依田一義のエネルギー情報122

水中に生息する藻類からバイオ燃料を生産する研究を進めている自動車部品大手デンソーが熊本県天草市五和町に建設していた藻の大規模培養実証施設が完成し、27日、現地で開所式があった。2018年度をめどに実用化を目指す。
施設は昨年夏、天草市と立地協定を結び建設を進めていた。廃校した中学校を活用し、敷地面積は約2万平方メートル。同種施設では国内最大級という。
軽油などの代替燃料になる油分を含む藻類「シュードコリシスチス」を培養。藻から精製可能な量は将来的に年間約2万リットルを見込む。藻の油分は光合成で得られるクリーン燃料で、実用化が進めば二酸化炭素(CO2)排出削減が期待されるという。生産コストをいかに抑えるかが実用化への課題となる。

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依田一義のエネルギー情報121

ベアリング大手のNTNは、風力・水力発電装置事業に本格的に乗り出す。従来は部品供給にとどまっていたが、独自の軸受け技術を生かし、地域コミュニティーで使う小型の風車や水車に狙いを絞り、発電効率の高い発電装置をつくる。
同社初の商品として、太陽光と風力の2種の再生エネで発電する「ハイブリッド街路灯」を7月から売り出した。羽根の片側だけ厚みを持たせ、先端部を本体側に少し曲げることで気流の乱れを防ぎ、風力発電で課題になる風切り音がほぼ出なくなった。軸受けの改良で、風向きに関係なく羽根が回り、効率的に発電できる。公園や商業施設向けに売り込む。
NTNは自動車や産業機械に使うベアリングで世界大手。風力発電所の大型風車で使う主軸の軸受けでも世界大手を誇ってきた。だが電気自動車の普及が進むと、同社が手がけるドライブシャフトなどの部品が不要になる危機感があった。蓄積した軸受けの技術を生かし、発電装置そのものに取り組む。10年後に売上高500億円をめざす。(新田哲史)

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依田一義のエネルギー情報120

中部電力は20日、首都圏での家庭用電力小売りについて、8月1日から適用する新料金プランを発表した。単身者や核家族の利用が多い30アンペアから契約できるようにするとともに、料金水準も引き下げる。これまでは50アンペア以上の契約が対象だった。
例えば、毎月200キロワット時の電気を使う30アンペアの契約世帯が東京電力から乗り換えたとすると、年間の料金は2892円(5.6%)安くなる。

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依田一義のエネルギー情報119

東芝は14日、1時間で燃燃料電池車(FCV)2台分の燃料にあたる水素を製造できるアルカリ水電解式の水素製造装置を開発したと発表した。同社の調べでは、アルカリ水電解式で国内最大の水素製造能力があるという。今年度中にも水素ステーションを取り扱う事業者向けに販売する。

アルカリ水電解式の水素製造装置は電極基材に貴金属を使用していないため、他方式よりも低コストで大型化できる特徴を持つ。東芝は自社の整流器や水素精製技術を水電解技術と組み合わせることで、装置を大型化しても全体のエネルギー効率を低コストに抑えられることに成功した。

今後は環境省からの委託事業で同装置を使った実証実験を行い、今年度中に実用を目指す。国内外で水素を燃料とした電池やFCVなどの活用が見込まれており、東芝は同装置の販売を拡大したい考えだ。価格は量産段階で2億円を想定している。

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依田一義のエネルギー情報118

資源エネルギー庁がまとめた2016年3月時点の最新データによると、固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した再生可能エネルギーの発電設備は累計で3726万kW(キロワット)に達した。1年前の2758万kWと比べて968万kWの増加である。発電能力を単純には比較できないものの、大型の原子力発電所10基分に相当する発電設備が1年間で稼働したことになる。
さらに運転開始前の発電設備を加えると8732万kWになり、全国にある原子力発電所43基(廃炉決定分を除く)を合わせた4120万kWの2倍以上の規模に拡大する。大規模・集中型で災害時に供給力の不安がある原子力発電から、小規模・分散型で電力を地産地消できる再生可能エネルギーの発電設備へ、電力供給の構造変化が確実に進んでいる。

運転を開始した発電設備の増加に伴って電力の買取量も増えている。2016年3月の買取量は過去最高の42億kWh(キロワット時)で、前年3月の28億kWhから1.5倍に拡大した。このうち太陽光が72%を占める。次いでバイオマスが13%、風力が11%、中小水力が3%、地熱は1%以下である。天候の影響を受けないバイオマス・中小水力・地熱の合計で16%にとどまる点が引き続き大きな課題である。

