン世帯には、マイホームを構える現実的な選択。新興土地区画整理地区内では、底堅い需要が周辺地価を上回る水準で推移している。

■富裕層向け、億ションがけん引

ランキングからも明らかになったように、高級住宅地の変動率の伸びが顕著に表れている。背景には住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置などを受け、住宅市場が好調に推移するなか、都心部で供給が相次ぐ億ションが投資や相続目的に、富裕層の人気を集める。また、外国人投資家からの需要も地価上昇を下支えする。一方で、木更津市のように、都心とのアクセスの改善によって人気が高まるエリアも誕生し、念願のマイホームの夢を叶えるのに、現実的でポテンシャルを秘めたエリアも登場しつつある。

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依田一義の不動産情報163

アットホームの調査によると、8月の首都圏における新築戸建て住宅の平均成約価格は3403万円(前年同月比1.1%上昇)で、10カ月連続で上昇した。全エリアで上昇しており2カ月連続。前月比も3カ月ぶりに上昇した。東京23区の平均価格は5061万円(前年同月比11.6%上昇)と再び5000万円を超え、10カ月連続上昇。前月比も再び上昇に転じた。神奈川県は前年同月比14カ月連続上昇、埼玉県は同9カ月連続上昇となったが、前月比は共に下落。千葉県では前年同月比3カ月連続の上昇、東京都下は同2カ月連続の上昇となった。

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依田一義の不動産情報162

国土交通省の調査によると、16年8月の新設住宅着工戸数は8万2242戸だった。前年同月比2・5%増で、2カ月連続の増加となった。持家は2万6341戸(前年同月比4・3%増)で7カ月連続の増加。貸家は3万6784戸(同9・9%増)と10カ月連続の増加。分譲住宅は1万8509戸(同12・7%減)で、内訳はマンションが6815戸(同33・1%減)、戸建てが1万1401戸(同5・9%増)。

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依田一義の不動産情報161

アットホームの調査によると、8月の首都圏における居住用賃貸物件成約数は1万4271件で、前年同月比10.8%減となり、6カ月連続のマイナスとなった。2カ月連続全エリアでの減少となったが、埼玉県は2カ月とも前年増の反動であって、他エリアに比べ堅調。また、郊外エリアでの増加が目立つ新築アパートでは、シングル向きが同2年8カ月連続増と好調に推移している。東京23区は6557件で、同12.3%減と同6カ月連続の減少。千葉県は同3カ月連続、埼玉県は同2カ月連続の減少、神奈川県も減少した。

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依田一義の不動産情報160

工務店のリヴ(京都府向日市)が全国でも珍しい木造高層ビルの建設事業に力を入れている。今月上旬に阪急洛西口駅前(同市)に完成した本社ビルを皮切りに、さらに3棟を京都府内で計画する。政府は2020年の東京五輪を機に、国産木材の利用を促進する方針を掲げており、先進例として注目される。
完成した本社ビルは5階建て、延べ床面積約千平方メートル。シェアオフィスや子育て支援スペースなどもある。1階は鉄筋コンクリート造り、2~5階は木造の2×4(ツーバイフォー)工法で建設した。木材は石こうボードでくるみ、耐火性を向上させた。
総工費は約2億円。同社は工務店のため大工職人を活用し、さらに自社設計や住宅用資材を導入したことで経費を大幅に削減した。1坪当たりのコストは鉄筋コンクリートより20万円ほど安い76万円で済んだという。
今後も木造の大型施設の受注建設に注力する方針で、京都市下京区で商業用ビル、伏見区で介護施設、長岡京市でホテルの計画があるという。
同社は「工務店のノウハウを生かし、ゼネコンとも競合せず、建設できた。林業振興にもつながるため、年2~3棟のペースで建設したい」と意気込む。
政府も東京五輪の関連施設整備で、積極的に国産木材を活用する方針。今後は木造施設の規制緩和や整備が進むと見られているが、京都府内では木材の供給面で課題もある。同社は「本社ビルは全て府内産材で建設する予定だったが、一部は他県産に頼らざるを得なかった」と京都産木材の流通の少なさを指摘する。
府は増量に向けて大型木材加工場の整備を掲げるが、実現していない。同社は「京都の木を地産地消できるのが望ましく、早く供給体制を整えてほしい」と求めている。

