依田一義のエネルギー情報132

九州電力は今秋からオール電化の営業活動を加速させる。住宅で使われるIHクッキングヒーターや電気給湯器「エコキュート」のメーカーと協力した営業展開を家電量販店などで始め、新たなテレビCMもスタートする。

量販店で九電とメーカー名を併記した「コラボのぼり旗」を掲げる。IHのメーカーなどは九電のオール電化営業の中で、自社製品が使われることを歓迎していると九電はみており、さらに協力関係を深める方針だ。

また、オール電化の顧客獲得を狙ったテレビCMも始める。CMは通常15~30秒程度で情報量も限られるため、2、3分程度のドラマ仕立ての動画も作成し、九電のウェブで公開することも検討している。

九電は2011年の東日本大震災後、原発停止による電力不足のため、オール電化の営業を休止していた。昨年の川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)再稼働などで供給力に余裕が生まれ、今年7月から本格的にオール電化の営業を再開している。

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依田一義のエネルギー情報131

野村不動産パートナーズは8月から、同社が管理するマンション管理組合向けの電力サービス「マンション共用部電力サービス」の提供を開始した。
同サービスは、野村不動産グループのNFパワーサービスと連携して実施する。NFパワーサービスが電力を調達し、地域の送配電網を通じてマンションの共用部分に供給。野村不動産パートナーズは、管理組合からの申込窓口となり契約や問い合わせの受け付け、料金の徴収などを行う。
契約にもよるが、電気料金が3~10%程度割引となる。

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依田一義のエネルギー情報130

建設会社大手の大林組が8月3日に「大月バイオマス発電所」の工事に着手した。山梨県の大月市にある2万平方メートルの広大な敷地に、景観にも配慮したデザインで発電所を建設する計画だ。発電能力は14.5MW(メガワット)に達して、内陸部の木質バイオマス発電所としては国内で最大級の規模になる。運転開始は2018年8月を予定している。

年間の発電量は1億1000万kWh(キロワット時)程度になる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると3万世帯分の電力で、大月市の総世帯数(1万世帯)の3倍に匹敵する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で東京電力に売電する。発電所の総投資額は約100億円で、年間に約20億円の売電収入を想定している。

燃料の木質バイオマスは家庭などから廃棄物として出る剪定枝(せんていし)を中心に、周辺地域の森林で発生する間伐材や土場残材なども利用する方針だ。各種の木材を粉砕した木質チップの状態で年間に約15万トンを調達する。

発電所の建設地は東京を起点とする国道20号線や中央自動車道にも近く、半径50キロメートル以内には東京・神奈川・埼玉県の西部が入る。首都圏とつながる交通網を生かして、各地で発生する用途のない木材を広範囲に調達できる利点がある。

大月市には2027年に開業予定の「中央新幹線」の一部になる「山梨リニア実験線」が通っている。超電導リニア方式で走る中央新幹線は路線の大半をトンネルが占めることから、自然環境保護の問題と同時に、トンネルを掘った後の残土の処分が大きな課題だ。バイオマス発電所の建設は残土処分地を有効に活用する目的で、山梨県と大月市が協力して準備を進めてきた。

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依田一義のエネルギー情報129

政府は電力会社を含む小売電気事業者に対して、需要家に販売する電力の電源構成を開示するように求めている。東京電力の小売事業会社である東京電力エナジーパートナーは電力会社10社の先頭を切って2015年度の電源構成を8月12日に公表した。
東京電力が2015年度に販売した電力のうち、90%を火力発電が占めた。LNG(液化天然ガス)を中心にガス火力が66%にのぼったほか、石炭火力が18%、石油火力が6%である。一方で再生可能エネルギーによる電力は10%だった。自社で運営する水力発電所から4%、固定価格買取制度で買い取ったFIT電気が3%、それ以外の再生可能エネルギーが3%である。

