依田一義のエネルギー情報55

JXエネルギーは3月22日、さいたま市見沼区に「さいたま見沼水素ステーション(移動式)」を開所し、水素の販売を開始したと発表した。
同ステーションは、「Dr.Driveセルフ大和田店」「Dr.Driveセルフ春日部中央SS」「Dr.Driveセルフ狭山根岸店」「越谷神明町水素ステーション(移動式)」「さいたま緑水素ステーション(移動式)」に続き、同社として、埼玉県において6か所目の水素ステーションとなる。
同社は、次世代自動車振興センター「燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」の採択を受けて、四大都市圏に約40か所の商用水素ステーションの開所に向けた準備を進めている。今回開所したさいたま見沼水素ステーションを含め、同社の開所済みの水素ステーションは合計31か所となる。
なお、さいたま見沼水素ステーションは水曜日と金曜日の12時から14時の営業となる。

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依田一義のエネルギー情報54

カーポート型の太陽光発電設備(PVカーポート)を導入したのは、東京の都心部から50キロメートルほどの距離にある「あみプレミアム・アウトレット」である。茨城県の阿見町(あみまち)に2009年に開業したアウトレットモールで、三菱地所と米国Simon Property Groupの合弁会社「三菱地所・サイモン」が国内で展開している9カ所のアウトレットモールの1つだ。
全体で約3900台分ある駐車場のうち、約500台分のスペースにPVカーポートを設置した。1台分のPVカーポートで約2kW(キロワット)の発電能力があり、全体で最大1MW(メガワット)の電力を供給できる。3月18日に運用を開始して、年間の発電量は115万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して320世帯分に相当する。
発電した電力は売電しないで、全量をアウトレット内の施設の共用部で自家消費する。太陽光発電だけで年間の電力使用量の80%を供給できる見通しだ。三菱地所グループが推進する環境経営の一環で取り組む。太陽光発電の電力を利用することによって、年間に58万トンのCO2(二酸化炭素)排出量の削減を見込んでいる。
この事例をモデルケースにして、他の8カ所のアウトレットでもPVカーポートの導入を進める方針だ。屋外の駐車場にPVカーポートを設置すると、夏には遮熱効果を発揮して自動車内の温度上昇を抑えられるほか、悪天候の時には雨よけの機能を果たすため、来場者の満足度向上にもつながる。
PVカーポートはオリックスが供給する。オリックスは1年前の2015年3月に豊通ファシリティーズと共同でPVカーポートの販売を開始した。ドイツ製の架台を日本の建築基準法に対応させたもので、駐車スペースの方角に合わせて設置することができる。
第1号の導入事例は家具メーカーが愛知県で運営するアウトレットである。84台分の駐車スペースを利用して、189kWの電力を供給できる。この駐車場では東西に対向する2列のPVカーポートを設置した。

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依田一義のエネルギー住宅情報

積水化学工業では、1997年以降太陽光発電システム(PV)搭載住宅を積極的に展開。2003年に光熱費ゼロハイム、2012年には大容量PV、蓄電池、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の3点セットを標準搭載した「進・スマートハイム」を発売。2013年に標準的な規模の建物でもゼロエネルギー(使用エネルギーゼロ)を実現できる「スマートパワーステーション」シリーズ、2014年には電気自動車と連携した「VtoHeim」シリーズを投入するなど、スマートハウス分野に積極的に取り組んできた。
今回の調査は、これらの導入実績を元に、2014年1~12月に入居済みの太陽光発電システム搭載セキスイハイムのうち、3078邸の2015年1~12月の消費電力量・発電電力量・電力量収支について、設置されているコミュニケーション型HEMS「スマートハイム・ナビ」のデータを活用し分析を行ったものである。