2016年度の年間を通じた買取量は432億kWhにのぼり、2015年度の286億kWhから1.5倍に増えた。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると1200万世帯分に相当する。日本全体の総世帯数5600万の2割以上をカバーできる電力になる。

買取金額も年間で1兆5495億円に拡大した。電力1kWhあたり36円弱で、火力発電と比べて3倍以上も高い水準になっている。当面は30円を上回る買取金額が続いていく。一方で石油やLNG(液化天然ガス)の輸入価格が下がって火力発電のコストが低下している。今後も再生可能エネルギーが増えるのに伴って、価格の高い石油を中心に火力発電が減り、発電コスト全体のバランスが保たれる見通しだ。

都道府県別では茨城県が1位に躍進

2012年7月に固定価格買取制度が始まって以降、全国各地で再生可能エネルギーの導入が活発に進んできた。制度開始から3年半を経過した2016年3月の時点では、電力の消費量が多い関東の各県で導入量が大きく伸びている。全国47都道府県のうち1位は茨城県で、2位が千葉県、さらに6位に栃木県、10位に群馬県が続く。

いずれの県も太陽光発電が圧倒的に多いが、茨城県では風力とバイオマスの伸びも著しい。このほかの上位10県では、風力は鹿児島県と北海道、中小水力は北海道と静岡県の導入量が多く、地熱は鹿児島県だけである。バイオマスは茨城県をはじめ6つの県で1万kWを超える規模の発電設備が運転を開始している。

さらに運転開始前の発電設備を加えた認定量でも茨城県が1位に躍進した。1年前と比べて55万kWの大幅な増加で、特にバイオマスが31万kWも伸びた。そのほとんどが木質バイオマスである。製材端材や輸入材を燃料に利用する発電設備が多い。

第2位は福島県で、認定設備の規模は1年前の時点から45万kWも減少してしまった。太陽光発電の認定取り消し分が数多く発生したためだ。それ以外の風力・中小水力・地熱・バイオマスは着実に増えている。第3位の鹿児島県でも太陽光発電の認定量が減ったが、他県ではさほど伸びていない中小水力と地熱が1000kW前後も増加した。

このほか第7位に宮崎県、第10位に熊本県が入り、九州では引き続き再生可能エネルギーの取り組みが活発だ。宮崎県では風力とバイオマス、熊本県では中小水力の多さが目を引く。同様に再生可能エネルギーの資源が豊富な東北からは、福島県に加えて第6位に宮城県が入った。風力とバイオマスの発電設備が増えている。第8位の北海道でも風力とバイオマスが大幅に伸びた。

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依田一義のエネルギー情報117

2014年5月1日に施行された「農山漁村再生可能エネルギー法」により、第一種農地を太陽光発電所の建設地として転用できるようになった。太陽光発電事業を手掛けるいちご ECOエナジーはこれを活用し、耕作放棄地を活用した太陽光発電所の建設を進めている。2016年7月11日から、茨城県取手市で建設を進めていた2カ所で発電所が稼働を開始した。同法にもとづき、売電収入の一部は地域に還元される。

取手市下高井に建設した「いちご取手下高井北 ECO 発電所」は、約1万5000平方メートルの農地に3978枚のパネルを設置した。パネル出力は約1.03MW(メガワット)で、年間発電量は一般家庭326世帯分に相当する約117万3000kWh(キロワット時)を見込んでいる。

もう1カ所の「いちご取手下高井南 ECO 発電所」は、6545平方メートルの農地に2088枚のパネルを設置した0.54MWの発電所である。年間発電量は一般家庭169世帯分に相当する60万9000kWhを見込んでいる。2カ所の発電所に使用した太陽光パネルはインリー製で、パワコンは明電舎製を採用した。発電所の施工は日本ベネックスが担当している。

いちご ECOエナジーは日本全国で太陽光発電事業を行っている。今回の2カ所が稼働したことで、累計発電所数は30カ所、合計の出力規模は49.32MWになった。現在も大型の太陽光発電所の開発を進めており、現時点で2019年度までに稼働する発電所は合計36カ所、約113MWとなる見込みだ。

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依田一義のエネルギー情報116

宮城県は仙台市内に建設中の商用水素ステーションに隣接する県有地を活用し、「水素エネルギー利活用型集客施設」の誘致を目指していた計画で、整備事業者をセブン-イレブン・ジャパンに決定したと発表した。

建設予定の商用水素ステーションは岩谷産業が整備を進める「イワタニ水素ステーション 仙台」(仙台市宮城野区幸町)で、2016年度内の完成を目指している。オフサイト式の水素ステーションで、1時間当たり燃料電池車(FCV)6台を満充填(じゅうてん)できる見込みだ。