従来は販売電力量ではなくて発受電電力量による比率を開示してきた。販売電力量とさほど変わらない比率になるが、その推移を見ると東日本大震災の前後で大きく変化している。2012年度からLNGを中心とするガス火力の比率が60%を超えて、火力発電だけで90%を上回る状態になった。ただし石炭火力と石油火力を合わせた比率は減少傾向にあり、CO2排出量は減っている。

電力会社10社を合計した電源構成と比べると大きな差がある。ガス火力の比率は10社の合計では45%前後で、代わって石炭火力が30%前後に拡大する。東京電力のCO2排出量はガス火力の比率の高さから、10社の平均よりも低い水準に収まっている。とはいえ再生可能エネルギーの比率は水力発電とFIT電気を加えると2015年度に10社の合計で15%に達していて、東京電力の比率は明らかに低い(発受電電力量の9%)。

大規模な再エネ発電設備が少ない

東京電力の電源構成で再生可能エネルギーの比率が他の電力会社よりも低い理由は主に2つある。1つは東京電力の管内では再生可能エネルギーの発電設備が他の地域よりも少ないために、固定価格買取制度で買い取る電力量も相対的に少なくなる。もう1つは東京電力の発電所が生み出す再生可能エネルギーの電力量が限られることだ。

東京電力は福島県や新潟県を含めて1都8県に164カ所の水力発電所を運転しているが、そのうち出力が3万kW(キロワット)以上の大規模な水力発電所は26カ所にとどまる。しかも火力発電の余剰電力を利用する揚水式が9カ所を占める。

水力以外ではメガソーラー級の太陽光発電所を神奈川県と山梨県の合計3カ所で運転しているほか、静岡県で風力発電所、東京都の八丈島で地熱発電所を1カ所ずつ運転中だ。太陽光発電の能力は3カ所を合わせて3万kW、風力発電は1万8370kW、地熱発電は3300kWである。このほかに再生可能エネルギーの発電所を新設する計画は今のところない。

一方で火力発電所の高効率化を積極的に推進して、燃料費とCO2排出量の削減に取り組んできた。特にLNG火力では先端技術のコンバインドサイクル発電方式を主力の火力発電所に相次いで導入している。神奈川県にある「川崎火力発電所」の最新鋭の2基では、燃料の熱エネルギーを電力に変換できる効率が61%に達する。

こうしてLNG火力の高効率化を進めた結果、発電電力量あたりのCO2排出係数は電力会社10社の中で中部電力に次いで2番目に低くなっている。CO2を排出しない原子力発電所を再稼働させた九州電力と比べても2015年度の時点では低い水準だ

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依田一義のエネルギー情報128

生活協同組合コープしが(野洲市)は、全面自由化された電力小売り事業に参入する。滋賀県内の組合員が対象で、11月からの供給開始時で5千件の契約を目指す。電源構成で再生可能エネルギーが39%を占める新電力会社エネサーブ(大津市)から調達し、環境に配慮した点をPRする。
県内の組合員は約17万世帯。宅配や店舗事業との連携で営業経費を抑え、サービス拡充を図る。7月に実施した組合員アンケート(回答者約1500人)では、環境に配慮した電力を使いたいとの答えが66%を占めたという。
エネサーブの電源構成はバイオマス21%、太陽光13%などで再生可能エネルギーが39%を占め、火力で9割近くを占める全国平均に比べて約3倍としている。他に大手電力会社などから買い取る市場調達分があるため、原発が稼働していると電源に含まれる。
電気料金は平均的な家庭の使用量の場合、大手電力会社と比べて4~5%割安になるという。22日から受け付けを始め、11月1日から供給する。組合員になるには出資金が必要。
コープしがの白石一夫専務理事は「電気料金を安くし、環境にも配慮したいという消費者の願いに合わせていきたい」としている。