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依田一義の不動産情報159

プロロジスはこのほど、9月末に竣工予定の大規模物流施設「プロロジスパーク茨木」(大阪府茨木市)について、ニトリと約13万平方メートルの賃貸借契約を結んだ。6階建施設の1~5階部分で、延べ床面積の約8割に当たる。ニトリの物流子会社であるホームロジスティクスが11月から来年1月にかけて段階的に入居する。先進的な施設性能や事業継続性、西日本全域にアクセスしやすい立地などが評価されたという。
同施設は、供給が少ない関西内陸部に開発中のマルチテナント型。延べ床面積は18万9000平方メートルで関西最大級。同社にとっては国内最大規模となる。

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依田一義の不動産情報158

東京カンテイが発表した8月の中古マンション価格(70平方メートル換算、売り希望価格)によると、首都圏は前月比0.8%上昇の3521万円となり、8カ月連続で上昇した。都県別に見ると東京都は前月に上昇一服となっていたが、同0.5%のプラスと再び上昇した。東京23区では前月から横ばいの5279万円で、上値が重い展開。神奈川県、埼玉県ではいずれも1%未満ではあるが上昇し、緩やかな上昇傾向を維持。一方、千葉県は横ばいとなっており、県内でも堅調なのは市川市や船橋市など都心寄りの一部エリアに限られている。

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依田一義の不動産情報157

国土交通省による不動産情報のIT化の取り組み動向

物件探しといえば、一昔前までは不動産業者の店舗の壁に貼り出してある賃貸・売買物件を見て、気に入った物件があれば店舗に入って商談し、気に入れば申し込みをするというスタイルが一般的でした。しかしインターネットが普及した現代においては、ネットで物件を探してから店舗へ行くスタイルが主流です。

これまで不動産に関する情報について、不動産業者と一般消費者との間には、大きな情報格差がありました。しかし、これもインターネットの普及により、一般消費者でも物件情報の収集が容易になり、情報格差は縮まっています。

こうした背景の中、不動産業を管轄する国土交通省(以下、国交省)においても、ITを活用して不動産業の発達、改善を図ろうとする動きがあります。今回はその中から代表的な2つのテーマについて見ていきたいと思います。

■1. 不動産の取引価格情報等の提供

国交省では、不動産市場の信頼性・透明性を高め、不動産取引の円滑化と活性化を図るため、2006年4月から不動産購入者に実施したアンケートを基に、実際の取引価格などの情報を四半期ごとにインターネットで公表しています。
不動産の取引価格情報(http://www.land.mlit.go.jp/webland/)

上記サイトでは、アンケートの結果を地域毎に一覧表形式で閲覧することができます。所在地、取引時期、取引価格はもちろん、土地の面積、形状、建物の用途、構造、床面積、建築年、前面道路、最寄り駅、都市計画、建蔽率、容積率などが記載され、取引価格の分析が容易にできるように工夫されています。

同サイトにおける価格とは「成約価格」であり、一般的な不動産サイトにおける「販売価格」とは異なります。販売価格は、少しでも高く売りたいという売主の思惑が入るため、相場の参考としては扱いにくいのですが、成約価格は実際に成約した価格であり、より正確に不動産相場を把握する情報源となるでしょう。

また、同サイトでは、土地鑑定委員会が、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示する「地価公示」も開示されています。公示価格は、一般の土地の取引価格に対する指標であるとともに、相続税評価や固定資産税評価の目安として活用されているほか、土地の再評価に関する法律、国有財産、企業会計の販売用不動産の時価評価の基準としても活用されています。

なお、不動産価格は「一物四価」(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)で、路線価は公示地価の80%、固定資産税評価額は公示地価の70%程度と言われています。実勢価格とは、実際に取引される価格で、公示地価に対する割合など明確なルールは存在しませんが、不動産取引を行う上で、その不動産が高いのか、安いのかを判断する材料の一つになるでしょう。

■2. ITを活用した重要事項説明

国交省は、2014年度に行われた「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」の最終とりまとめを受けて、2015年8月31日より「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験(IT重説社会実験)」を実施しています。

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)においては、同法第35条記載の通り、宅地建物取引士が行う重要事項説明は対面式で行うものとされています。しかし、テレビ会議などの普及により、複数の遠隔地を結んで双方向での画像および音声のやり取りができるようになってきたことから、今回の社会実験が開始されました。

この実験には246社が参加しています。大手だけでなく地方の流通業者も参加し、また首都圏以外の参加者も128社と約半数を占めました。

今回の実験では、宅地建物取引士が取引相手とWEB上で対面し、取引士証を提示して重要事項説明に入ります。取引相手のユ-ザーも、従来の本人確認と同じように、免許証や戸籍謄本、住民票などを提示して本人であることを証明する必要があります。 また、説明の際は、物件の画像や図面を使って伝えて、電子署名の仕組みを使った書面の交付を行います。そして、実験から得られた問題点の整理・検証を行います。

