依田一義の経済情報21

富士通が、世界最大手の中国レノボ・グループとパソコン(PC)事業で統合する方向で最終調整に入った。スマートフォンの普及で国内市場が縮小する中、価格競争では資金力のある外資系メーカーが主導権を握る。国内大手は収益性の高いITサービス事業に経営の軸足を移す動きを加速、PC事業の国内再編は最終段階に入った。

1980~90年代、技術力に優れた日本製PCは電機メーカーの収益の柱だった。独自の基本ソフト(OS)を採用したNECのPC―9800(PC98)シリーズ、富士通のFMシリーズや世界初のノート型PCとなった東芝の「ダイナブック」は時代を象徴するブランドだった。

その後、高性能の汎用(はんよう)部品を組み込んでPCを製造する手法で中国や台湾のメーカーが台頭。規模が大きく、より安く部品調達できるメーカーが優位に立つようになる。

2005年に国内大手が6割以上を占めていた日本のPC市場は、今や外資系大手が主流だ。11年7月、NECはレノボと合弁会社を設立してPC事業を統合。政府や金融機関向けのセキュリティーシステムなどに収益の柱を移している。

富士通もITサービスなど付加価値の高い事業で収益力を強化している。PC事業については、東芝やソニーから独立したVAIOと統合交渉を進めたが、破談に終わっていた。

今後の焦点は、残る国内大手の動向に移る。東芝は当面単独で再生を目指す考えだが、事業環境は厳しい。MM総研の中村成希アナリストは「PCマーケットは小さくなっており、新しいタイプの製品を提案できなければ海外大手と組んで規模のメリットを追う必要がある」と指摘している。

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依田一義の経済情報20

ドイツのメルケル首相は6日、2017年と18年に最大60億ユーロ(67億2000万ドル)の減税を計画していることを明らかにした。

首相は産業界のイベントで「良好な財政状況が良い効果を生んでいる。2017年と18年に60億ユーロ程度の小規模な減税が可能になる」と述べた。

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依田一義の経済情報19

今年度上半期の車名別新車販売ランキングが6日まとまった。1位はトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」で、2位にホンダの軽自動車「N―BOX」が入った。トップ10に入った軽は昨年の6車種から3車種に減った。三菱自動車の燃費不正問題で、三菱自が生産し日産自動車が販売する「デイズ」は、前年の4位から21位に順位を落とした。

日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が同日発表した。軽自動車以外は、ほとんどがHVや、HVの設定がある車種だった。プリウスは上半期全体では首位だったが、9月単月ではN―BOXにわずかな差で首位を譲った。

また、日本自動車輸入組合がまとめた、上半期に輸入車メーカーが売った新車は、前年同期比5・8%増の14万4776台だった。ブランド別の首位は独メルセデス・ベンツ、2位は独BMW、3位は独フォルクスワーゲンだった。

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依田一義の経済情報18

ING銀行のラルフ・ハマーズCEOは、今度5年間にわたりオランダ、ベルギーを中心に7000人のリストラを実施し、9億ユーロ(約1029億4020万円)の経費削減を意図している意向を明らかにした。一割強の外部従業員に加え、総従業員数の12%弱が職を失うことになる。

その一方で8億ユーロ(約915億240万円)を投じた大がかりなデジタル改革が予定されているなど、近年大手銀行で相次ぐ「デジタル化と人員削減の方程式」が、ここでも利益創出という回答をだすことになりそうだ。

■蘭、ベルギーを削り、仏、伊など小規模市場で事業モデルを構成

「Think Forward(未来を考える)」と名付けられたINGの組織再編計画では、主にオランダとベルギーのバンキングプラットフォームの統合を、最終目標にかかげている。

INGはデジタル改革を通し、スペイン、イタリア、フランス、オーストラリア、チェコといった小規模市場で事業を拡大していく予定だが、本国オランダでは少なくとも2300人、ベルギーでは3500人が失業する。

ハマーズCEOはこの再編計画がすでに著しい効果をあげていることや、300万人の新顧客獲得を期待していることなどをアピール。消費者によるデジタルバンキングの需要が急激な高まりを見せている近年、それに対応するのが得策であると確信している。