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依田一義のエネルギー情報127

都市ガスの小売り全面自由化は、2017年4月に実施される。その後2022年4月には大手ガス3社の導管分離が実施され、ガス関連市場の自由化が完結する予定だ。

そもそも、都市ガスの小売自由化は電力よりも早く、1995年から年間契約量に応じて段階的に開放されてきた。2017年4月の全面自由化に際しては、電力会社をはじめとして異業種企業が積極展開することが予想されている。ただ、比較的新規参入しやすい電力市場とは違い、調達面や運用・管理面で難易度が高い都市ガス市場への新規参入は多くないとみられる。

2015年度で3.7兆円とされた都市ガス市場だが、新規参入企業によるシェア割合は徐々に拡大すると予測される。また、卸売り市場なども活性化が進むものと期待されている。調査会社の富士経済ではこうした変化するガス市場について調査を行い市場推移などを予測した。特に変化が予測される市場をそれぞれ見ていく。

都市ガス小売り市場

国内の都市ガスの小売り市場は、熱量ベースでは1.7兆MJ(メガジュール)弱、数量ベースでは400億立方メートル前後で、比較的安定している。ただ、金額ベースでは燃料価格の変動の影響を受けるため価格が高騰した2013年度、2014年度は4兆円市場となった。しかし、2015年度は暖冬などにより需要が減少。燃料価格も低下したことから熱量、数量、金額とも縮小している。今後は小売り全面自由化が需要を活性化すると期待されており、小売市場は微増が予測されている。

一方で、小売り市場(熱量ベース)における新規参入者(ガス導管事業者および大口ガス事業者)のシェアは2013年度以降、8%前後だったが、2015年度は電力会社が中心となって自家消費が増えたため、大口ガス事業者の販売は前年度比2.6倍と急増した。小売り全面自由化後は新規参入者のシェアが拡大していくという見込み。電力とのセット販売や新たなサービス提供などにより販売を増加すると予測される(図1)。

都市ガスの卸売り市場

都市ガスの卸売り市場は、熱量ベースで3800億MJ弱、数量ベースで小売市場の約20%に当たる90億立方メートル前後となっている。今後市場は小売り全面自由化が大きな転機となり増加傾向が生まれると予測されている。

卸売り市場は小売りと異なり自由競争が既に開始されており、一般ガス事業者よりも新規参入者の方が積極的な傾向があり、市場におけるシェアは半数を占めている。特に国際開発帝石や石油資源開発などの国内天然ガス事業者が大きなシェアを握っている。小売り全面自由化後はLNGの輸入量が増加すると見られており、一般ガス事業者、新規参入者ともに卸売りを増やす見込みだが、特に新規参入者の比率は高まると予測する。

顧客料金管理システム

顧客料金管理システム(CIS、Customer Information System)は、顧客が使用したガス料金を効率的に管理するためのシステム。電力やガスの小売りを行うには必ず必要となるシステムで、ガスの新規参入事業者なども新たに購入する必要が生まれてくる。

提供形態にはパッケージ/テンプレート型、クラウド型、スクラッチ型などがある。一般ガス事業者向けは、顧客数や求める機能など、システムのタイプや規模によって大きく異なるものの、導入するには数百万円~数億円規模のイニシャルコストと、年間数百万円~数千万円規模のランニングコストが必要となる。大手(顧客数100万件以上)、準大手(顧客数10万件以上100万件未満)の事業者は既に導入が進んでおり、これらに向けたものは、システムの更新やアップグレード需要などが中心となっている。

小売り全面自由化後はガス小売事業への新規参入で新規導入が増加する見込み。特に、比較的資金力がある通信会社や電力会社、エネルギー関連会社などが参入した場合、10万件以上の顧客数を想定したCISを導入するケースもあり、市場が伸びるという期待感が生まれている。ただし、電力小売自由化と比べると、今回は新規参入が限定的になると予測されている。一方で、LPガス事業者向けでも、クラウド型などのコスト低減が図れるシステムの需要が増加しており、未導入事業者に対し、いかにクラウド型など導入しやすい提案ができるかが、市場拡大に向けたテーマになるとみられている。