セブン-イレブンジャパンは同水素ステーションの隣接地約1600平方メートルを宮城県から20年間賃借し、コンビニエンスストアの店舗を整備する。同店舗にはその時点で最高の発電能力を持つ純水素型燃料電池を設置し、水素から発電した電力の一部を店舗で活用する計画だ。

さらに太陽光発電設備の導入も検討し、防災拠点としての機能も備える。災害時には純水素型燃料電池と太陽光発電設備、FCVからの給電によって店舗運営に必要な電力を確保することで、避難住民の情報通信機器への電力供給や飲食物などの提供に取り組む。

同店舗の近くには、建設中の「イワタニ水素ステーション 仙台」に加え、県の所有する「保健環境センター」にホンダの「スマート水素ステーション」(SHS)が整備されている。宮城県および仙台市の水素供給拠点となっているエリアである。

セブン-イレブン・ジャパンではこうした水素拠点に構える店舗として、来客者に向た水素エネルギーに関する展示パネルなどを設置する他、宮城県が行う水素関連イベントの普及啓発活動にも協力する。2016年10月から店舗の整備を進め、オープンは2017年2月となる予定だ。

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依田一義のエネルギー情報115

不二サッシは2016年7月1日、千葉県市原市にある同社の千葉事業所と、グループ企業である関西不二サッシ(大阪府高槻市)に、太陽光発電設備を設置したと発表した。それぞれ再生可能エネルギーの固定買取価格制度を利用して売電する。

千葉事業所の屋根に総出力1.375MW(メガワット)の太陽光発電システムを設置した。出力250W(ワット)のモジュールを5500枚配置している。年間発電量は一般家庭360世帯分を見込んでいる(図1)。なお、千葉事業所では2014年3月から「第1発電所」が稼働している。今回稼働した「第2発電所」を合わせると、屋根置きタイプとしては市原市最大のメガソーラーになるという。

関西不二サッシも同じく事業所の屋根に出力327Wのモジュールを3144枚配置し、総出力1.03MWのシステムを導入した。年間発電量は一般世帯約300世帯分を見込んでいる。

今回設置した2つの発電システムはどちらも設計・施工をオムロンフィールドエンジニアリングが担当した。発電システムには接続箱単位でパネルの異常を検知するなどの運用保守サービスも導入している。

既設の事業所に新たに発電設備を設置するにあたり、それぞれの生産工場棟の特性に対応した耐震補強工事も実施している。千葉事業所ではアウトフレーム式、関西不二サッシではスチールプレート式の耐震補強を行った。不二サッシはこれにより再生可能エネルギーの活用だけでなく、同社の東西の基幹工場における事業継続計画(BCP)活動も前進したとしている。

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依田一義のエネルギー情報114

沖縄本島の南西部の海岸沿いにある「ロワジールホテル那覇」には、南国のリゾートホテルには珍しい天然温泉がある。地下800メートルから噴出する温泉は水溶性の天然ガスを含むため、希少な国産のエネルギーとして活用できる方策を検討してきた。

ホテルを運営するソラーレ ホテルズ アンド リゾーツが沖縄ガスと共同でガスコージェネレーション(熱電併給)システムの運用を5月1日に開始した。ホテルの敷地内にあるガス井から気水分離器で温泉水と天然ガスを取り分けて、コージェネレーションシステムで電力と温水を作り出す。

発電機が4基の構成で100kW(キロワット)の電力を供給できる。年間の発電量は76万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して210世帯分に相当する。発電した電力は全量をホテル内で自家消費する予定だ。

さらに発電時の排熱を利用して、コージェネレーションシステムから温水も供給する。地下から自噴する天然ガスを使って電力と温水を供給できるようになり、ホテルが消費する1次エネルギー量は従来と比べて32%少なくなる。

沖縄では電力会社が供給する電力の大半が石油で作られているため、電力の消費に伴うCO2(二酸化炭素)の排出量が他の地域と比べて多い。ロワジールホテル那覇では天然ガスによる高効率のコージェネレーションへ移行することによって、年間のCO2排出量を313トン削減できる見込みだ。樹齢20年のスギの木が吸収するCO2に換算して2万2000本に相当する。

沖縄本島の中南部と宮古島に天然ガスが分布

沖縄では1960年から水溶性の天然ガスの調査が始まり、本島の中南部と宮古島に膨大な量を埋蔵していることが明らかになった。2014年度の時点で宮古島を含めて県内12カ所に天然ガス井が存在する。ロワジールホテルの敷地内にある「ロワジールカス井」も、その中の1つだ。