●独自の「家電込みゼロエネルギー」を設置
家庭での電力消費量の削減については、2020年から標準的な新築住宅においてZEH(ネットゼロエネルギーハウス)が義務付けられるなど、大きな注目を集めている。
ZEHは、2015年12月に「ZEHロードマップ検討委員会」により、ZEHの定義が明確化された。定義としては「運用時ではなく設計時で評価する」とされ、また、ZEHの判断基準の条件となる基準一次エネルギー消費量、設計一次エネルギー消費量の対象は「暖冷房、換気、給湯、照明とする」(家電消費量は含まない)などとなっている。
一方で積水化学工業では、2010年から「PV搭載住宅の電力量収支実邸調査」を実施してきた。これはPVの運用実績によりその貢献度合いを推し量るものだが、ZEHの定義前から行っていたため一部で定義が異なる点が存在する。異なる点は「運用時の評価」と「家電も含めたエネルギー収支」(=家電込みのエネルギー収支)で、「運用時の評価」には「家電込みのエネルギー収支」が不可欠のため、今回の同社調査では国のZEH判断基準の定義に準拠した評価と、当社独自の「家電込みエネルギー収支(運用時)」による評価を加えて実施している。具体的には「家電込みゼロエネルギー」「ZEH相当」「Nearly ZEH相当」「非ZEH」の4つの区分でゼロエネルギー達成度を評価している※)。
※)ZEH相当、Nearly ZEH相当とも、国のZEH判定に使う計算式を準用。また、今回の調査では家電消費電力を分離して測定できていないので、省エネルギー基準における家電消費電力相当(120平方メートル以上の住宅で年間2173キロワット時)を使ってゼロエネルギー達成度を計算

●ZEH相当以上のゼロエネルギー邸が59%に
調査結果によると使用する家電を含めた「家電込みゼロエネルギー邸」が前年比から15%増え32%に拡大。またZEH相当邸が27%(前年30%)となり、ZEH相当以上の世帯が59%に達していることが分かった。この数値は47%だった前年に比べ12%の増加となる。

●家電込みゼロエネルギー邸は年間光熱費収支が約17万8500円プラスに
ZEH相当以上の世帯は1826邸となり家族数の平均値は3.4人となった。この数値は前年と同じである。中央値を見てみると、PV搭載容量5.94㎾(キロワット)、発電電力量6984㎾h(キロワット時)/年、消費電力量6708㎾h/年となり、電力量収支はマイナス276㎾h/年となった。このうち、家電込みゼロエネルギー世帯は978邸で、家族数の平均値は3.4人(前年は3.1人)、中央値はPV搭載容量7.92㎾、発電電力量9073㎾h/年、消費電力量6177㎾h/年となり、電力量収支はマイナス2896㎾h/年となっている。
光熱費に換算すると「ZEH相当以上邸」の中央値は、売電で電力量5363㎾h/年、収入19万8431円となった。また、買電で電力量5087㎾h/年、支出10万9371円となり、光熱費の収支はプラス8万9061円となる。「家電込みゼロエネルギー邸」の中央値は、売電で電力量7501㎾h/年、収入27万7537円。また、買電で電力量4605㎾h/年、支出9万9008円となり、光熱費の収支はプラス17万8530円となったという。
ZEHなど環境対応住宅は環境性能などに注目が集まるが、それだけでなくユーザーの収益面でも高パフォーマンスが発揮されていることが明らかとなっている

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依田一義の不動産情報35

不動産投資市場の活性化策を検討している国土交通省の有識者懇談会は22日、市場拡大に向けた成長戦略をまとめた。
不動産投資信託(J―REIT)など資産総額で現在約16兆円の市場規模を、2020年ごろに約30兆円に倍増させる目標を打ち出した。
国交省は17年度予算概算要求や税制改正要望に反映させるとともに、関連法の改正も検討する。
成長戦略は不動産投資市場について、堅調な不動産需要や金融緩和による良好な資金調達を背景に、比較的安定的に推移していると評価。
20年ごろの名目GDP(国内総生産)600兆円を目指した政府目標を実現するには、観光や物流、医療福祉といった成長分野で良質な不動産を供給することが必要とし、ホテルや旅館、大規模物流施設、高齢者施設などに対する投資促進を提言した。

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依田一義の不動産情報34

国土交通省はこのほど、2016年公示地価を発表した。2016年1月1日時点の地価公示は全国平均で0.1%上昇。
2008年以来、8年ぶりに上昇に転じた。
用途別では、住宅地の全国平均が0.2%下落。2008年以降で下落幅は最小となったが、依然として下落基調だ。
一方、商業地の全国平均は0.9%上昇。2015年調査では横ばいだったが、上昇基調に移行した。商業地の上昇が、
全用途における全国平均の上昇の要因となった。

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依田一義のエネルギー情報53

JX日鉱日石エネルギーは、4月から販売開始する家庭用電力「ENEOSでんき」の申し込み件数が5万件を超えたと発表した。
「ENEOSでんき」は、1月15日に申し込みの受け付けを開始。幅広く「安心・信頼」して使ってもらえるよう、シンプルで分かりやすいサービスメニューとし、電気料金だけでトップクラスのメリットを感じてもらうことを目指した。また、ENEOSカードで支払うとガソリン・軽油・灯油がキャッシュバック、特別提携カードで支払うとマイルやポイント、Tポイントを貯めることができる。
また、3月31日までに「ENEOSでんき」に申し込むと、使用開始月分の電気料金のうち、2000円(税込)を割り引く「今だけ早割!」キャンペーンを実施している