市場規模については、2016年度が862億円だったのに対し、2017年度は899億円、2020年度は999億円へと拡大する見込みだ。

マッピングシステム

マッピングシステム(GIS、Geographic Information System)は、地下に埋設された導管の詳細図や顧客の契約状況、導入されている設備状況などを集約・デジタル化し、システム内の地図上にプロットして見える化や、新設・改修工事の設計などをするためのシステムである。

集約した情報は、導管・設備の維持管理、顧客情報の管理、営業戦略の立案、経年管対策、保安業務などに役立てることができる。提供形態にはパッケージ型やクラウド型などがある。ただ、大手・準大手事業者のほとんどが既に導入済みであり、顧客数10万件未満の中小事業者でも比較的導入が進んでいるため、市場は飽和気味だとされている。

市場規模は2016年度が2.5億円、2017年度が3.0億円、2020年度が5.1億円を予測する。

超音波式ガスメーター

マイコンガスメーターはガスの使用量を計測する計測器としての機能に加えて、ガス漏れなどの異常検知時や地震発生時にガスの供給を遮断したり、警告を表示するといった保安機能を有したものである。

用途としては、LPガス向け、都市ガス向け、あるいは家庭用、業務用、産業用に分類され、構造的には膜式、回転式、タービン式、超音波式などに分類される。現在、最も普及しているのは膜式であるが、ガス業界団体や都市ガス事業者などを中心にガスメーターのスマート化についての検討が進められており、膜式よりもデータ通信に優れた超音波式ガスメーターが徐々に市場浸透度を高めつつある。

超音波式ガスメーターは、流体の流れの中に超音波センサーが一組あるだけのシンプルな構造となっているため、膜式と比較して大幅な小型化が可能となり、通信機能の拡張性も向上している。また、流路には機械的な稼働部が無いため、圧力の損失がほとんどなく、省エネルギー対策に効果があり、精度の高い計測が可能な点も利点である。

都市ガス向けは、東京ガスが2018年からの本格導入を発表している。他の都市ガス事業者に関しては、全面導入の時期を探りながら、実証を重ねている段階にあると予測される。LPガス向けの導入実績は年々拡大しており、LPガスメーターにおけるウェイトも拡大するとみられる。

市場規模は2016年度が74億円、2017年度が72億円とほぼ変わらないが、2020年には143億円へと成長する予測を示している。

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依田一義のエネルギー情報126

太陽光発電システム関連事業を展開するLooopは、同社の住宅太陽光発電システム「Looop Home」の購入者を対象に、再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)より10円高く電力を買い取る「Looop Home プレミアム買取キャンペーン」を開始した。これにより住宅用太陽光発電システムの導入促進および同社の電力小売サービス「Looopでんき」の自然エネルギー由来の電力の仕入れを強化する(図1)。

Looopは2016年5月からLooop Homeを販売している。FITより10円高い価格での買い取りは、住宅用太陽光発電システムメーカーとしては業界最高水準となるという。同社では「通常よりも高値での電力買い取りは、電力市場で発電から供給までの一気通貫した事業を持つLooopだからこそ可能な取り組みだ」と自信を示す。

同社は2015年12月に高圧向け電力小売サービスを開始し、2016年4月から一般家庭を含む低圧向け電力小売サービスであるLooopでんきの提供を開始した。太陽光発電システムメーカーであり、小売電気事業者でもあることが、Looop Homeのユーザーから買い取った電力をLooopでんきの電源として活用することを可能にしている。

キャンペーンへの申込期間は2016年7月26日~12月31日まで。プレミアム買取対象期間は売電開始から12カ月間。契約期間は2年間の自動更新となり、プレミアム買取期間の終了後は、FIT価格での買い取りに移行する。キャンペーンの対象条件は、北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、九州電力管内で、10kW(キロワット)未満のLooop Homeシステムの購入者だ。

