依田一義の国際情勢情報23

ロシア極東発展省は25日、日本との間で協議を進めている露極東地方での経済協力計画に18の優先項目があり、それらの事業規模が総額1兆ルーブル(約1・7兆円)超に達すると発表した。

エネルギーや輸送、医療などの分野で構成されるが、サハリンと北海道を結ぶ橋の建設や送電計画なども含まれ、実現性が不透明な部分も少なくない。オシポフ極東発展省第1次官は、12月に予定されているプーチン大統領の訪日までに「具体的な成果を出し、さらなる協力に向けた行程を固めていきたい」と述べた。

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依田一義のエネルギー情報173

日本初の波力発電所が完成した場所は、岩手県の久慈市(くじし)にある「久慈港」の一角にある。この一帯は東日本大震災で津波の被害を受けた地域で、復興プロジェクトの1つとして波力発電の実証に取り組んでいる。

久慈港の中にある「玉の脇漁港」の防波堤を利用して、「久慈波力発電所」が10月24日に完成した。プロジェクトの中心メンバーである東京大学・生産技術研究所が開発した波力発電装置を備えている。

発電所は海底に設置する基礎部分の上に、建屋を搭載する構造になっている。建屋の中に発電機があって、その下に大きな波受け板(ラダー)がぶら下がる。全体の大きさは横幅が7メートルで、高さと奥行きは12メートルある。80トンの重さで海底の岩盤に固定する仕組みだ。

波受け板の大きさは高さが2メートルで、横幅が4メートルある。防波堤に水平に設置した波受け板は海からの波を受けて振り子状に回転し、さらに防波堤から戻ってくる波も受けて回転力を高める。回転軸が発電機とつながっていて電力を生み出す。

発電能力は43kW(キロワット)ある。波の強さは季節や天候によって変動するため、平均で10kW程度の出力を想定している。年間の発電量は約9万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算すると25世帯分に相当する。

発電コストの低減が最大の課題に

久慈港の波力発電の実証プロジェクトは2012~2016年度の5年間で実施する計画だ。2013年度に玉の脇漁港の周辺で波の状況を観測した後に、発電装置の製造に着手した。久慈市内の工場で2016年1月に発電装置が完成して、9月上旬にクレーン船で玉の脇漁港まで曳航して設置工事に入った。9月下旬には試験運転を開始する一方、東北電力の配電線に接続する工事も進めた。

発電所は防波堤から通路でつながっていて、そこを通って陸上の配電線まで接続する。防波堤の横には電力を変換するパワーコンディショナーや電圧を調整するトランスが設置されている。発電した直流の電力を交流に変換して配電線に供給する流れだ。

プロジェクトチームは2017年3月まで実証運転を続けて、実際の発電量や装置の制御方法を検証する。プロジェクトが完了した後も、東京大学を中心に発電機メーカーなどが参画して実証運転の継続と装置の改良に取り組む予定だ。

最大の課題は発電コストを低減することにある。現状では1kWhの電力を作るコストが60円程度と高く、発電装置の軽量化などを通じてコストを引き下げていく必要がある。国の目標は波力発電を含む海洋エネルギーのコストを2020年代に20円/kWh以下に抑えることである。その目標に向けた第一歩が岩手県の漁港から始まった。
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依田一義の経済情報43

日本フードサービス協会が25日発表した9月の外食売上高は全店ベースで前年同月比1.5%増と、2カ月ぶりにプラスだった。休祝日が1日少なく、台風などの影響で天候不順が続いたにも関わらず、販促が奏功したファストフードが全体を押し上げた。

客数も1.5%増と、2カ月ぶりに前年を上回った。一人あたりの客単価は横ばいだった。

業態別で増加が目立ったのはファストフードで、「各社のキャンペーンがおおむね好調」(同協会)だった。とくに日本マクドナルドは昨年、期限切れ鶏肉の使用など一連の品質問題で客離れが進んだが、回復しつつあるという。

一方、ファミリーレストランは天候不順などが響き、売り上げが1.5%減った。業績不振などから店舗数の削減が続く居酒屋も売り上げが8.6%減少した。

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依田一義の経済情報42

キリンホールディングス<2503.T>は26日、コカ・コーラグループと清涼飲料事業で資本・業務提携する方向で協議を始めたと発表した。日本の飲料業界は収益力向上が課題となっており、物流や原料調達の効率化を進める方向で協議を進める。

両社はスピード感を持って議論を進める方針。今後、協業の中身や資本提携のあり方などについて詰めていくことになる。

コカ・コーラグループは清涼飲料業界でシェア1位。一方、キリンHD傘下のキリンビバレッジは4位。

コカ・コーラグループは、2017年4月にコカ・コーラウエスト<2579.T>とコカ・コーライーストジャパン<2580.T>が経営統合し、コスト削減や効率化を進めることが決まっている。キリンHDも中期計画の中で、キリンビバレッジのブランド体系の構築とコスト削減など構造改革を掲げている。