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依田一義のエネルギー情報52

電力を購入するユーザーの住宅屋根などに太陽光発電設備を「無償」で設置し、そこで発電した電力を活用するユニークな電力小売サービスが登場した。日本エコシステムが2016年3月16日から申込受付を開始した「じぶん電力」だ。
日本エコシステムは情報通信建設会社の日本コムシスのグループ会社で、1997年に設立。太陽光発電システムの販売施工の他、蓄電池やオール電化家電の販売などのエネルギーシステム事業を展開している。2016年2月に小売電気事業者登録を済ませた同社は、2016年3月18日に会見を開き、新事業として開始するじぶん電力の詳細と今後の事業展開方針について説明した。

●太陽光発電システムを無償設置
まず、じぶん電力を利用するユーザー側の視点から見ていく。じぶん電力に申込を行ったユーザーの住宅屋根に、日本エコシステムが無償で太陽光発電システムを設置する。パネルは全てソーラーフロンティア製のパネルを利用する。発電システムと発電した電力の所有権は日本エコシステムに帰属し、ユーザー側は日本コムシスに使用電力量に応じた料金を支払うことで発電した電力を自宅で利用できる。なお、この電力は停電時などの非常時には無料で利用可能だ。
しかし、太陽光発電システムの場合、夜間など発電できない時間帯も発生する。こうした時間帯は新電力最大手のエネットから調達した電力を、日本エコシステムを通じて提供し補う仕組みになっている。ユーザーは時間帯に応じて「太陽光発電分」とエネットの電力を利用した「供給分」の2つの電力を購入する形になり、それぞれ料金体系も異なる。
じぶん電力の契約期間は20年間で、その間の発電システムの定期メンテナンスなどは全て日本コムシス側が担当する。ユーザー側に費用は発生しない。なお、発電システムの遠隔監視にはNTTスマイルエナジーの「エコめがね」を採用した。
このサービスの大きな特徴の1つとなっているのが、契約期間の20年間が経過すると設置した太陽光発電システムはユーザー側に譲渡される点だ。ただし途中解約の場合は、契約経過期間に応じた価格でユーザー側が太陽光発電システムを買い取る必要がある。

●これまでの実績を活用、環境価値の高い電力を買える時代に
会見に登壇した日本エコシステム 代表取締役社長の白髭博司氏は、じぶん電力について「日本エコシステムはこれまで全国で住宅向けを中心に約3万6000件の太陽光発電システムの販売・施工実績がある。こうしたノウハウを活用したじぶん電力は、CO2排出量削減の観点からも非常に意義のある取り組みだと捉えている。住宅に太陽光発電システムを導入したいが、初期費用の高さで断念する方も多い。そこで『電気料金を支払うだけで環境価値の高い電気を購入できる』という新しいモデルを提案しようと考えた」と語った。

●全国7地域で提供、現在より数%安い料金に
気になる料金プランはどうなっているのか。先述したようにじぶん電力の電力料金はエネットから調達して供給する「供給分」と「太陽光発電分」の2つから構成される。供給分の電力料金は、一般的な電力会社の現行プラント同じく「基本料金+電力量料金」で構成する。
一例として東京電力管内で提供する料金プランと比較してみる。東京電力の従来電灯Bに相当する「じぶん電力Aプラン」の供給分の電力料金は従来電灯Bより基本料金(30〜60A)は約40〜80円、電力量料金は段階に応じて1kWh(キロワット時)当たり0.5〜1.5円程度安く設定している。
一方、設置した太陽光発電システムで発電した電力の料金は、1kWh当たり27円だ。基本料金などは発生しない。東京電力の従来電灯Bの300kWh以降の電力量単価より2.93円安い。なお、東京電力の場合従来電灯Cに相当し、1kVA(キロボルトアンペア)ごとの契約量で基本料金が決まる「じぶん電力Bプラン」も用意する。
このようにじぶん電力は、供給分、太陽光発電分ともに現行の電力会社の料金プランより安い単価となっている。家庭や地域によって毎月の供給分と太陽光発電分の購入比率は異なると予想されるが、2つとも料金単価が現行の電力会社のが設定する300kWh以降の電力量料金単価より安い。電力使用量のが多い家庭であればあるほど、よりお得になるプランといえるだろう。
じぶん電力はまず北海道、青森県、秋田県、岩手県、山形県、新潟県、富山県、石川県、福井県、沖縄県を除く地域で提供する。電気料金の目安について日本エコシステム 取締役 企画開発部長を務める石原敦夫氏は「地域ごとに異なるが、現在の電力会社が提供している料金プランより、標準的な家庭で平均数%安くなるように単価を設定した。しかし料金の安さを大きな差別化要因とするサービスではないと捉えている」としている。