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依田一義のエネルギー情報125

福岡市の西部にある「蓮花寺池(れんげじいけ)」で7月20日に太陽光発電が始まった。池の水面のうち3400平方メートルを利用して、合計1200枚の太陽光パネルをフロートの上に搭載した。全体の発電能力は300kW(キロワット)で、年間の発電量は30万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して83世帯分に相当する。
ため池の太陽光発電では初めてマイクロインバーターを採用した。1台あたりの出力が太陽光パネルと同じ250ワットの小型のパワコン(パワーコンディショナー)である。1枚の太陽光パネルに1台ずつマイクロインバーターを接続して、発電した電力を水上で直流から交流に変換できる。
マイクロインバーターを使うメリットはいくつかある。第1に太陽光パネルごとに発電した電力を変換できるため、他のパネルの影響を受けることがない。通常は複数の太陽光パネルを組み合わせて1台のパワコンで電力を変換することから、パネルのうち1枚の発電量が何らかの理由で少なくなった場合に全体の発電量が影響を受けてしまう。マイクロインバーターを使うことで発電量の影響を最小限に抑えることができる。
第2のメリットは感電のリスクを低減できることだ。通常のパワコンでは複数の太陽光パネルを600~1000V(ボルト)の直流ケーブルで接続する。電圧の高い直流ケーブルが池の水面に触れると、保守の時などに人が感電するリスクがある。
一方マイクロインバーターを使うと、電圧の低い200Vの交流ケーブルで接続できる。さらにケーブルに異常が発生した場合には太陽光パネルの発電を停止して電流が流れない仕組みになっているため感電のリスクは低い。
マイクロインバーターには1台ごとに監視制御装置が付いていて、パネル1枚単位の発電量を遠隔から監視することが可能だ。パネルの故障や異常が発生した時にも、該当するパネルを迅速に特定して対応できる。

フロートは実績のあるフランス製を採用

水上の太陽光パネルで発電した電力はマイクロインバーターで交流に変換した後に、ケーブルを通じて陸上の受電装置へ送る仕組みだ。受電装置で高圧(50kW以上)の電力に集約して送配電ネットワークへ供給する。受電装置の近くには電気自動車用の充電器も設置した。
水上式の太陽光発電に欠かせないフロートにはフランスのシエル・テール社の製品を採用した。高密度ポリエチレン製の2種類のモジュールを組み合わせて架台を作り、その上に12度の傾斜角で太陽光パネルを設置する方式だ。日本でも埼玉県や兵庫県で稼働中の水上式メガソーラーで使われている実績のあるフロートである。
蓮花寺池の太陽光発電は福岡市が公募して実施した。公募で選ばれた地元の太陽光発電事業者のパワーマックスが建設・運営する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、福岡市には池の賃貸料が入る。賃貸料は20年間で約700万円を見込んでいる。ため池などの農業用施設の維持管理費の軽減に生かす方針だ。
マイクロインバーターを使った水上式の太陽光発電設備は、福岡市をはじめ福岡県内にある農業用ため池に広く展開できる可能性がある。福岡県全体では農業用ため池が5000カ所以上もあり、九州の7県の中では最も数多く分布している。

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依田一義のエネルギー情報124

関西電力、中部電力、東北電力の大手電力3社は27日、秋田県で事業化を目指す丸紅の洋上風力発電プロジェクトに資本参加する、と発表した。出資額は明らかにしていない。3社とも当面、設置可能性を探る立地調査に加わり、調査結果を踏まえて建設・運営への参加を判断する。
出資するのは丸紅が4月に設立した特定目的会社(SPC)の秋田洋上風力発電。秋田港や能代港で出力規模が合計14万5000キロワットの着床式洋上風力発電設備の設置を計画している。事業化が可能なら2020年度にも稼働する予定。発電期間は20年間としている。電力3社は陸上型の風力発電は運転しているが、洋上型は持っていない。