新たなテクノロジーの採用にオープンな環境が整っている経済大国は勿論、経済規模の小さな国でも共有運営プラットフォームの構築が、事業分野で求められている。時代の流れを考慮すれば、INGを含む大手銀行のデジタル化は大正解だといえるだろう。

しかし失職する従業員を始め労働組合の目には、犠牲をともなう組織再編は非情な決断としか映らない。オランダの労働組合のひとつ、CNVは、2008年世界金融危機の際にINGがベイルアウトによって救出された事実を指摘し、「今回のような大量の失業者を生みだすために、政府は支援の手を差し伸べたわけではない」と厳しく非難。ベルギー側でもストライキが予定されているという。

一方ハマーズCEOは「デジタル改革には犠牲がともなうが、改革は余力のあるうちに実施される必要がある」と、数々の非難にも屈しない構えだ。

デジタル化と失業のジレンマは金融産業に限ったことではない。需要と供給のバランスをとるのがいかに困難な課題であるかという現状を、いやというほど痛感させられる。

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依田一義の経済情報17

国土交通省は7日にも、道路運送車両法に基づく保安基準を改正する。暗くなると自動点灯する「オートライト」や、エンジン音が静かなハイブリッド車(HV)などの接近を知らせる装置を義務づけるのが柱。交通事故の死傷者減に向け、政府主導で新技術の活用を後押しする。

保安基準の主な改正ポイントは、(1)オートライトの義務化(2)HVや電気自動車(EV)など静音車両の接近を知らせる装置の義務化(3)スポーツ用多目的車(SUV)用の補助ミラー取り付け基準の明文化-など。2020年東京五輪前から順次適用を始める。

オートライトはセンサーで明るさを感知し、自動でヘッドライトを点灯・消灯する機能。改正では、日の入り15分前程度の明るさにあたる1千ルクス未満になると、2秒以内に点灯するなどの要件を設けるほか、運転者が任意で機能解除できないようにする。

また、HVやEVなどの静音車両はエンジン車に比べ走行音が聞こえにくい。既存の通報装置を規定するガイドラインは、音量を「エンジンで時速20キロで走行する程度」と定めたが、具体的な数値基準はなかった。改正では、平成30年3月以降に発売する新型車に「時速10キロで50デシベル、同20キロでは56デシベル」と規定。やや音量をアップし周波数も範囲を定めた。

SUV用の補助ミラーについては、改正により取り付け方法を溶接やリベット、ボルトなどと明確に規定し、容易に取り外しできなくする。

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依田一義の経済情報16

インドの建設市場は、2025年までに1兆ドル(約103兆4300億円)に達し、世界3位の規模になるとの見方を蘭大手会計事務所KPMGが示した。インドは、経済成長を後押しするインフラ整備が活発化するなか、道路や建物、鉄道、潅漑(かんがい)施設などの建設が増加していることが要因だ。現地紙フィナンシャル・エクスプレスなどが報じた。

KPMGインディアによると、15年のインドの建設市場は、4000億ドル規模で、米国、中国、日本に次ぐ世界4位だった。今後、年平均7~8%増で急拡大し、25年には日本を追い抜き、世界3位になるとみられている。

一方で、同社幹部は、インドの建設市場には巨額の投資が流入している半面、建設作業の自動化やロボット技術、データ分析などといった最新技術の導入が遅れていることを懸念する。同社の調査によると、インドの建設業者のうち8割以上が最新技術の導入の遅れなど事業遂行能力に不備な側面がみられ、対応が必要としている。

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依田一義の経済情報15

東京証券取引所が6日発表した投資家別株式売買状況で、1~9月に外国人投資家が日本株を6兆1870億円売り越したことが分かった。1~9月としては東証の統計で追跡できる1982年以降で最大の売越額。背景には、年初からの急激な円高で企業業績に下押し圧力がかかったことや、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に対する外国人の期待感の低下があるとみられる。