●余剰電力を売電して収益に
日本エコシステムではじぶん電力のターゲットとなるユーザー層についてどう捉えているのか。資源エネルギー庁の調査によれば家庭用太陽光発電システムの導入余地がある既築住宅は全国で1200万戸ある。このうち現在設置が進んでいるの12.1%に相当する170万戸にとどまっている。固定買取価格制度(FIT制度)が始まってから産業用の太陽光発電設備は急速に拡大したが、10kW未満の住宅向けシステムの普及は伸びているとはいえない状況だ。
一方、日本エコシステムでは今後2年の間に自宅に太陽光発電設備を購入したいというユーザー数は52.8万戸、そして興味はあるが未設置・非購入となっているユーザー数を210万戸と見込んでいるという。石原氏は「ユーザーが太陽光発電システムの設置に踏みとどまってしまう理由の大きな要因が『初期費用の高さ』にある。そこでじぶん電力ではこうした『興味はあるが、費用の問題で導入を断念していた』というユーザーを潜在顧客と捉え、開拓を進めていく」と語っている。
対象顧客としては、太陽光発電システムの設置を必要とするため、基本的には戸建住宅を中心としつつ、低圧配線を利用する幼稚園などの小規模な法人施設も対象に顧客開拓を進めていく方針だ。初年度から2年間の合計で約1万件の獲得を目指す。初年度は4000件、次年度は6000件の獲得を目指し、そして5年後には10万件まで拡大したい考えだ。

●将来は外部資金の活用も視野に
じぶん電力はまず「無償で太陽光発電システムを設置する」というビジネスモデルの特性上、大きな初期投資が必要になる事業だ。5年後に10万件と考えた場合、合計で数千億円規模の投資額が必要になることも想定される。
日本エコシステム側の収益は毎月の電気料金がベースとなるが、もう1つの収益源の柱としてFIT制度による売電も活用する。日中などに太陽光発電システムで発電する電力量が、その住宅の電力使用量を上回る場合、その余剰電力を10年間にわたって余剰売電する仕組みだ。
石原氏は「じぶん電力は一般的な小売電力事業と異なり設備施工も必要になる。こうした部分も見込んで、2年間で1万棟という目標を掲げた。5年後に10万棟を実現するには資金調達なども必要になると考えているが、まずこの2年間の中でコスト削減できる部分などを洗い出し、将来的に外部資金を活用しても事業運営が成り立つ利益率を目指していく」と語っている。
日本エコシステムでは今後、通常の太陽光発電システムの販売・施工と、無償でシステムを設置し電気料金や売電収入で利益を得るじぶん電力の2つの事業を同時並行で運営していくことになる。
石原氏は「ユーザーのニーズもビジネスモデルも異なるため、どちらがわれわれにとって良いということは一概にはいえない。しかし太陽光発電市場がグリッドパリティを迎え、本当の意味で太陽光が『電源』となるためには、じぶん電力のような『システムではなく電気を売る』といったモデルに移っていくのは必然だと捉えている。米国では先行してこうしたモデルが確立しつつある。日本でも時代の状況としてはこうした新しいモデルに移っていくのではないかと考えている」と述べている。

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依田一義のエネルギー情報51

固定価格買取制度による再生可能エネルギーの買取費用は、電力の利用者が電気料金で負担することになっている。政府は毎年度の買取費用を想定したうえで、電気料金に上乗せする賦課金の単価を算定する。2016年度は買取費用を2兆3000億円と見込んで、賦課金の単価を電力1kWh(キロワット時)あたり2.25円に決めた。