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依田一義のエネルギー情報123

長崎県の西側に連なる五島列島は海洋再生可能エネルギーの宝庫で、3カ所の海域が国の実証フィールドに選ばれている。そのうちの1つ、久賀島(ひさかじま)の沖合で潮流発電の実用化プロジェクトが動き出す。九州電力グループの九電みらいエナジーを中心とするコンソーシアムが事業者になって2019年に実証運転を開始する予定だ。

潮流発電を実施する海域は久賀島と奈留島(なるしま)のあいだにある「奈留瀬戸」で、約2キロメートルの幅の海峡に強い潮流が発生する。奈留瀬戸の海底に商用レベルの潮流発電機を設置して実用化を目指す。1基で2MW(メガワット)の発電能力がある世界最大級の潮流発電機を設置する計画だ

潮流発電機はアイルランドのOpenHydro(オープンハイドロ)社が開発した「Open-Centre Turbine」を採用する。円筒形のタービンの中央が空間になっていて、その周囲を10枚以上の羽根(ローター)が回転して発電する仕組みだ。すでに欧米の7つの海域で導入実績がある。

実際に海底に設置する場合には基礎構造物の上にタービンを搭載する。タービンの直径は16メートルもあり、全体の重量は1200トンにのぼる。巨大なタービンが潮流を受けながら、1分間に10~16回転して電力を作ることができる。

奈留瀬戸のプロジェクトでは2016~2018年度の3年間かけて発電機の設計・製作と設置工事の準備を進めていく。2019年度に入ってから発電機を海底に設置して実証運転を開始する。実証運転は2019年度内に終了して、発電機を回収したうえで性能や耐久性を検証することになる。

1基で2000世帯分の電力に

潮流は潮の満ち引きによって約6時間ごとに向きを変えながら、ほぼ一定の速さで流れ続ける。この潮汐力を利用して発電するため、天候の影響を受ける風力発電よりも安定した電力を供給できる特徴がある。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は40%程度を期待できる。陸上風力の20%や洋上風力の30%と比べて発電効率が高い。

2MWの発電能力で設備利用率が40%になると、年間の発電量は700万kWh(キロワット時)を見込める。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると約2000世帯分に相当する電力を供給できる。潮流の強い海域で多数の発電機を設置できれば、離島の電力源として有効だ。

国内では瀬戸内海と九州の北西部の海峡に強い潮流が発生する。潮流発電には1.5メートル/秒以上の流速が望ましい。五島列島の島のあいだにある海峡では3メートル/秒を超える場所が複数あり、久賀島沖の奈留瀬戸もその中の1カ所だ。

政府は島国の日本にとって有望な海洋再生可能エネルギーを発展させるために、2014年度から実証フィールドを選定して導入プロジェクトを支援してきた。潮流発電は長崎県の久賀島沖を含めて4カ所が選ばれている。このうち商用レベルの発電機を設置して実証に取り組むのは久賀島沖が初めてだ。

久賀島がある五島市は海洋再生可能エネルギーの開発で先頭を走っている。浮体式の洋上風力発電でも日本で初めての実証プロジェクトに取り組み、2016年3月に2MWの洋上風力発電所が商用運転を開始した。潮流発電と洋上風力発電の導入量を拡大して地域の活性化を図るのと同時に、地元の住民や漁業関係者が海洋再生可能エネルギーと共生できる離島の環境づくりを目指す。

五島市で導入可能な潮流発電のポテンシャルは年間に9億kWhを超える。一般家庭の25万世帯分に相当する規模で、五島市の総世帯数(2万世帯)をはるかに上回る。久賀島沖で実施する潮流発電の実証運転が成果を上げれば、離島の未来に新たな可能性が開ける。

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