ロワジールガス井から噴出する天然ガスは1日あたり668立方メートルにのぼる。主成分はメタンガスで、温泉に含まれるメタンガスが大気中に放散すると温室効果ガスになる。この問題を解消するために沖縄県と共同で2002年からガス発電プラントの実証研究に取り組んできた。

新たに経済産業省の「平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金」の交付を受けて、水溶性天然ガスを利用できるコージェネレーションシステムの導入計画に着手した。沖縄ガスが設備を運営して電力と温水をホテルに供給する一方、オリックスが設備を所有してリース契約で提供する体制だ。

沖縄県のリゾートホテルでは本島の南東部に位置する南城市の「ユインチホテル南城」でも、水溶性の天然ガスを利用したガスコージェネレーションの導入プロジェクトを2014年から進めている。敷地内に掘削したガス井から天然ガスを抽出して電力と温水をホテルに供給する予定だ。

さらに南城市が内閣府の支援を受けて、ホテルを中核に「南城市ウェルネス・スマートリゾート・ゾーン」を展開する構想もある。天然ガスから作った電力と温水をホテル周辺の医療・介護施設にも供給するほか、コージェネレーションシステムで発生するCO2を回収して農作物の栽培に利用する。2023年までの長期計画で新たな地域産業の育成に取り組んでいく。

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依田一義のエネルギー情報113

成田市と香取市は小売電気事業者の洸陽電機と共同で、地域電力会社の「成田香取エネルギー」を7月5日に設立した。出資比率は成田市と香取市が40%ずつ、洸陽電機が20%で、本社は香取市内に置く。2つの市が共同で電力小売に乗り出すのは全国で初めてのケースになる。

新会社の電力事業は再生可能エネルギーの地産地消を推進することが最大の目的だ。成田市が運営する清掃工場のごみ発電による電力と、香取市が5カ所に展開する太陽光発電の電力を調達して両市の公共施設に供給する。ごみ発電と太陽光発電で供給力が足りない分は、洸陽電機が別の太陽光発電所や卸電力市場から調達するスキームである。

10月から公共施設に電力の供給を開始する予定で、年間の販売量は1726万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算すると4800世帯分に相当する。成田香取エネルギーに参画した洸陽電機は4月から家庭向けの小売事業を全国で開始している。その業務ノウハウを生かして新会社の電力需給管理を実施していく。

成田市と香取市は電力の小売を通じて財政面のメリットも引き出す方針だ。両市が運営する発電設備の電力を従来よりも高い単価で新会社が買い取る。その一方で公共施設に販売する電力の単価は電力会社よりも低く抑える。こうして売電収入を増やすと同時に電気料金を削減する。合わせて地域内の経済が循環して活性化にも役立つ。

官民連携でエネルギーの地産地消が全国に拡大

成田香取エネルギーが利用する電源の1つは「成田富里いずみ清掃工場」のごみ発電設備である。成田市が隣接する富里市と共同で2012年に運営を開始した。生ごみなどを溶かしてから焼却する新しい方式を取り入れ、処理に伴って発生する排ガスで発電する。発電能力は3MW(メガワット)で、清掃工場の内部で1日平均2.4MW分を消費した残りの電力を売電する計画だ。

もう1つの電源は香取市が市有地を活用して建設した5カ所の太陽光発電所である。その中で最大の「与田浦太陽光発電所」は発電能力が1.75MWのメガソーラーだ。5カ所を合わせた年間の想定発電量は500万kWhで、売電収入は約9000万円を見込める。今後は成田香取エネルギーが高く買い取ることによって香取市の売電収入が増える。

成田市と香取市は千葉県の北部に位置している。成田市は人口13万人の中都市で、香取市は人口8万人弱の小都市に分類される。東京都心から50キロメートルほど離れているため人口密度は低く、太陽光発電をはじめ再生可能エネルギーを拡大できる余地は大きい。地域電力会社の設立を機に発電所の建設プロジェクトが広がっていく可能性もある。

全国の自治体が再生可能エネルギーの取り組みを進める中で、民間企業と連携する動きが増えてきた。成田市と香取市が提携した洸陽電機は兵庫県の神戸市に本社を置くエネルギー分野の専門会社で、全国各地に再生可能エネルギーの発電設備を展開中だ。

長崎県の小浜温泉では地元の温泉事業者が中心になって建設した「小浜温泉バイナリー発電所」の運営を請け負っている。発電設備を買い取って安定稼働できるように改修したうえで2015年9月から売電を開始した。

岩手県の八幡平市では農業用水路を利用して「松川小水力発電所」を2016年4月に稼働させた。農業用水路を管理する地元の土地改良区と八幡平市を加えた3者が連携して取り組んだプロジェクトで、洸陽電機が発電設備の建設と運営を担当している。

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