【月間の買取費用の推移(単位:億円)】
新しい単価は5月分の電気料金から適用する。標準的な家庭(月間使用量300kWh)では月額675円になり、従来の474円から201円の増額になる。ただし前年度に225円から474円へ249円増えたのと比べると、増加ペースは弱まっている。今後も買取費用の増加に伴って賦課金は上昇するものの、徐々に緩やかになっていく見込みだ
固定価格買取制度が始まった2012年7月から毎年度の買取費用は倍増ペースで伸びてきた。幸いにも2016年度の増加額は4600億円にとどまり、2015年度に9400億円も増えたのと比べて2分の1以下に収まっている。買取費用の大半を占める太陽光発電の買取価格を引き下げてきた効果が出始めた。
月間の買取費用の推移を見てみると、2015年度に入ってから太陽光発電(出力10kW以上)が一気に拡大した。規模が大きいメガソーラーを中心に、固定価格買取制度の認定を受けた発電設備が続々と運転を開始した結果である。
引き続き太陽光発電の買取費用は増加していくが、一方で買取価格が安くなった2013年度以降に認定を受けた発電設備の比率が高まるため、増加ペースは徐々に弱まっていく。2016年度の太陽光発電(10kW以上)の買取価格は24円に決まり、2012年度の40円と比べて6割の水準まで下がった。

原油とLNGは1年で半値に下落
政府は2030年の電源構成(エネルギーミックス)の目標値を設定するにあたって、国全体の電力コストを引き下げる方針を掲げた。そのために再生可能エネルギーの買取費用を2030年に4兆円以下に抑えながら、火力発電と原子力発電の燃料費を4兆円近く削減する計画だ。
すでに再生可能エネルギーの買取費用は2兆円を超えたが、太陽光発電の買取価格を引き下げて4兆円以下に収める方針だ。一方の燃料費は化石燃料の輸入価格がどう変動するか、そして原子力発電の再稼働がどのくらい進むかによるため、長期的に予測することは極めてむずかしい。
少なくとも2016年度は化石燃料の輸入価格の低下と発電量の減少によって燃料費は下がる見通しだ。世界全体で化石燃料が余り始めたことで、火力発電に使う原油・一般炭・LNG(液化天然ガス)の輸入価格は下落傾向が続いている。特に原油とLNGが2015年に入ってから急落した結果、電力会社の燃料費も大幅に減少した。
燃料費の減少に伴って、賦課金と同様に電気料金に上乗せする燃料費調整額が減り続けている。燃料費調整額の単価は3~5カ月前の化石燃料の平均輸入価格をもとに、各電力会社が月ごとに算定する。2015年4月分と2016年4月分の単価を比べると、10社すべてで下がっている。
10社の平均で1年間に燃料費調整単価が3.2円も減った。特にLNGの比率が高い東京電力では単価が5.4円も減り、石炭の比率が高い北陸電力でも1.17円の減少になっている。しかも全社で単価がマイナスになっていて、毎月の電気料金から燃料費調整額を差し引く状況だ。
かりに2016年5月以降の燃料費調整単価が4月分と同じマイナス2.06円(全国平均)で推移すると、標準的な家庭の電気料金は月額で618円安くなる。再生可能エネルギーの賦課金が新単価になって675円上乗せされても、わずか57円の増額で収まる。
加えて火力発電が減少してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減できるメリットがある。賦課金の増加ペースが弱まってきたことと考え合わせると、再生可能エネルギーの拡大を過剰に懸念する必要はない。

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依田一義のエネルギー情報50

JFEエンジニアリングと川崎市は、廃棄物発電を活用した「ゼロ・エミッションシステム」によるごみ収集の実証試験を、川崎市浮島処理センター(川崎市川崎区)で開始した。
廃棄物発電を活用した「ゼロ・エミッションシステム」によるごみ収集実証実験は、ごみ焼却発電施設で発電する電力を活用し、電池交換型EVごみ収集車を使う日本初の実証試験となる。
廃棄物発電を活用し、走行中のCO2排出量・排出ガスがゼロで、オール電動化によって静音な運行・作業が可能となる。EV電池は、ボタン一つでスピーディに交換できるほか、電池交換型EVごみ収集車の電池を、災害対策拠点などの非常用電源としても活用できる。
実証試験では、電池交換型EVごみ収集車の車両の性能確認や電池ステーションの動作確認、災害時の非常用電源としての電池の活用を検証する。
両者は、実証試験を経て、電池交換型EVごみ収集車を活用したごみ収集の実用化を目指す。

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依田一義のエネルギー情報49

日鉄住金パイプライン&エンジニアリング(日鉄住金P&E、本社=東京都品川区、浅井武社長)は17日、JXエネルギーに商用水素ステーションを納入したと発表した。
新日鉄住金グループとしては初の水素ステーション建設案件となる。配管の高圧部分には新日鉄住金の高圧水素用ステンレス鋼HRX19を採用するなど、グループ間でのシナジーを発揮している。

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