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依田一義の不動産情報183

東京カンテイが発表した9月の中古マンション価格(70平方メートル換算、売り希望価格)によると、首都圏は前月比0.3%上昇の3530万円となり、9カ月連続で上昇した。都県別に見ると東京都は前月に上昇していたが、同0.1%のマイナスと再び上昇が一服した。東京23区は前月からマイナス0.3%の5264万円でわずかに下落し、6月をピークに弱含む展開となっている。神奈川県、埼玉県では依然として緩やかな上昇傾向を示している。千葉県では、千葉市や浦安市で2~3%程度の価格上昇を記録した影響もあり、3カ月ぶりに上昇した。

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依田一義の経済情報41

マークイットが発表した10月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は53.2となり、前月の51.5から上昇した。予想の51.5も上回り、2015年10月以来の高水準を付けた。

同指数は50が景気拡大と悪化の分岐点となる。

生産指数は55.3と、前月の52.5から上昇。新規受注指数は54.7と、前月の51.1から上昇した。景気指数と同様、ともに2015年10月以来の高水準となる。

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依田一義の不動産情報182

日銀は24日に公表した金融システムリポートで、大都市圏で高値取引の事例が見られるなどとして、不動産市場に「注意すべき動きが出てきている」と指摘した。日銀が大規模な金融緩和を始めて以降、不動産市場の過熱リスクに明確に言及するのは初めてとみられる。ただ、現状については「全体としては過熱した状況にはない」としている。

国内金融機関の不動産業向け貸し出しは全産業向けを上回るペースで増え続けている。大手行は大手建設会社などの資金需要に積極的に対応。また、地域金融機関は個人の資産管理会社や地元の不動産業者への貸し出しを積極化させている。

日銀は大都市圏で不動産価格が上昇する中、「一部に投資利回りが低水準となる高値取引の事例が見られる」と指摘。また、地方銀行が不動産投資信託(Jリート)への投資を積極化している点などに注意を促した。

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依田一義の不動産開発情報101

JR九州が、福岡市のJR博多駅やキャナルシティ博多の近くにホテルとオフィス、飲食店などが入る複合ビルの建設を計画していることが24日、分かった。福岡市が自転車専用道や歩道拡幅を計画している道路沿いにあることから、市などと連携して観光客や買い物客が周遊して楽しめる環境づくりを目指す。早ければ2017年度にも着工する。

施設は地上13階前後になる見込みで、1~2階に飲食店、中層階にオフィス、高層階にホテルが入る。ホテルの室数は200室をめどに検討中で、シティホテルとビジネスホテルの中間の価格帯になる見込み。外国人観光客に人気の大浴場も設けるという。

博多駅近くにJR九州が複合ビル 飲食やホテルが入居 LINEから予定地取得
JR九州が複合ビルの開発を計画している用地。現在は駐車場になっている=福岡市博多区
予定地は社屋建設を一時計画していたLINEから取得
予定地は約1590平方メートル。社屋建設を一時計画していた無料通信アプリ事業のLINEから6月に取得した。博多駅とキャナル、中洲地区を結ぶ「はかた駅前通り」沿いにあり、20年度に完成予定の市営地下鉄七隈線の新駅にも近い。現在の通り沿いはオフィスが多く、休日は人通りが少ないことから、新施設でにぎわいにつなげたい考えだ。

市は通りを現在の5車線から3車線に減らし、代わりに歩道を拡幅して自転車道を新設するなど、楽しんで歩ける環境づくりを計画している。

JR九州の本郷譲事業開発本部長は「博多駅からキャナルや中洲までのエリアを、もっと明るい雰囲気にしたい。福岡で試合がある19年のラグビーワールドカップ(W杯)には何とか間に合わせたい」と話している。

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依田一義の不動産情報181

アットホームの調査によると、9月の首都圏における居住用賃貸物件成約数は1万7628件で、前年同月比6.8%減となり、7カ月連続のマイナスとなった。3カ月連続全エリアでの減少となった。新築・中古別に見ると、新築アパートの成約は同2カ月連続増加し、堅調。中でも、シングル向きが同2年9カ月連続増と好調に推移している。東京23区は7804件で同9.8%減。千葉県、埼玉県、神奈川県も減少した。

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依田一義の国際情勢情報22

スペインの最大野党・社会労働党(中道左派)は23日、暫定政権が続く国民党(中道右派)のラホイ首相の正式選出を容認する方針を決めた。スペイン議会は議席が分散して首相が選べない状態が続いていたが、3度目の総選挙は避けるべきだと判断した模様だ。

AFP通信などが伝えた。社会労働党はラホイ氏の続投に反対してきたが、この日の党幹部らの会議では、国会での信任投票で棄権に回り、再任を妨げない方向に転じた。ラホイ氏は、首相に正式選出されても少数与党での厳しい政権運営となる見通しだ。

スペインでは昨年末の総選挙でも、6月のやり直し総選挙でも議席が分散。国民党が第1党の座を保つものの、反緊縮の左派新党ポデモス(私たちはできる、の意)の台頭もあって政権づくりが行き詰まった。10月末までに新首相を選べなければ、年末に3度目の再選挙が想定されている。

左派連合を目指した社会労働党のサンチェス前書記長は、党勢の衰退に加えて連立交渉での他党への妥協などが不評を買い、党トップの座を辞任していた。

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