もしITを活用した重要事項説明が解禁されれば、取引者は実際に対面して取引を行う必要がなくなるため、不動産店舗へ何度も足を運ぶなど、取引者同士が移動に費やす時間とコストの削減が期待されます。また、説明の記録やデータ保存の仕組みを整備すれば、後のトラブル防止に役立つとも期待されています。

しかし、ケース・バイ・ケースで直接対面し、重要事項説明を受けた方が良い場合もあります。

重要事項説明は、個々の物件により説明すべき内容、難易度が大きく変わります。築古で規模が大きく、既存不適格や欠陥がある物件であればあるほど、取引後にトラブルに発展する可能性が高くなります。こういうケースでは、時間をかけて丁寧に重要事項説明をしなければ、買主の理解を得られないケースもあり、それを対面ではなく、画面越しに長時間、聞き続けるのには抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。

一方、説明事項もほとんど必要ない取引であれば、上述のIT化により時間の節約や効率化が図れるのは、大いに歓迎すべき動きかもしれません。

今回の社会実験は、賃貸取引と法人間取引の2つに限定しており、個人を買主・売主とする売買取引は対象外とされています。しかし、いずれは個人間売買取引にもITによる対面が適用されて、画面を通じた重要事項説明が普及していく可能性はあるでしょう。

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依田一義の不動産情報156

今知っておくべき税金。賃貸にすると「3,000万円の特別控除」が使えなくなる理由

何らかの事情で自宅を移す時、それまで住んでいた自宅を売却するか、手放さず賃貸物件とするかは迷うところです。売却すると売却収入が見込め、譲渡所得が発生します。そしてこの譲渡所得には、所定の条件を満たすと、所得の計算上3,000万円もの特別控除が認められるのをご存じでしょうか。

ここでは、この3,000万円の特別控除の規定について確認したうえで、この特例がどのように適用されるのかを具体的にみてみましょう。賃貸と売却のいずれかでお悩みの方には参考になると思います。

■特別控除を受けられる条件は?

冒頭で紹介した通り、マイホームを売却した時はその所有期間に関係なく、売却によって得られた譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができるという特例があります。

ただしこの特例を受けるためには条件があり、国税庁のホームページに詳しく説明がありますので確認しましょう。
参考:https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm

ここからは、実際に起き得るいくつかのケースについて、この特例が適用されるのかどうかを見ていきます。

1. 所有物件を賃貸する場合
まず、冒頭でも触れたような所有する自宅を売却せずに賃貸物件とした場合です。これについては適用されません。あくまでも売却に伴う譲渡所得についての特例だからです。ただし、売却時点で住宅ローンの残債が残っていてその金額を上回る売却金額が査定で見込めないような場合は、特別控除の適用はともかく、物件を一度賃貸に出すことを検討してみるべきでしょう。

2. 一時的に賃貸し、その後売却する場合
次は、一時的に賃貸物件とし、その後売却した場合です。

例えば、「会社の都合で遠方に転勤。今住んでいる家が空き家となるので一時的に賃貸。その後、転勤地へ自宅を引っ越すことになったため、家を売却する」というケースがあります。このような場合は、上述の3,000万円の特別控除は適用されるのでしょうか。

これは以下の規定が適用されます。

「(1)自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。」

例えば、平成28年に転勤したような場合は、その後、賃貸に出しても、空き家のままでも、2019年12月31日までであれば、3,000万円の特別控除が適用されます。

3. 親から相続した家を売却した場合
親から相続した家の売却についてはどうでしょうか。

この場合、相続人がすでに自宅を構えていて、相続した家の住み手がなく空き家状態になるケースが大半です。そうであっても、空き家の発生を抑制するための特例措置として、一定の条件を満たせば、相続した日の属する日から3年目の年の12月31日までに売れば、3,000万円の特別控除が適用されます。

こちらは国交省のホームページに「空き家の発生を抑制するための特例措置」として紹介されています。
参考:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html

ポイントは「耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限る」ということです。空き家の倒壊を防ぐ措置なので、注意すべき点でしょう。

居住用の自宅を賃貸にするか、売却するかは判断の難しいところです。賃貸に出した場合、借り手との契約が問題となり、その後の売却が難しくなることもあります。また、売却する場合でも、希望の価格で売れない可能性もあります。したがって、査定では賃貸に出した場合の借り手と賃貸収入の見込み、売却の場合の売却収入の両方の見込みを立てて、3,000万の特別控除の適用と合わせてどちらを選択するべきか検討するようにしましょう。

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