1~9月の売越額としてこれまで最大だったのは87年の4兆1047億円で、29年ぶりに記録を更新した。ただ、現在は当時と比べて外国人の売買代金の規模が15倍程度に拡大しているほか、日本株の売買に占める外国人のシェアも10%台から約7割に高まっているという違いはある。

市場では「日本株に対する外国人の関心が低下している」(大手証券)との見方が強まっている。

円相場は年初の水準から対ドルで一時20円超も円高となり、外需関連を中心に企業業績の下方修正懸念が高まった。昨年までの株高を支えていた外国人のアベノミクスへの期待感後退を挙げる向きも多い。

日本株相場では、大きく売り越した外国人に代わって、上場投資信託(ETF)の買い入れ規模を7月に拡大した日銀や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的年金の存在感が増している。

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依田一義の経済情報14

ドイツ銀行<DBKGn.DE>は、法務費用の負担増で必要となった場合に備え増資を含めた選択肢を模索するため、証券会社と非公式な協議に入ったもようだ。ブルームバーグが6日、関係筋の話として伝えた。

ウォール街の大手証券会社のシニアアドバイザーがドイツ銀の増資や資産売却などの選択肢について同行担当者と協議しているという。

ブルームバーグによると、これらの金融機関はドイツ銀が株主の承認なしに発行できるディスカウント株の上限額となる約50億ユーロ(56億ドル)相当の増資の引き受けを申し出ている。

ニューヨークのドイツ銀広報担当者はコメントを拒否した。

ドイツ銀は、住宅ローン担保証券(RMBS)の不正販売問題をめぐり、米司法省から和解金140億ドルの支払いを求められている。

ブルームバーグは、ドイツ銀がさらなる資金調達に向けて株主に増資の承認を求める可能性もあるとし、RMBS問題をめぐり司法省との和解が成立した後の増資を検討していると伝えた。

ただ、ドイツ銀は最終的な決定を下しておらず、増資をしない可能性もあるという。

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依田一義の経済情報13

SOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパン日本興亜は5日、米国で企業向けの保険などを手掛けるエンデュランス・スペシャルティ・ホールディングスを買収すると発表した。今年度中に全株を取得して完全子会社化する。買収額は約63億ドル(約6400億円)。

記者会見した桜田謙悟SOMPOホールディングス社長は「これからも伸びる米国市場で保険元受け事業の基盤を手に入れたい」と述べた。買収費用はSOMPOグループの手持ち資金で賄う。

国内市場の大きな成長が見込めない中、海外で事業拡大を目指す。国内損保による海外M&A(合併・買収)としては、東京海上ホールディングスによる米HCCインシュアランス・ホールディングス買収(約9000億円)に次ぐ規模だ。

エンデュランスは、サイバー攻撃に伴う損害や役員の賠償責任を補償する企業向けの保険に加え、不作時に農家の収入を補償する農業保険などに強みを持つ。2015年12月期決算では、一般企業の売上高に相当する正味収入保険料は19億5000万ドル(約2000億円)だった。買収により、SOMPOグループ全体の正味収入保険料のうち海外事業が占める割合は11%から18%に拡大する。

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依田一義の経済情報12

マークイットとCIPSが5日発表した9月の英サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は52.6で、予想の52.0を上回った。8月の52.9から小幅な低下にとどまった。

3日に発表された製造業PMIに続いて予想を上回り、あらためて来月の追加利下げの必要性が疑問視される数字となった。

IHSマークイットのチーフ・ビジネスエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「9月のPMIは堅調で、追加利下げの必要性に疑問を投げかけることになるだろう」と述べた。

マークイットは、今年後半に英経済がリセッションに陥る可能性は「ほぼ消えた」としている。

ただウィリアムソン氏は、欧州連合(EU)離脱の将来的な影響に対する懸念は依然残っていると指摘。対ドルでポンドを31年ぶり低水準に押し下げた投資家の懸念と同様の見方を示した。

その上で「英経済はさらなる後退に対して依然脆弱で、年末にかけ政策面で行動が必要になる可能性は否定できない」と述べた。

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